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モーダルシフトを徹底解説! 注目の背景やメリットをまとめてお伝えします

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物流業界では、環境負荷の低減や輸送の効率化がますます重要視されています。しかし、現在の物流は依然としてトラック輸送に大きく依存しており、物流の2024年問題によるドライバー不足や二酸化炭素排出量の増加等、多くの課題に直面しています。

このような背景の中で注目を集めているのが、鉄道や船舶を活用し、輸送の負担を分散する「モーダルシフト」 です。このモーダルシフトを普及させるために政府は支援策を展開し、持続可能な物流の実現に向けた取り組みを推進しています。

本記事では、モーダルシフトの基本概念から、導入のメリット・デメリット、政府の支援策や実際の取り組み例まで網羅的にお伝えします。

 

そもそもモーダルシフトとは何か?

モーダルシフトは、貨物輸送の効率化と環境負荷の低減を目的とし、トラック輸送に依存した物流を鉄道や船舶へと転換する取り組みのことを指します。

モーダルシフトにおける「モーダル」は、輸送手段という意味を表しています。そのため、モーダルシフトという言葉は、「輸送手段の転換」という意味になります。

もともとは省エネルギー対策として提唱されましたが、近年では物流の2024年問題によるドライバー不足の解決策としても注目されており、ここでは、モーダルシフトが求められる背景やその目的について詳しく解説します。

モーダルシフトの目的と背景

モーダルシフトは、もともと省エネルギー対策の一環として1981年の「運輸政策審議会答申」において提唱されました。当初の目的は、化石燃料の消費削減と二酸化炭素排出量の低減を図ることにありました。

日本の物流は長らくトラック輸送に依存しており、その結果、エネルギー消費量や環境負荷の増加が問題視されてきました。一方で、鉄道や船舶は大量輸送が可能でありながら、二酸化炭素排出量を大幅に抑えられる輸送手段として評価されており、政府は環境政策の一環としてモーダルシフトを推進しています。

また、近年では「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた取り組みの1つとして位置づけられており、企業のサステナビリティ戦略の観点からも採用が進められています。環境負荷の軽減とエネルギー効率の向上を目的とし、政府や企業が連携してモーダルシフトの促進に取り組んでいます。

物流の2024年問題とモーダルシフト

2024年4月から適用された「働き方改革関連法」により、トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されました。これにより輸送能力の低下やコスト増加が懸念され、物流の2024年問題として業界全体の課題となっています。

参考:物流の2024年問題の罰則とは? 回避するための対策を解説

この解決策の1つとして、モーダルシフトの推進が注目されています。トラック輸送の一部を鉄道や船舶に切り替えることで、一度に大量の荷物を運べるため、ドライバー不足の影響を抑えつつ、輸送効率を向上させることが可能です。

この流れを受けて、国土交通省は、モーダルシフトの促進に向けて 「物流総合効率化法」 を制定し、輸送の効率化を図る企業への支援を行っています。また、「モーダルシフト等推進事業」 では、企業の鉄道・船舶利用を後押しする補助金制度が設けられています。さらに、「グリーン物流パートナーシップ会議」 では、企業間の連携を通じて環境負荷の低減と効率的な物流を推進する取り組みが行われています。

こうした支援制度を通じて、物流業界は持続可能な輸送体制を構築し、物流課題への対応を進めています。

 

モーダルシフトのメリット・デメリット

モーダルシフトは、環境負荷の低減や物流の効率化等多くのメリットをもたらします。しかし、導入にあたっての課題も存在し、すべての企業が簡単に実践できるわけではありません。ここでは、モーダルシフトの具体的なメリットとデメリット、なぜ導入が進みにくいのか、その理由について詳しく解説します。

モーダルシフトのメリットとは?

