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RFIDとは?特徴や導入事例を解説!

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RFIDとは

経済産業省は2025年まで、「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」と題し、小売分野でのRFID導入を決定しました。大手コンビニエンスストア5社(セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズ)の累計1,000億個といわれる全取扱商品にRFタグ(電子タグ、ICタグ、RFIDタグとも呼ばれる)を装着し、少子高齢化に伴う労働力不足と食品サプライチェーンの再構築を図ることを狙いとしています。

このニュースは2017年に発表されたもので、流通業界の革命ともいえる出来事として各紙で大きく報じられました。

※出典:経済産業省「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」

RFIDとは「Radio Frequency Identification」の略称で、日本語では「近距離無線通信を用いた自動認識技術」と言います。タグとリーダーとの間で電波の一種となる電磁波を交信させ、情報の読み取りや書き換えを行うシステムです。

コンビニエンスストア導入で、RFIDは一躍脚光を浴びた新技術のように見えますが、根幹となる技術のルーツは第二次世界大戦にまでさかのぼります。当時は軍事目的で基地からレーダーを送信し、送信機を取り付けた戦闘機がレーダーを感知することで、戦闘機の場所を把握するといったものでした。同時期にドイツ軍は、RFID技術の開発に成功していたため、基地に戻った戦闘機がドイツ軍のものか連合国軍のものなのかを見分けるために活用されていました。

日本では、1980年代後半より自動車業界にてRFIDが使われています。当時の利用範囲は、バーコードで読み取りが不可能な自動車エンジンの加工管理等の分野に限られていました。小型の記録媒体(データキャリア)とリーダーやリーダーライターの組み合わせにより、電波を使って個体識別やデータの送受信を行う方法に限定されていたと言われています。日本や欧米でも自動認識技術の製品化に向け開発が進められていましたが、タグの単価が1,000円程度と高額であったことから、事業化に向けた開発速度が鈍化してしまいました。

その後、再びRFIDが注目を浴びるようになったのは、1990年代後半のことです。半導体技術の向上でタグに付いていたバッテリーが不要となり、アクティブRFIDタグの小型化が進みました。また、2001年に発生したBSE(牛海綿状脳症)問題を契機に「食のトレーサビリティ(追跡可能性)」という社会的なニーズが増えたことや、2002年に日本で電波法が改正され、電波出力規制等が緩和されたこともRFIDの普及を後押しした要因です。この時期のことを「RFID元年」と称し、流通・物流分野で注目を浴びましたが、実際にはRFIDの導入は一部産業に限定されていました。

RFIDで利用されるRFタグは、メモリーが内蔵された記憶媒体を利用します。RFタグと通信のやり取りを行うのが、RFIDリーダーライターです。読み取り機能と書き込み機能を併せ持ち、ハンディターミナル型のほか、固定式のアンテナ等様々な形状のものが開発されています。利用する際には、リーダーライターにタグをかざすことで読み取りが可能です。

RFタグは、大きく分けると以下のような2種類があります。

パッシブRFIDタグ アクティブRFIDタグ
特徴 リーダーライター等外部からの電波を動力源とする バッテリー内臓で自ら電波を発信
通信距離 数cm~数m 数十~数百m
価格 低価格 高価格

パッシブ型

バッテリーが内蔵されていないタイプが「パッシブ型」です。リーダーライターから発信された電波が動力源となり、メモリー内にある情報を電子信号として発信します。リーダーライターがこの電子信号を受信することで、情報を読み取ることが可能です。読み取った情報は上位システムに蓄積され、データの閲覧や処理を行うことができます。また、パッシブ型の電波を受信できる距離は、一般的に数cm~数m程度です。

アクティブ型

パッシブ型とは反対に、バッテリーが内蔵されているタイプが「アクティブ型」です。アクティブ型は自身で電波を発信し、その電波をリーダーライターが受信することで情報を読み取ります。アクティブ型の電波通信可能距離は一般的に数十~数百mと比較的広く、人やモノ等、動くモノを対象に利用されるケースが多いです。

 

RFIDの特徴とは?

