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HACCPにおける危害分析の方法や注意点を解説

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危害分析とは?

HACCPにおける危害分析(危害要因分析)とは、食品の製造工程に潜む危害要因(ハザード)を洗い出し、その「発生しやすさ」や「発生したときの健康被害」を分析する手法です。適切に危害分析を行うことで、食品事故のリスクが高い製造工程を発見し、重点的な衛生管理を行うことができます。

特に重大な危害要因が潜む製造工程は、「重要管理点(CCP)」と呼ばれます。

危害要因は生物学的危害要因、化学的危害要因、物理的危害要因の3種類に分類され、それぞれの危害要因について正しい知識を持つことが大切です。

生物学的危害要因 ・細菌
・ウイルス
・寄生虫等
化学的危害要因 ・重金属
・かび毒
・加工中の化学反応により生成する有害物質
・残留農薬等
物理的危害要因 ・異物
・食品の形状、固さ、弾力性等

出典:農林水産省消費・安全局食品安全政策課「食品安全に関する基本的な考え方」(令和6年10月17日利用)

HACCPの導入手順と危害分析を行う時期

HACCPを導入する場合、コーデックス委員会(国際食品規格委員会)が作成した7原則12手順を参考にしましょう。

手順1 HACCPチームを編成する
手順2 製品説明書を作成する
手順3 製品の用途や対象となる消費者を確認する
手順4 製造工程一覧図を作成する
手順5 製造工程一覧図の現場確認を行う
手順6【原則1】 危害分析(危害要因分析)を実施する
手順7【原則2】 重要管理点(CCP)を特定する
手順8【原則3】 管理基準(CL)を設定する
手順9【原則4】 衛生管理のモニタリング方法を決める
手順10【原則5】 衛生管理の改善方法を決める
手順11【原則6】 衛生管理の検証方法を決める
手順12【原則7】 衛生管理の記録方法を決める

 

このうち、危害分析は製品説明書や製造工程一覧図の作成を終えた手順6【原則1】で実施します。危害分析の流れは後ほど詳しく説明します。

 

危害分析を行う3つのメリット

そもそも、危害分析を行うメリットは何でしょうか。HACCPの考えを取り入れ、製造工程を見直すことで得られるメリットを3つ紹介します。

危害要因を全従業員で共有し、衛生意識を高められる

食品の危害要因によっては、現場の従業員全員に認識が共有されていないものもあります。危害分析を実施し、製造工程に潜む危害要因を全従業員で共有することで、さらに衛生意識を高めることが可能です。

厚生労働省の「HACCPの普及・導入支援のための実態調査結果」によると、HACCP導入のメリットとして最も多く挙げられたのが、「社員の衛生管理に対する意識が向上した(78.2%)」というものでした。

出典:厚生労働省「HACCPの普及・導入支援のための実態調査結果[pdf]」(令和6年10月10日利用)

衛生管理の優先順位付けを行い、食品事故のリスクを低減する

危害分析は、製造工程に潜む危害要因をただ列挙するだけではありません。「発生しやすさ」「発生したときの健康被害」といった観点から危害要因を分類します。これにより危害要因の優先順位を付け、食品リスクの観点でより重要度の高い製造工程(=重要管理点)を特定します。限られたリソースを効率的に活用することで、重点的に衛生管理を行うことが可能です。

厚生労働省の調査によると、HACCPを導入した企業の32.3%が「クレーム、事故が減少した」と回答し、効果を実感しています。

出典:厚生労働省「HACCPの普及・導入支援のための実態調査結果[pdf]」(令和6年10月10日利用)

万が一食品事故が起きたときの対応を迅速化できる

危害分析を実施することで、製造工程に潜む食品リスクが可視化されます。これにより、万が一食品事故が起きた場合でも、原因究明や初動対応を迅速に行うことが可能です。厚生労働省の調査でも、「製品に不具合が生じた場合の対応が迅速に行えるようになった」と37.7%の企業が回答しています。
出典:厚生労働省「HACCPの普及・導入支援のための実態調査結果[pdf]」(令和6年10月10日利用)

危害分析を適切に実施することで、上記のようなメリットが得られます。下記の方法を参考に、慎重に危害分析を行ってください。

 

HACCPの考え方に基づく危害分析の方法

説明書の作成

ここでは、HACCPの考え方に基づく危害分析の方法を説明します。まず大切なのは「製品説明書」を作成し、製造する食品の特徴を明らかにすることです。危害分析の流れを5つのステップに分けて解説します。

「製品説明書」を作成し、食品の特徴を書き出す

危害分析の実施にあたって、まず「製品説明書」を作成しましょう。製品説明書とは、製造する食品の原材料や特徴、レシピ等をわかりやすくまとめた資料です。

例えば、厚生労働省の「食品製造におけるHACCP入門のための手引書」では、以下の項目を作成例として挙げています。

  • 製品の名称や分類
  • 原材料について注意すべき事柄
  • 添加物の名称や使用量
  • 製品に課せられた衛生規範(一般生菌数等)
  • 自社基準での衛生規範
  • 製品の保存方法
  • 消費期限や賞味期限
  • 製品のユーザー

