食品衛生法における温度管理の重要性とは?HACCPについてや、食品別の保存温度一覧や課題も解説
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☑このページで紹介している内容はIoTの活用案です。
食品衛生法の改正により温度管理で想定される課題
食品衛生法の一部を改正する法案が可決されたことから、2020年頃より飲食店やスーパーマーケット等で店舗環境や店舗設備の一般衛生、ならびに温度管理の記録・保存が義務化されました。
これにより、定期的な温度管理が必要となり、作業が増えるだけではなく、店舗が忙しい際に確認を忘れる可能性や、確認をせずにチェックを付ける人が現れることが予想されます。
温度管理の目的は?食中毒のリスクは不十分な温度管理から生まれる
温度管理の目的は、食中毒を減らし、食の安心を守ることです。厚生労働省の平成27年度の調査によると、食中毒事件の約60%は飲食店で発生しています。※
出典:厚生労働省「HACCP(ハサップ)の考え方を取り入れた食品衛生管理の手引き[pdf]」
食中毒菌が繁殖する原因の多くは、「衛生管理を怠った業者からの原材料搬入」「食品の温度管理不備」「食品の加熱不足」の3つです。温度管理の目的は、食中毒リスクを減らし、食の安心を守る点にあります。
冷蔵庫や冷凍庫、食品の陳列棚などの温度管理で大切なのが、「温度記録表」の作成です。すくなくとも、1日3回を目安に衛生点検を実施し、食品の管理温度を記録する必要があります。温度記録表を作成する目的は2点あります。
1.適切な温度管理の「見える化」
食品表面に付着した食中毒菌は冷蔵・冷凍では死滅しません。また、コールドチェーンの発展により、製造・流通過程で急速冷凍される食品が増加しましたが、多くの食中毒菌が仮死状態で残存しています。そこで、温度記録表を作成し、日々食品の管理温度を見える化する仕組みを作ることで、工場や事業所全体で適切な温度管理をチェックできます。よって、食中毒菌の増殖をはじめとした食品事故の予防が可能です。
食品事故発生時の証明
万が一食品事故が発生した際、温度記録表があれば自社の食品衛生管理に問題がないことを証明できます。目視での温度計の確認やIoTシステムによる自動監視等、食品の温度管理を行う仕組みがあっても、肝心の衛生管理記録がなければ証明ができません。食の安全への取り組みを消費者にアピールする上でも、温度管理とセットで「温度記録表」を作成・出力する仕組みが必要です。
食品の温度管理・温度記録は、令和3年6月1日よりすべての食品等事業者に義務化される「HACCP対応」の重要管理点(CCP)の1つでもあります。
食品衛生管理における温度管理の重要性について
食品衛生管理には様々な分野がありますが、その中でも温度管理は非常に重要です。
それは、食中毒防止や品質維持のためには、各製造工程及び流通・保管のそれぞれで適切な温度を維持することが必要なためです。
食中毒等の原因菌の繁殖は、温度管理によって抑制できる場合があります。また、温度帯によっては付着した細菌を殺菌できる場合もあるのです。
厚生労働省によるガイドラインにも、「原材料を戸棚、冷凍または冷蔵設備に適切な温度で保存」「原材料搬入時の時刻、室温および冷凍または冷蔵設備内温度を記録」といった形で、温度に関する内容が多く記載されております。
中には具体的な保存の温度帯や期間等を明記しているものもあり、食品衛生管理における温度管理の重要性が伺えます。
厚生労働省の衛生管理ガイドラインをわかりやすく解説
2016年10月6日に改正された「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、HACCPの規定に基づき、次の4つの食品安全指針を示しています。
- 原材料受入れおよび下処理段階における管理を徹底すること。
- 加熱調理食品については、中心部まで十分加熱し、食中毒菌等を死滅させること。
- 加熱調理後の食品および非加熱調理食品の二次汚染防止を徹底すること。
- 食中毒菌が付着した場合に菌の増殖を防ぐため、原材料及び調理後の食品の温度管理を徹底すること。※
出典:厚生労働省「厚生労働省:大量調理施設衛生管理マニュアル」
食中毒リスクの防止のため、食品の温度管理について、「加熱調理食品の加熱温度管理」と「原材料および調理済み食品の温度管理」の2つの観点から、ルールを設けています。
特に食品の搬入・保管の工程では、食品別に保管温度の一覧表を作成し、飲食店・スーパーマーケット等に遵守するよう求めています。
HACCPとは?食品衛生法との関連