RFIDタグ

これまで利用されてきたバーコードと比較して、RFIDには4つの特徴があります。

複数のタグを一度に読み取ることができる

バーコードの場合、手作業で一つひとつタグを読み取る必要がありました。しかし、RFIDならタグの周辺でスキャナーをかざせば、複数のタグを一度に読み取ることができます。

バーコードからRFIDに切り替えれば、タグの読み取り時間が約10分の1に減少します。

離れた場所からタグを読み取ることができる

RFIDを導入すれば、離れた場所にあるタグも瞬時に読み取ることが可能です。

また、高い所にある荷物のタグを読み取るときも、RFIDなら脚立を使う必要がありません。高所作業がなくなるため、現場の従業員の安全を確保することができます。

段ボール箱の中のタグを読み取ることができる

RFIDなら、段ボール箱等の遮蔽物の中のタグも読み取り可能です。荷ほどきせずにタグを読み取ることができるため、倉庫作業の効率アップが実現できます。

表面が汚れたタグを読み取ることができる

タグの表面が汚れたり、テープが貼り付いたりしている場合、従来のバーコードでは正確に読み取ることができません。しかし、RFIDなら表面が汚れたタグもスキャナーをかざせばきちんと読み取り可能です。

参考記事:RFIDリーダーとは?機能と特徴をタイプ別に徹底解説!

 

バーコードとRFIDの違いとは

前述のコンビニエンスストアでの1000億枚導入は、バーコードの置き換えとしてRFタグを装着するところがポイントです。もともとバーコードの普及は、1984年にセブン‐イレブンが本格的POSシステム(日々の売上を商品種別に集計・分析し、データを経営に活かすシステム)を導入することに伴い、全国の納入業者のすべてに対し、商品製造または出荷段階で商品包装や容器に商品コードとなるバーコードを印刷する「ソースマーキング」を求めたことがきっかけです。当時、セブン‐イレブンは全国に約2,000店舗あったためその影響力は甚大で、業者は追従せざるを得ませんでした。しかし、これにより食品雑貨のソースマーキング比率は急速に増加し、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、専門店まで、POSシステムとバーコード普及が急加速していくことになります。

私たちの生活に馴染み深いバーコードは、「バー」と言われる線とバー間のスペースの幅や組み合わせで数字や文字情報を表す技術です。バーコードも専用のスキャナーでその情報をスキャンして使います。専用のスキャナーで情報の読み取りを行いますが、数cm程度の距離でないとデータを読み込むことができません。

スーパー等のレジで何回スキャンしてもバーコードが読み取れず、レジ担当の店員が数字を打ち込むシーンを見たこともあるかと思います。汚れやバーコードのかすれ等が発生するとスキャンができず、スキャナーとの間に障害物があるとデータを読み込むことができません。また、バーコードは外から視認できる位置に表示する必要があり、1回のスキャンで読み込めるデータは1つのみとなります。

その点、RFIDは日本国内の周波数帯(LF帯120~130kHz、HF帯13.56MHz、UHF帯900MHz帯、マイクロ波2.45GHz帯)によって異なりますが、バーコードのように接触せずに、データの読み取りと更新が可能です。

 

RFIDのメリット

非接触通信

RFIDは電波または電磁誘導方式で、データの読み書きを行います。RFタグを目視できない場所であっても、電磁波または磁界が届く範囲であれば、周波数帯によっては読み取ることも可能です。また、金属以外であれば、リーダーライターとRFタグの間に何かが存在しても影響はほとんど受けません。この特長を活かし、LF帯、HF帯では樹脂等でタグを封止することで、耐環境性の高いRFタグとすることができます。クリーニングする洋服や制服、社員食堂の食器にRFタグを付けたとしても、洗浄される過酷な運用にも耐えられます。

複数アイテムの読み取り

複数のアイテムの読み取り

RFタグは、コリジョン(collision;衝突)を防止する仕組みを備えているため、複数のRFタグが同時にリーダーライターの通信可能な領域にあっても正しくデータを読み書きすることが可能です。これをアンチコリジョン(衝突防止)といいますが、シンプルなユニークなID情報のみを送信するRFタグでは、アンチコリジョン機能を持たないものもあります。また、RFタグが破損または故障等で読めない場合は、バーコードで読み取りしているケースもあります。

リードライト回数

RFIDはバーコードと異なり、情報の書き込み(ライト)ができます。製造データや物流データ等をタグに付与できるため、自律型システムの構築も容易です。また、商品管理に利用されるRFタグは、価格優先とともにデータ改ざんを防ぐため、読み取り専用とすることもあります。

優れた耐環境性

RFタグは樹脂に封入されることが多く、埃、汚れ、水等の影響を受けにくく、振動や衝撃に強い構造になっています。ただし、マイクロ波(2.4GHz帯)は、水と共振し、電波が吸収されてしまうため注意が必要です。

ロングライフ

RFタグに採用されるICチップは半導体のため、半永久的に利用できます。しかし、チップを封入する樹脂は経年変化から、ひび割れや故障する可能性があります。屋外での長期利用には注意が必要です。