モーダルシフトを導入することで、企業はさまざまなメリットを享受できます。ここでは、環境負荷の低減やコスト削減といった具体的な利点を紹介します。

1. 二酸化炭素排出量の削減

鉄道や船舶は、トラック輸送と比べて二酸化炭素排出量が大幅に少なく、環境負荷の低減につながります。国土交通省のデータによると、トラック輸送と比べて鉄道輸送では約1/10、船舶輸送では約1/5の二酸化炭素排出量に抑えられます

※出典:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」

2. 燃料コストの削減

鉄道や船舶は、大量輸送が可能なため、輸送単位ごとの燃料消費量を抑えられます。特に、長距離輸送では巡航運転による燃費効率の向上や積み替えの削減といったメリットが大きくなります。その結果、燃料価格の変動の影響を受けにくくなり、輸送コストの安定につながります。

3. 労働力不足への対応

物流の2024年問題の影響で、トラックドライバーの時間外労働時間に制限がかかるため、長距離輸送において人手不足が深刻化しています。そこで、モーダルシフトを活用することで、長距離輸送の負担を軽減し、ドライバーの負担を削減できます。

4. 交通渋滞の緩和

鉄道や船舶を活用することで、道路の混雑を緩和し、特に都市部の交通渋滞を減少させることができます。これにより、輸送の遅延リスクを低減し、安定した物流を実現できます。

モーダルシフトは、環境負荷の低減だけでなく、コスト削減や物流の安定化にも寄与する重要な取り組みです。次に、デメリットや導入が進みにくい理由、課題についてお伝えします。

モーダルシフトのデメリット、進まない理由

モーダルシフトは多くのメリットを持つ一方で、導入にあたってはいくつかの課題があり、すべての企業が容易に取り組めるわけではありません。ここでは、モーダルシフトが進みにくい主な理由についてお伝えします。

1. 鉄道・船舶輸送のインフラ制約

鉄道や船舶を活用するには、貨物駅や港湾の設備が整っている必要があります。しかし、日本国内では鉄道貨物の輸送網が限られており、すべての地域で利用できるわけではありません。また、船舶輸送を活用する場合、港までのトラック輸送が必要になるため、手間が増えてしまいます。

2. リードタイムの長さ

鉄道や船舶は一度に大量の貨物を輸送できますが、トラック輸送と比べて柔軟性が低く、リードタイムが長くなる場合があります。特に鉄道貨物は決められたダイヤで運行されるため、即時対応が難しく、短納期の物流には不向きな場合もあります。

3. コストの問題

モーダルシフトを導入するためには、新たな設備投資や物流網の見直しが必要となり、初期コストがかかることが課題となります。また、トラック輸送と異なり、鉄道や船舶の輸送コストは一定の貨物量を確保しないと割高になるケースもあります。そのため、モーダルシフトを検討しても、コスト面での採算が合わないことも懸念されます。

4. 荷主と物流事業者間の調整が必要

モーダルシフトを成功させるには、荷主と物流事業者の間で輸送スケジュールやコストを調整する必要があります。しかし、多くの企業は長年トラック輸送に依存しており、既存の物流ルートを変更することに慎重になるケースが多いです。また、異なる輸送手段を組み合わせることで、物流の管理が複雑化する点も課題となります。

モーダルシフトは、環境負荷の低減や物流の効率化に貢献する重要な施策ですが、これらの課題をクリアすることが求められています。

 

モーダルシフトの現状、取り組み例

モーダルシフトは、環境負荷の低減や物流の安定化を目的に推進されていますが、実際にどの程度浸透しているのでしょうか。ここでは、モーダルシフトの現状を解説するとともに、実際に取り組まれている事例をご紹介します。

モーダルシフトの実態

モーダルシフトの導入は徐々に進んでいますが、全体の物流量に占める割合は依然として限定的です。国土交通省の調査によると、国内貨物輸送のうち鉄道輸送の割合は約5%、内航海運の割合は約40%とされています。一方で、トラック輸送の比率は約50%を占めており、依然として自動車輸送への依存度が高い状況です。

また、モーダルシフトを実施した企業の多くは、環境負荷の低減や労働力不足の解消を目的としています。特に、鉄道輸送では二酸化炭素排出量がトラック輸送の約1/8に抑えられることから、脱炭素経営を重視する企業による導入が増加しています。

しかし、調査によると、モーダルシフトを進めるうえでの課題として 「輸送スケジュールの制約」 や 「輸送の安定性の低さ」 が挙げられています。特に、鉄道輸送では貨物ターミナル前後で荷物の集配・積替が必要なため、リードタイムが長くなることが課題となっています。こうした実態を踏まえ、モーダルシフトのさらなる推進には、輸送網の整備や企業間の協力が不可欠となっています