HACCP(ハサップ:Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、国際的な食品衛生管理の基準で、食品の製造・加工・流通のすべてのプロセスで危害要因(ハザード)を取り除くことを目的としています。
従来の抜き取り検査が中心の衛生管理と違い、HACCPに基づく衛生管理は異物混入や食中毒菌の増殖といった食品事故を未然に防止できます。
特に重要なのが、食品の温度管理です。HACCPに基づく衛生管理は、各製造工程や流通工程の食品リスクを洗い出す危害要因分析(HA)に基づき、食品の温度管理を「重要管理点(CCP)」に設定して、食品の安全性を徹底的に確保するのが特徴です。
これまで、HACCPの導入は任意とされていましたが、平成30年6月に公布された「食品衛生法等の一部を改正する法律」により、令和3年6月1日からはHACCPに沿った衛生管理が制度化されることになりました。※
出典:厚生労働省「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化」
これ以降、原則として食品の製造・加工、調理、販売等を行うすべての食品等事業者は、HACCPに基づく衛生管理またはHACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行うことが法律で義務づけられています。
特に大規模事業者と、畜場、食鳥処理場については、コーデックスのHACCP7原則に基づき、食品等事業者自らが利用する原材料や製造方法等に応じて計画を作成し、管理を実施しなければなりません。
一方、小規模な営業者等(食肉・魚介類の販売やパン製造業等)に関しては、各業界団体がHACCPの考え方を取り入れて作成した手引書を参考に、簡略化されたアプローチによる衛生管理を行うことが義務づけられています。
事業所の規模に応じてHACCPとの関連性は若干変化しますが、共通して実施する項目は以下の通りです。
- 一般的な衛生管理(小規模な営業者)およびHACCPに沿った衛生管理(大規模事業者等)に関する基準に基づき、衛生管理計画を作成し、従業員に周知徹底すること
- 必要に応じて、清掃・洗浄・消毒・食品の取り扱い等について、具体的な方法を定めた手順書を作成する
- 衛生管理の実施状況を記録・保存する
- 衛生管理計画および手順書の効果を定期的または工程に変化が生じたとき等に検証し、必要に応じて内容の見直しを行う
企業におけるHACCP導入のメリット
HACCPの導入は食品衛生法によって義務付けられているだけでなく、企業にとってもメリットがあります。
HACCPに沿った衛生管理を取り入れれば、食品事故のリスクが抑えられ、お客様からの苦情やクレームが減少します。また、自社の食品の安全性を対外的にアピールできるのもHACCPのメリットです。特にHACCP認証を取得すれば、企業イメージが向上し、取引先の増加や販路拡大等の効果が期待できます。
HACCPを踏まえた温度管理のポイント
食品の温度管理には、「原材料の搬入・保管」「調理」「一時保管」「出荷・配送」の4つの工程があります。HACCP基準を遵守し、食中毒菌の汚染や増殖を抑えるには、各工程ごとに適切な温度管理が求められます。
原材料の搬入・保管は食品ごとに温度チェック
原材料の搬入時は、まず温度チェックを行い、適切な衛生管理がなされているか確かめます。もし、衛生管理を怠った卸売業者や運送業者の食品を受け入れれば、食中毒発生の恐れがあります。
また、原材料の冷蔵・冷凍保管時も、食品に合わせた温度管理が必要です。食品別の保管温度の目安は後述します。
調理時は中心部を75℃で1分以上加熱
原材料を調理する際は、食品の中心部が75℃で1分間以上加熱されているかどうか中心温度の計測が必要です。加熱が不十分な場合、原材料由来の食中毒菌が残存していたり、増殖したりするリスクがあります。
一時保管時は調理後30分以内に中心温度20℃まで
調理後、食品を一時的に保管する場合は、適切に冷却しましょう。
食中毒の繁殖を防ぐには、加熱調理後から30分以内に食品の中心温度を20℃まで冷却するか、60分以内に中心温度を10℃まで冷却する必要があります。特に調理後すぐに食品が提供されない場合は、必ず中心温度を確認しましょう。
出荷・配送時は10℃以下または65℃以上
食品の出荷・配送を行う際は、保冷設備か保温設備のある運搬車が必要です。温度管理の目安は食品によって異なりますが、食中毒菌の増殖を避けるには、10℃以下または65℃以上の温度管理が必要です。
一般衛生管理とは?