 

特に「原材料について注意すべき事柄」の項目では、アレルギー物質の有無を漏れなく記載することが重要です。

出典:厚生労働省「食品製造におけるHACCP入門のための手引書[大量調理施設における食品の調理編]」(令和6年10月10日利用)

食品が「誰に」「どのように」使われるのかを考える

製品説明書には、食品に関する情報だけではなく、その食品が「誰に」「どのように」使われるのかも記載します。厚生労働省の手引書に記載されている「製品のユーザー」「消費期限や賞味期限」といった項目がこれに該当します。製品説明書を作成するときは、ユーザー目線に立つことも重要です。

製造工程をすべて洗い出し、「製造工程一覧図」を作成する

製品説明書を作成したら、その食品の仕入れから出荷までの製造工程をすべて洗い出し、「製造工程一覧図」を作成します。製造工程を書き出してから、各工程を「汚染区域」「準清潔区域」「清潔区域」の3種類に分類しましょう。

汚染区域 外部環境に接し、食品が汚染されるリスクがある区域
原材料の仕入れ、具材の保管等
準清潔区域 汚染区域から食品を受け入れ、食品を清潔に保つ区域
具材の解凍、下処理、加熱等
清潔区域 最終製品を取り扱い、最高レベルの清潔を保つ区域
最終製品の保管、製品検査、出荷等

現場にヒアリングを行い、製造工程一覧図の妥当性を検証する

製造工程一覧図が妥当であるか、実際に製造工程と剥離していないかを確認するため、必ず現場にヒアリングを行いましょう。現場のフィードバックを受け、必要に応じて製造工程一覧図を修正します。

製品説明書や製造工程一覧図を参照し、危害要因を列挙する

製品説明書や製造工程一覧図を参照し、各製造工程に潜む危害要因を列挙していきます。注目すべき点は、予防(持ち込まない、つけない、増やさない)と、除去・低減(なくす)の2つの考え方です。

また、危害要因の優先順位付けのため、一般衛生管理の範囲で対応できないモノや、予防と除去・低減の両方が必要なモノについては、「重大な危害要因」として記載します。

出典:厚生労働省「食品製造におけるHACCP入門のための手引書[大量調理施設における食品の調理編]」(令和6年10月10日利用)

 

危害分析を行う際の2つの注意点

危害分析を行う際、注意しなければならない点が2つあります。

まず、危害分析を正確に行うためには、食品製造に関わるすべての担当者を巻き込むことが大切です。必ず現場へのヒアリングを行い、実際の食品製造の流れに沿って危害分析を実施しましょう。

また、危害要因を行うこと自体がHACCPの目的ではありません。HACCPの目的は、危害要因に基づいて重要管理点(CCP)を特定し、管理基準(CL)を設定することです。HACCP導入の全体の流れを意識しながら、危害分析を行うことが重要です。

すべての担当者を巻き込んで行う

危害分析を行う際は、なるべくすべての担当者を巻き込み、食品の危害要因についての認識を共有することが重要です。

HACCP導入の際によく見られる失敗例として、社内の情報共有ミスが挙げられます。例えば、食品の危害要因について、特定の部署では認識していたものの、全社的に共有されていなかったため、十分な危害要因分析が行えなかったというケースです。

また、危害要因に対する認識を全従業員で共有すれば、現場の衛生意識の向上にもつながります。危害分析を行う際は、各部署の担当者や、現場の監督者、作業員等のすべての関係者を巻き込み、製品説明書や製造工程一覧図といった資料も共有しましょう。

リソースに余裕があれば、専門のHACCPチームを編成することも効果的です。

重要管理点(CCP)の特定や管理基準(CL)の設定を視野に入れて行う

そもそも危害分析を行う目的は、製造工程のうち特に衛生管理の必要性が高い重要管理点(CCP)を特定し、清潔さを維持するための管理基準(CL)を設定することにあります。

HACCP(Hazard Analysis Critical Control Point)という名称が、HA(危害分析)とCCP(重要管理点)の2つの組み合わせから成り立っているのも、この目的を表しています。

したがって、危害分析を実施する際には、ただ単に製造工程のリスクを洗い出すだけではなく、製造工程のうちどの工程が重要管理点(CCP)に該当するか、危害要因を取り除くためにはどのような管理基準(CL)を設定する必要があるか、といった意識を持つことが重要です。

 

まとめ

HACCPにおける危害分析(危害要因分析)は、食品の製造工程に潜む危害要因(ハザード)を列挙し、重点的な衛生管理を行っていく上で欠かせないプロセスです。

危害分析を行えば、食品事故のリスクを低減し、万が一問題が起きたときの対応を迅速化できるだけでなく、従業員の衛生意識の向上にもつながります。ただし、危害分析を行うこと自体がHACCPの目的ではありません。重要管理点(CCP)の特定や、管理基準(CL)の設定を視野に入れつつ、正しい方法で危害分析を実施しましょう。

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