ピッキングミスの防止 物流作業の効率化
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ピッキングミスが発生する原因
ピッキングとは、倉庫に保管されている商品を受注数量に応じて正確かつ迅速に取り出す作業のことです。この作業では、正確さとスピードが求められますが、ピッキングミスが発生すると誤出荷につながるため、物流業務の中でも特に重要なプロセスといえます。誤出荷率を可能な限りゼロに近づけなければ、発荷主・着荷主の双方の信頼関係に悪影響を及ぼしかねません。
ピッキングミスの要因の1つとして、作業が人的依存によるアナログ業務に頼っている点が挙げられます。マテハン設備の導入が進んでいない物流現場では、ピッキング作業を人手で行うのが一般的であり、特に繁忙期には人員増加によって対応するケースが多いです。
しかし、商品のアイテム数増加や出荷時間の厳格化に伴い、作業負荷が限界を超えた際にはヒューマンエラーが発生しやすくなります。例えば、パッケージが酷似している商品の取り間違いや品番の見落とし等といったミスは、どれだけ注意していても完全にゼロにすることは困難です。
ピッキングミスを特定
ヒューマンエラーによるピッキングミスを減らすために、以下のような対策が考えられます。
- ピッキングリストの品番等を太文字または色分けで強調し、視認性を向上させる
- 類似商品の取り間違いが発生しないように棚の配置を変え、取り間違いのリスクを低減する
- 検品を強化し、複数の担当者が複数回チェックを行い誤出荷を防ぐ
しかし、これらの対策はあくまでも人の目視に依存する方法のため、完全にミスを防ぐことは難しいのが現状です。そのため、ピッキングミスの根本原因を分析し、適切な対策を講じる必要があります。
物流改善を進めるためには、ピッキングミスが発生する根本原因を分析・特定することが重要です原因を特定できなければ、効果的な対策を講じることはできません。
例えば、トラブルに直面したとき、「5回のWhy(なぜ)」を繰り返し考えるといった取り組みを行っている企業もあります。これは、「なぜこうなるんだ」と考え、すぐに思いつく答えを結論とはせず、真の原因を探ることを目的としています。1つの不具合には5つ以上の原因があるといわれ、実際には5回では足りないことが多いようです。
以上を踏まえると、以下のような項目でミスが発生することがあるのではないでしょうか。
- タイミング
- 誤出荷となる商品
- 担当者
- 時間帯
上記で原因を特定できなかった場合、現場目線でWhyを5回以上考え、社内で再検討を行うことが重要です。こうした深堀り分析を行うことで、単なる対処療法ではなく抜本的な改善につなげることができます。
ピッキングミスの防止策・改善策
ピッキングミスを削減し、作業生産性を向上させるためのデバイスには、ハンディターミナル、デジタル表示器を活用するデジタルピッキングシステム、ピッキングカート、音声によるピッキングシステム、ラックを自動的に運んでくれるロボット等があります。
これらのマテハン機器を導入することで、精度向上と作業効率化が可能ですが、導入にはコストや環境面での制約もあるのです。ここでは、マテハン機器を利用せず、アナログな手法によるピッキングミスの防止策に焦点を当ててご紹介します。
1)作業ルールを標準化
庫内作業のマニュアル化を進めることで、担当者ごとの判断や個人の好みに依存する作業を排除し、業務の統一化を図ることができます。ルールを策定し作業内容を標準化することで、誰が担当しても一定の品質を維持でき、新人や応援スタッフもベテランと同じように動くことが可能です。このように、作業の属人化を防ぎ、標準化へ移行することは、業務の効率化とミス削減に欠かせません。
2)格納の正確性を向上
入庫時に誤った棚へ商品を格納してしまうと、その後のピッキング作業で正しい商品を取り出せなくなります。そのため、入庫・格納時にも作業のルールの徹底と標準化が不可欠です。適切な手順を明確にし、誰が作業してもミスが発生しにくい仕組みを構築することが重要です。
3)ロケーションの改善
ロケーションナンバーは住所と同様に、商品の保管場所を特定する重要な指標です。しかし、ラックの文字が小さい、棚番の位置がわかりにくい等の問題があると、作業者の誤認を招き、ピッキングミスの原因となりかねません。そのため、遠くからでもはっきり見えるような位置に棚番を貼付し、文字の大きさを工夫することが重要です。
また、見た目が酷似している商品を近接した棚に保管すると、取り間違えのリスクが高くなります。誤出荷を防ぐためにも、類似商品のロケーションは物理的に離して配置することがおすすめです。このように適切なロケーション管理を行うことで、ミスの発生を未然に防ぎ、作業の精度向上につなげることができます。
4)倉庫内を清潔に保つ
庫内を常に整理し、清掃の行き届いた環境を維持することが重要です。特にフリーロケーションで保管する場合は、不要なモノが放置されると、置いた場所を忘れてしまう原因になりかねません。
また、不要なモノが動線を圧迫すると、作業効率が低下し、ミスの発生リスクも高まります。これを防ぐために、不必要なモノは保管スペースに置かず、見通しの良い環境を維持することを心掛けましょう。
5)情報共有を徹底
月間・週間目標やロケーション変更、注意事項、新商品情報等、情報共有したい事項は、1か所に集約しホワイトボード等で見える化することが効果的です。ただし、あまり更新がない場合は人の目には“同じ風景”に見えてしまいがちです。情報を整理して掲示することで、作業者全員が必要な情報をすぐに把握できるようになります。
しかし、更新頻度が低いと日常の風景と認識され、意識されにくくなります。そのため、定期的に新しい情報を追加することが重要です。さらに、絵や写真を活用して注意喚起を促すことで、視認性を高め、より効果的な情報共有が可能になります。適切な情報共有の仕組みを整えることで、作業ミスの防止や業務のスムーズな運用につながります。
6)モチベーションアップを図る
定期的に勉強会を実施している倉庫では、社員が講師を務めるのではなく、パートスタッフ同士で仕事に対する考え方や具体的な作業方法を共有する形式を採用しています。これにより、参加者がより熱心に話を聞くようになり、モチベーションアップにつながるようです。さらに、人前で発表する機会を設けることで、企業に対する肯定的な意見が生まれやすくなる副次的な効果もあります。モチベーションを上げることは、従業員のやる気を引き出し、結果的に誤出荷の削減につなげることが可能です。
ピッキング作業には様々な魅力があります。ピッキングは1人で黙々と作業できるため、接客業のような対人関係のストレスが少なく、作業成果が数値化できるため、ゲーム感覚で魏楽しみながら業務に取り組むことも可能です。
従業員が仕事を楽しく、真剣に取り組むことで、ピッキング作業の正確性が向上し、誤配が減少します。その結果、クレーム対応にかかる時間が削減され、職場環境の改善にもつながります。
ピッキングミスを減らすことは単なる生産性向上にとどまらず、企業としての信頼向上にも直結し、ミスの削減に向けた継続的な改善が、従業員の働きやすさと企業の競争力強化につながるのです。
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