ポイント①原材料の受け入れの確認
原材料を外部から受け入れる際は、腐敗しているものや包装が破れているもの、消費期限が過ぎているもの、保存方法が守られていないものはないかどうか、入念に確認します。具体的には、原材料の見た目やにおい、包装状態、期限・保存方法の表示、品温等をチェックし、問題があるものは返品・交換します。
なお、冷蔵・冷凍での保存が必要な原材料を確認する際は、室温下に置かれる時間が短くなるよう、迅速な確認を心がけましょう。
ポイント②冷蔵・冷凍庫の温度の確認
冷蔵庫や冷凍庫の温度管理が不十分だと、有害な微生物が増殖したり、食品の品質が劣化したりする原因となります。そのため、始業前等には温度計を用いて庫内温度を測定し、冷蔵は10度以下、冷凍は-15度以下になっていることを確認しましょう。庫内温度が適正でない場合は設定温度を再調整しますが、故障している場合は早急にメーカーへの修理依頼が必要です。
なお、適切な庫内温度で保存されていなかった食材に関しては、その状態に応じて利用を控えるか、加熱調理して提供します。
ポイント③交差汚染・二次汚染の防止
生肉や生魚介類は有害な微生物が繁殖しやすく、保温や調理の際に他の原材料に触れると、交差汚染や二次汚染が発生する可能性も少なくありません。生の肉類や魚介類に関してはフタ付きの容器に入れた上でチルド室に保存するか、あるいは最も冷却効果の高い冷蔵室の最下段に保管します。
また、まな板や包丁等の調理器具は、肉用・魚用等用途別に分けて利用し、その都度十分に洗浄・消毒することも心がけましょう。
もし交差汚染や二次汚染が発生した場合は、必ず加熱調理するか、場合によっては食材としての利用を禁止します。
ポイント④器具等の洗浄・消毒・殺菌
調理に利用する器具等に汚れが残っていると、他の食品に汚れや細菌が付着するおそれがあります。まな板や包丁、ボウル等の器具類は利用のたびに洗浄・消毒し、常に衛生的な状態を維持しましょう。また、汚れや洗剤の残りに気付いたら、その都度洗剤で再度洗浄するか、丁寧に流水ですすぎ消毒を行います。
ポイント⑤ トイレの洗浄・消毒
トイレは雑菌や細菌の繁殖率が高い場所であり、トイレを利用した人の手を介して食品が汚染される可能性があります。始業前はもちろん、営業時間の合間にも状況に応じてトイレの洗浄・消毒をきちんと行う習慣をつけましょう。特に人の手が触れやすい便座や水洗レバー、手すり、ドアノブ等は入念に消毒することが大切です。
なお、清掃の際は必ず清掃用の作業着等に着替え、調理等を行う際の服装としっかり区別する必要があります。
ポイント⑥従業員の健康管理・衛生的作業着の着用
調理担当者がノロウイルス等に感染していると、手指等を介して食中毒が発生する可能性があります。同様に、手指に切り傷があったり、汚れたままの作業着を着用して調理を行ったりすると、雑菌や細菌により食品が汚染されたり、異物が混入したりするリスクが高くなります。始業前および作業中には、従業員の体調や手の傷の有無、着衣の状態をしっかり確認し、問題がある場合は調理作業に従事させない、作業着を着替えさせる等の対処を行いましょう。
手指に傷がある場合は、耐水性の絆創膏を貼った上から手袋等を着用すると二次汚染を防げます。しかし、使い捨て手袋を過信するのは厳禁です。手袋を着用していたとしても、正しい方法での手洗いし、汚染を防ぐことを心がけましょう。
ポイント⑦衛生的な手洗いの実施
人の手には目に見えない雑菌やウイルスが付着していることがあるため、常に衛生的な手洗いを実施する必要があります。
具体的には、以下のようなタイミングで手洗いすることを意識します。
- トイレを利用した後
- 調理場に入る前
- 盛り付けの前
- 作業内容を変更するとき