※出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「モーダルシフトに向けた実態調査事業の結果概要について」

モーダルシフトの取り組み例

モーダルシフトは、さまざまな業界で取り入れられつつあります。ここでは、モーダルシフトの具体的な取り組み事例をご紹介します。

1. 鉄道輸送を活用した事例

ある企業は、これまでトラックで長距離輸送していた貨物を鉄道コンテナ輸送へ切り替えました。これにより、二酸化炭素排出量を約80%削減しながら、大量輸送によるコスト削減も実現しています。鉄道は一度に大量の貨物を運べるため、定期的な大量輸送を行う企業に適した手段といえます。

2. フェリー・RORO船を活用した事例

内航海運を活用し、トラック輸送の一部をフェリーやRORO船に切り替えた企業も存在します。これにより、ドライバーの拘束時間を短縮し、労働環境の改善に成功しました。また、輸送コストの安定化にも寄与し、燃料費の変動リスクを抑える効果がありました。

※RORO船:Roll-on/Roll-off船の略。トラックやトレーラー等の車両をそのまま積み込み、そのまま降ろせる船舶のこと

3. 共同輸送の取り組み

異なる業種の企業が協力し、同じルートを鉄道や船舶で輸送する「共同輸送」の取り組みも増えています。これにより、貨物の積載効率が向上し、モーダルシフトの経済的なメリットをより多くの企業が享受できるようになりました。

このように、モーダルシフトの成功事例は増えており、企業ごとに異なる課題に対応した柔軟な導入が進められています。今後、さらなる取り組みの拡大が期待されています。

 

モーダルシフト推進のために

政府は2030年度に向けた中長期計画を策定し、環境負荷の低減や物流の効率化を目指しており、政府主導の支援策も実施されてきました。ここでは、政府の取り組みや企業に求められる対応について詳しく解説します。

2030年度に向けた政府の中長期計画について

政府は、2030年度に向けた物流政策の中で、モーダルシフトの推進を重要な施策の1つとして位置づけています。特に、「総合物流施策大綱」において、環境負荷の低減と物流の効率化を両立させるための目標を掲げています。

1. 二酸化炭素排出量の削減目標

政府は2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、2030年度までに物流部門の二酸化炭素排出量を2013年度比で35%削減する方針を打ち出しています。モーダルシフトは、この削減目標を達成するための主要な施策の1つとされており、鉄道・船舶の利用拡大が求められています。

※出典:国土交通白書 2022

2. 鉄道・船舶インフラの強化

モーダルシフトを加速させるためには、鉄道貨物ターミナルの増設や港湾の設備拡充が不可欠です。政府はこれまでに、鉄道貨物の輸送容量拡大やフェリー航路の新設等を支援してきました。今後も、モーダルシフトを推進するためのインフラ整備が進められる予定です。

3. 企業への支援策と新たな取り組み

これまで、「モーダルシフト等推進事業」や「モーダルシフト加速化緊急対策事業費補助金」等の施策を通じて、企業の取り組みを後押ししてきました。これらの支援策の多くはすでに公募を終了していますが、新たな支援策が検討されており、企業のモーダルシフト導入を促進する環境が整えられています。

4. デジタル技術を活用した物流の最適化

政府は、モーダルシフトを推進する上でデジタル技術の活用を重要視しています。具体的には、AIを活用した最適輸送ルートの解析や、ブロックチェーン技術によるサプライチェーンの可視化が進められています。これにより、鉄道・船舶を組み合わせた効率的な物流が可能となることが期待されています。

政府の中長期計画では、これらの取り組みを通じてモーダルシフトの普及を加速させ、物流業界全体の効率化と環境負荷の低減を実現することを目指しています。

「物流総合効率化法」とモーダルシフトを推進する支援施策一覧

国土交通省は、流通業務の一体化や輸送の合理化を図るために、2005年に「物流総合効率化法」を施行し、2024年4月に「物資の流通の効率化に関する法律」に改正されました。

これにより企業は、共同配送やモーダルシフト、輸送ネットワークの統合等を進めるための計画を国に申請し、認定を受けることで税制優遇や融資支援等を受けられるようになりました。

