トランジットとは?【物流用語】
Contents

トランジットとは
物流におけるトランジット(Transit)とは、主に航空輸送において、貨物が空港に到着した後、同じ航空機に積んだまま、もしくは別の航空機に積み替えて、最終目的地の空港に輸送することです。一方で、トランジットの一形態として、船舶による海上輸送と航空輸送を組み合わせたシー・アンド・エアー(Sea & Air)があります。これに対して、海上輸送において貨物が途中の港で別の船に積み替えられ、最終目的地の港まで輸送することをトランシップ(Tranship)と呼びます。近年、アジア、米州、欧州、中東等各地域間のグローバルな生産・供給体制の進展により、モノの移動がますます活発化する中で、自国の輸出入貨物以外の、周辺国・地域の輸出入貨物の取扱量を増やし成長につなげようとする空港は少なくありません。例えば、アジアでは韓国・仁川空港やシンガポール空港等がトランジット貨物の取り扱いに力を入れ、国際ハブとしての役割を担っています。
トランジット輸送における課題とは
トランジットの一般的な課題としては、主に途中空港での積み間違えや破損のリスクが挙げられます。貨物が一時的に上屋と呼ばれる施設に保管される際、行き先表示ラベルの貼り付け間違いにより、誤って別の便に積載されるケースがあります。また、パレット積み貨物の積み替え時には、人手作業による積み間違いや、フォークリフトの操作ミスによる突き刺し事故が発生することもあるのです。これらのリスクを低減するため、航空貨物を取り扱うフォワーダー各社は、可能な限り直行便を利用したり、トランジットが極力少なくて済むスケジュールを組んだりする工夫を行っています。さらに、大口荷主の貨物には専用コンテナを利用することで、積み間違えや破損のリスクを大幅に抑えることが可能です。
もう1つの課題として、ダイヤの乱れや欠航が発生した場合、後続の航空機に貨物が接続できず、最終目的地への到着が遅れるリスクがあります。この遅延により、貨物到着後に空港で引き取りを予定していたトラックの再手配が必要になる場合もあるのです。
特に新型コロナウイルス感染症の拡大時には、航空機の減便や貨物搭載スペースの不足、加えてドライバーの確保困難といった問題が重なり、貨物が次の便に上手く接続できず、予定よりも1週間以上滞留するケースも見られました。
また、固有の課題としては、例えば日本最大の航空貨物取扱量を誇る成田国際空港の事例が挙げられます。同空港では滑走路の拡張が難しいことから、東京国際空港(羽田空港)と連携し、海外から再び海外へトランジット輸送を行っているのです。この際、成田・羽田間でトラック輸送による横持ちが発生しており、これにかかる費用は俗に「成田コスト」と呼ばれ、、航空会社がそのコストを負担しています。こうした課題が影響し、成田・羽田両空港は、物流インフラとしての空港の利便性と競争力を高めることが急務です。特に、周辺国・地域からの輸送需要を取り込むための国際ハブ化競争から、遅れを取る結果を招いているとの指摘が長年なされています。
まとめ
航空貨物は、生鮮品輸送に加え、原材料の調達から完成品の組み立てまで、生産体制が企業の枠や国境を超えて多様化する中で、その需要が拡大しています。特に、電子部品・半導体や自動車部品といった、工場の稼働スケジュールに合わせた速達性が求められる貨物を中心に利用されているのです。このような状況下で、トランジットは、目的地の空港への直行便がない場合や、より早く到着可能なルートを選択したい場合に、フォワーダー各社によって利用されています。また、自ら航空機を保有し、空港を基点に輸送ネットワークを形成している欧米の国際航空宅配会社(インテグレーター)では、トランジットが活発に行われているのです。トランジットの利用において、破損や積み間違いリスクの抑制、届け先が必要とするタイミングでより速く届けるための工夫が、サービス向上につながると言えます。
物流機器・輸送機器のレンタル | upr > お知らせ > 物流 > トランジットとは?【物流用語】