- 生の肉類や魚類等を取り扱った後
- 金銭に触れた後
- 清掃を行った後
冷蔵庫の温度管理の注意点
一般的な衛生管理における「ポイント②冷蔵・冷凍庫の温度の確認」について、特に注意したいポイントは以下の通りです。
- 冷蔵は10度以下、冷凍は-15度以下にする
- 冷蔵、冷凍庫の温度を毎日記録する
食品は10度超~60度の温度帯に置いたままにすると、細菌がどんどん増加します。
冷蔵庫の温度基準は、JIS規格によって冷蔵室は+4度以下、冷凍室は-18度以下と定められているため※、正常に稼働している冷蔵庫なら上記の条件は難なくクリアできます。
出典:一般社団法人 日本電機工業会「電気冷蔵庫及び電気冷凍庫のJIS改正について」
しかし、冷蔵庫が故障または劣化が進むと、庫内が冷えにくくなり、設定温度以上になってしまう可能性があります。冷蔵庫の劣化・故障は目に見えづらいため、庫内の温度を毎日計測・記録し、問題なく稼働しているかどうかを確認しましょう。
なお、冷蔵室および冷凍室の温度確認には、庫外からそれぞれの温度を計測できる装置を利用すると便利です。
冷蔵庫の衛生管理のポイント
冷蔵庫の温度管理を徹底していても、庫内が衛生的に保たれていないと、雑菌や細菌が繁殖しやすくなります。冷蔵庫は毎日利用することから、汚れや雑菌が付着しやすいため、以下のポイントを押さえて衛生管理に努めましょう。
管理①庫内の清潔を維持する
冷蔵庫に入れている食品や飲料、調味料等をこぼしてしまった場合は、すぐに布巾やティッシュ等で拭き取り、洗浄剤を用いて掃除します。食品等を保管するときは、相互で接触しないよう、容器に入れたり、密封性の高い袋に入れたりして、なるべく離して保存するようにします。容器を利用する場合は、しっかりフタや栓を閉めることを心がけましょう。
一方、冷蔵庫の取っ手やドアの表面、チルド室の引き出し等は頻繁に手が触れる場所のため、日頃からこまめに清掃・消毒することを心がけます。食材が集まっている場所も雑菌が繁殖しやすいため、食材の状態をチェックすると共に、清掃・消毒を実施することが大切です。
管理②食材を詰め込みすぎない
食材をぎゅうぎゅうに詰め込みすぎると、冷気の循環が悪くなり、庫内の温度が下がってしまう可能性があります。冷蔵室の利用率は7割程度に抑えることを意識し、定期的に保管した食材・飲料の整理を行いましょう。
一方、冷凍室に関しては、凍らせた食材同士が冷やし合うことで冷凍効率がアップするため、10割の利用率を目指すのが理想とされています。しかし、10割を超えると冷凍室の引き出しがしっかり閉まらず、庫内の温度が低下する原因となるため注意が必要です。
管理③月に1度は庫内の徹底清掃を行う
普段のお手入れは管理③の方法で問題ありませんが、月に1度は庫内の食材やトレイ、ケース等をすべて取り外し、徹底清掃を行うのが理想です。しかし、業務用の大きな冷蔵庫全体を清掃するのは時間と手間がかかるため、清掃する箇所を細かく区分し、段階的に清掃するのがおすすめです。
例えば、1週目は1段目と2段目、2週目は3段目とチルド室、3週目は冷凍室等、細かく区分して清掃することでルーティーン化しやすくなります。
管理④汚れ・雑菌の付着率をチェック
どんなにきれいに清掃・消毒したつもりでも、細かな汚れや菌が残っている可能性があります。清掃後は、生きものを含む多くの有機物に含まれるアデノシン三リン酸(ATP)の検査や、微生物の拭き取り検査等を行い、庫内に汚れや菌が残っていないかどうかチェックしましょう。近年は簡単操作で、スピーディに菌を測定できるATP検査および微生物ふき取り検査用の装置が販売されているため、上手に活用することをおすすめします。
【食品別】原材料・製品の保存温度の一覧表