その中で、モーダルシフトを推進するための代表的な支援は、以下の2つが挙げられます。

1. モーダルシフト等推進事業

国土交通省は、「モーダルシフト等推進事業」を通じて、計画策定費・運行経費・共同輸送支援の3つの形で企業を支援してきました。トラック輸送から鉄道・船舶等の環境負荷の低い輸送手段への切り替えを支援する事業であり、企業はモーダルシフトを実施する際に、設備導入やシステム構築に関する補助金を受け取ることができます。

2. グリーン物流パートナーシップ会議

「グリーン物流パートナーシップ会議」は、環境負荷の低い物流を促進するための官民協議会です。企業や業界団体、国土交通省、経済産業省が参加し、成功事例の共有や政策提言を行っています。また、環境負荷の低減につながるプロジェクトには、補助金が交付される場合もあります。

注意点として、「モーダルシフト等推進事業」は令和6年度の第3次公募(2024年9月30日〜10月23日)をもって終了しており、現在は新たな募集が行われていません。今後、新たな支援策が発表される可能性があるため、最新の動向に注意を向けておく必要があります。

他にも、モーダルシフトを推進するために、国土交通省は「モーダルシフト加速化緊急対策事業費補助金」を実施してきました。この補助金は、トラック輸送から鉄道・船舶への転換を加速するためのもので、特に物流の2024年問題によるドライバー不足対策として活用されており、以下のような内容となっています。

1. 補助金の目的

本補助金は、モーダルシフトの導入を促進することで、二酸化炭素排出量の削減や長距離輸送の効率化を図ることを目的としています。これにより、企業は鉄道・船舶への移行時の負担を軽減しやすくなりました。

2. 支援対象となった取り組み

本補助金は、以下のような取り組みが支援対象となっています。

  • 鉄道・船舶を活用した長距離輸送の転換に伴う経費の補助
  • 専用設備(コンテナ・荷役機器等)の導入費用の支援
  • 企業間での共同輸送プロジェクトへの補助

しかしながら、本取り組みは令和6年10月31日をもって募集が終了しています。現在、新たな公募は行われていませんが、政府はモーダルシフト推進に向けた新たな支援策を検討しており、今後も補助金制度の発表等に注目しておく必要がありそうです。

事業者に何が求められているのか?

モーダルシフトを持続可能な形で推進するためにも、事業者自身が積極的に取り組むことが求められており、特に以下の3つの視点が重要になります。

1. 物流ネットワークの最適化

鉄道・船舶を活用するには、既存のトラック輸送と組み合わせた効率的なルート設計が不可欠です。貨物ターミナルや港湾の活用を前提とした輸送計画の策定が求められます。

2. 共同輸送の促進

単独企業では鉄道・船舶の利用が難しい場合、他の企業との共同輸送を検討することが有効です。荷主企業と物流事業者が連携し、積載効率を高めることで、コスト削減と安定輸送を実現できます。

3. デジタル技術の活用

物流の最適化のためにも、AIを活用した需要予測やブロックチェーンを活用したサプライチェーン管理を検討することが、一層求められると考えられます。デジタル技術を活用することで、モーダルシフトの導入をよりスムーズに進められます。

今後の物流業界では、これらの要素を組み合わせながら、持続可能なモーダルシフトの実現に向けた取り組みが求められています。

 

モーダルシフトを理解して、自社に必要なことから始めよう

モーダルシフトは、環境負荷の低減やドライバー不足への対策として重要な取り組みですが、実際に導入するためには自社の物流に適した方法を選ぶことが必要不可欠です。鉄道・船舶を活用した輸送計画の策定や、共同輸送の推進、デジタル技術の活用等、検討すべき事項が多いため、企業は一早く戦略を考えることが求められています。

また、モーダルシフトの実現には、適切なパレットの活用も重要なポイントとなります。スムーズな積み替えを可能にするためにも、レンタルパレットの利用を検討することで、物流コストの削減や効率化が期待できます。

モーダルシフトを進める際は、レンタルパレットの活用も視野に入れ、自社に適した輸送の最適化を進めていきましょう。

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