このようにRFIDは、バーコード運用の課題をカバーすることができます。RFID導入により得られる大きなメリットは、業務を効率化できることです。バーコードは商品を一つひとつ確認しなければならない性質上、作業時間が長くなります。

RFID導入により、商品が入荷された際の検品や出荷、棚卸し等の業務負担を軽減させることもできます。特に棚卸業務は通常業務と並行して行うことがほとんどのため、月数回は残業で対処しなければなりませんでした。しかし、RFID導入後は空いた時間に在庫エリアでリーダーライターをかざすだけで済むため、人件費の削減も実現できます。

 

RFIDのデメリット

RFIDを導入することで、庫内のオペレーションを大幅に削減することができますが、デメリットもあります。

コスト高になる

RFID最大のデメリットは、コストが高くなることです。バーコードは商品の袋等へ印刷、もしくはプリントアウトしたシールを貼付すればよいのですが、RFタグをすべての商品に適用すればコストが膨れ上がります。ただし、RFIDはデータの書き込みができるため、一度導入してしまえば、何度でもデータを書き直して利用することも可能です。

しかし、コンビニエンスストアや近年多くなってきているアパレル等は、レジ通過後に商品と一緒にユーザーに渡るため、1個あたりのタグ単価が売れるほどにかさんでしまいます。RFタグの単価は安くなってきていますが、その単価はまだ10円前後です。また、経産省主導の2025年のコンビニエンスストア導入向けた条件として、ICチップ+アンテナ+シール化等のタグの加工費用が1円以下にすることを目指しています。

参考記事:RFIDのコストとは?導入価格を考える上でのポイント、最新の価格動向を紹介

読み取り精度

RFIDで行われる通信は、金属によって妨げられることも少なくありません。例えば、商品がアルミ箔で包まれている場合等では、商品に付与したRFタグから発する電波が妨げられ、認識率が極端に低下してします。ほかにも、水分の多い製品にRFタグを張り付けた場合も、読み取りエラーが発生しやすくなります。また、段ボールの中でRFタグが重なっている場合も正確に読み込めなかったり、スキャン完了までに時間がかかったりすることもあり、注意が必要です。

一括読み取りの場合は100%の精度がなければ、誤出荷等のミスにも繋がりかねません。この精度も大きなネックとなります。

 

RFIDの利用例

RFIDタグ

RFIDは「一度に複数のタグを読み取れる」「遠くからスキャナーをかざすだけで読み取れる」といった利便性の高さから、様々なシーンで利用されています。例えば、RFIDの利用例として次のようなものがあります。

倉庫作業の入荷検品

RFIDなら、段ボール箱を開けずにそのまま商品のタグを読み取ることができます。タグの一括読み取りも可能なため、入荷検品にかかる時間を大幅に短縮できます。

顧客の行動分析

試着室にRFIDのリーダーを設置すれば、「顧客がどのような商品を試着しているか」「試着された商品のうち、どのような特長を持った商品が購入されているか」といった顧客の行動分析が可能です。

POSレジ

タグの一括読み取りが可能なRFIDなら、レジ作業がスピードアップします。RFIDリーダーが設置された台の上に商品かごを置くだけで、一度に会計を済ませることが可能です。

 

RFIDの導入事例

建設関連物流会社では、輸送用パレットの紛失や使い回しが課題となっていました。

パレットは工場、物流センター、資材置き場、建設現場の4か所で受け渡しを行っています。受け渡しの途中でパレットを紛失したり、パレットを返却せずに使い回したりする事例が多発したため、「いつ」「どのパレットが」「どこにあるのか」が誰にもわからない状態でした。

そこで、アクティブRFIDタグを導入し、パレットに取り付けた結果、約1,000台のパレットの受け渡し状況をリアルタイムで可視化することに成功しました。また、パレット管理をデータ化することで、紙の伝票を作成する手間がなくなったため、ペーパーレス化にもつながっています。

 

RFID利用に伴う今後の課題

RFIDのメリットや活用事例についてご紹介しました。RFIDの活用により業務効率化等、多くのメリットが生まれています。しかし、RFIDが普及する一方で、プライバシー保護についても検討しなければなりません。

これは、RFIDに個人情報が紐付けされていない場合でも、RFIDに割り振られているIDを所有者の情報と結び付け、個人情報を収集できる可能性があるためです。RFIDが付いているモノを保有しているだけで、気づかないうちに情報が読み取られるリスクも少なくありません。

プライバシー保護だけではなくセキュリティの観点からも、書き換え不可能にするロック機能や暗号化による認証機能が付いたRFIDタグが登場しています。課題解決にむけた技術が登場し、日々進化しているのが現状です

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