原材料・製品の保存温度の目安は次の表の通りです。※
出典:厚生労働省「厚生労働省:大量調理施設衛生管理マニュアル」
食品名 | 保存温度 |
---|---|
穀類加工品(小麦粉、デンプン) 砂糖 |
室温 室温 |
食肉製品 細切した食肉・鯨肉を凍結したものを容器包装に入れたもの 冷凍食肉製品 |
10℃以下 -15℃以下 -15℃以下 |
冷凍食品 | -15℃以下 |
魚肉ソーセージ、魚肉ハム及び特殊包装かまぼこ 冷凍魚肉ねり製品 |
10℃以下 -15℃以下 |
液状油脂 固形油脂(ラード、マーガリン、ショートニング、カカオ脂) |
室温 10℃以下 |
殻付卵 液卵 凍結卵 乾燥卵 |
10℃以下 8℃以下 -18℃以下 室温 |
ナッツ類 チョコレート |
15℃以下 15℃以下 |
生鮮果実・野菜 生鮮魚介類(生食用鮮魚介類を含む) |
10℃前後 5℃以下 |
乳・濃縮乳 脱脂乳 クリーム バター チーズ 練乳 |
10℃以下 10℃以下 10℃以下 15℃以下 15℃以下 15℃以下 |
清涼飲料水 | 室温 |
これは原材料の搬入や保管の際の基準であり、加熱調理後の「一時保管」の基準ではありません。同じカテゴリーの原材料・製品でも、保存温度はそれぞれ異なります。
例えば、一般的な食肉製品は10℃以下で保存可能ですが、細切れ(ミンチ)にしてパッケージングした食肉製品や、冷凍食肉製品として販売するのが目的の食肉製品は、-15℃以下で冷凍保存しなければなりません。
食品の搬入・保管にあたっては、食品それぞれの基準を守ることが大切です。
温度管理の手法
食品によって適切な保存基準が異なるため、温度管理・記録には手間がかかります。代表的な温度管理の手法は次の2点です。
紙の表で管理
最も一般的な温度管理の手法が、保管場所に紙の記録表を設置し、記録した温度データを後でExcel等に転記する方法です。
紙の記録表を印刷するだけでよいため、設備投資の必要がないのがメリットです。しかし、「紙の記録表に温度データを書き込む」「記録表を集計し、Excelに入力する」という二度手間が発生するため、あまり効率的な温度管理方法ではありません。
また、ヒューマンエラー対策のため、ダブルチェックを行う必要もあります。ダブルチェックもするとなると現場の従業員の負担が大きくなり、製造工程の生産効率を悪化させる可能性もあります。
タブレット等で管理
紙の記録表を用いる代わりに、保管場所に記録用のタブレットを設置する方法もあります。
この方法なら、タブレットで開いたExcelファイルに直接温度データを入力できるため、二度手間が発生しません。タブレットの導入には設備投資が必要ですが、Microsoft OfficeはiOS、AndroidOS、WindowsのいずれのOSでも利用可能なため、安価な製品を探すことでコストを抑えられます。
しかし、タブレットのデータはいつでも書き換えられるため、データの改ざんリスクに注意が必要です。
手動による管理の限界
手作業での温度管理には、効率性や確実性の点で限界があります。
例えば、工場の生産ラインの場合、食品事故を防ぐには食品の温度や過熱状態を連続的に測定しする必要があります。しかし、手動で温度を計測する場合、10時の計測なら10時、12時の計測なら12時の温度しかわからず、食品の温度を常時モニタリングすることができません。
また、目視での温度計のチェックや手書きでの記録はヒューマンエラーの温床です。もし計測した温度データに不備があった場合、適正な温度管理を行うことができません。こうした管理上の限界から、手動での温度管理ではなく、IoTを活用した温度管理を取り入れる必要があります。
当社IoTシステムの要素技術と役割分担
当社IoTシステムの要素技術と役割分担については、以下の通りです。
デバイス | 温度表示画面付きの温度計(温度ロガー)を採用。 プローブの交換により冷蔵庫、冷凍庫、フライヤー等といった様々な店舗設備の温度を遠隔計測。 |
---|---|
ネットワーク | 3G及びLTEの携帯電話無線ネットワーク。 |
クラウド | 無線ネットワークで収集した温度情報をリアルタイムにプラットフォーム上で集約し、各拠点毎に一覧表示できるようにする。 設備毎に温度を確認しなければならないことから、店舗毎の設備や環境にで異常がないかを一覧で確認できるようにするため、アラート表示を色やアイコンで表示する。 閾値は自由に設定でき、逸脱した場合は画面上のアラートのみではなくメール等で発報できるようにする。 |
ユーピーアールの強み
ユーピーアールの強みについては、以下の3つが挙げられます
- 温度計には親機子機方式を採用。子機はそれぞれ親機に対して無線通信でデータを送信することで、複数の温度監視対象を親機1台にまとめるため、月々の無線ネットワーク費用を圧縮できる。温度監視対象が携帯電波圏外であっても、親機を携帯電波圏内に設置することで遠隔監視が可能。
- 温度監視以外にも、トイレ清掃状況、従業員の手洗い等の一般衛生管理記録の部分も、ウェブアプリケーションの機能としてカスタマイズし、自動帳票化することでHACCP法制化の対応を簡易化する。
- レンタルでのデバイス、サービス提供が可能であるため、資産管理の必要がなく、故障時も交換対応できる。
導入の効果
HACCP法制化により飲食店の設備・環境を管理する手間や面倒が増えると思われているお客様が多くいますが、その手間はIoTにて解決可能です。
- 各種帳票を一定期間保存したり、保健所視察の際に提示したりするのも、全てクラウド上のデータを提示するだけ!保存場所に困らない!
- 温度表示付きの温度計でその場でも確認できる。忙しくて見られない時、不適切なチェック付けを防止し正確な記録を手間なく実施!
- 設備状況や店舗の環境をIoTで遠隔監視するため、セキュリティ性も向上する!
HACCPパッケージ
uprが提供するHACCP対応パッケージ「UPR HACCP」は高額な初期費用を必要とせず、身近なパソコン・スマートフォン・タブレットを使って簡単にできる衛生管理システムです。
システム導入で簡単に衛生管理・データを記録
- 一般衛生管理に必要なチェック項目を記載した標準テンプレート搭載!
- PC、スマートフォン、タブレットから簡単に衛生管理対応をスタートすることが可能。
現場の作業負担も軽減
- 少ない操作で日々のチェック状況をクラウド保存!
- チェック漏れや設定した温度ルールからの逸脱があればアラートメールが飛ぶ。
冷蔵・冷凍庫の温度も自動記録
- IoTデバイスで温度管理を自動化することでチェック作業の省力化が実現!
- 通信機器やキャリアの通信サービスもワンストップでご提供可能!
手間をかけずに導入することができます
まとめ
食品衛生法の改正に伴い、より厳密な食品管理が求められる中、温度管理の重要性はさらにましていくと思われます。また、その中でもHACCPは各企業様でも話題の1つとなっており、どのように対応すべきか気になっている方も多いのではないでしょうか。
HACCPは従来の品質管理手法と違い、フードチェーンの全行程の危害要因(ハザード)を分析し、安全衛生管理体制の構築を目指します。HACCPを導入することで、食品の異物混入や食中毒事件といった食品事故が起きるリスクを減らし、一般消費者や取引先の信用を守ることが可能です。
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