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「LPWA(LPWAN)」とは?特徴や種類ごとの比較、活用事例についてわかりやすく解説!

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無線通信技術「LPWA(LPWAN)」とは?種類や活用事例をわかりやすく解説

☑このページで紹介している内容はシステム開発が必要です。
☑このページで紹介している内容はIoTの活用案です。
 

LPWA(LPWAN)とは

LPWAとは、「Low Power Wide Area」の頭文字を取った略語で、低電力で長距離かつ広範囲の通信を可能にする技術を指します。

低電力の通信技術としてはBluetoothも普及していますが、通信距離は10m程度です。一方、LPWAを用いると50km程度の通信も可能であるため、IoTの発展を支える技術の1つとして注目されています。また、電力を確保しにくい場所でも有効です。

LPWA(LPWAN)の使い道

LPWA(LPWAN)には、具体的にどのような使い道があるのでしょうか。

LPWAは身の回りの家電から、産業分野や公共サービスに至るまで、様々なシーンで活用される通信技術です。特に産業分野では、LPWAの通信距離の長さに注目し、物流・輸送管理にLPWAを活用する事例が増えています。

LPWAは国境や広範囲を超えても通信が可能なため、船や飛行機で利用する輸送パレットにLPWAモジュールを装着し、紛失防止に役立てられています。

輸送パレットの動線を可視化できるため、輸送ルートの再検討や効率化も可能です。公共サービスにおいても、LPWAは自然災害対策で活躍しています。

例えば、甚大な被害をもたらした2017年7月の九州北部豪雨の反省から、国土交通省はLPWAの規格の一種であるLTE-Cat.1を利用し、危機管理型水位計を1,000台導入しました。低コストなLPWAを採用した結果、従来の10分の1から100分の1にコストを抑えることに成功しています。

LPWAの通信距離の長さや消費電力の低さは、IoTの要件にも合致しており、近年はIoTソリューションでもLPWAの導入事例が増加しています。

LPWA(LPWAN)とほか通信規格との違い

LPWA(LPWAN)のほかにも、IoT分野で使われる通信規格には、「3G/LTE/5G」「Wi-Fi」「Bluetooth」「NFC」等があります。それぞれの通信規格の通信距離と通信速度の違いを次の表にまとめました。

通信距離 通信速度
LPWA 遠い 遅い
3G/LTE/5G 遠い 速い
Wi-Fi 中間 速い
Bluetooth 近い 速い
NFC 近い 遅い

LPWAは3G/LTE/5GやWi-Fiよりも低速ですが、通信距離が長いという特徴があります。

LPWAの最大伝送速度はLoRa方式でおよそ250kbpsであり、最大伝送速度が37.5~150Mbps程度のLTEや、1Gbpsに達するWi-Fi(IEEE 802.11ac)にはおよびません。しかし、LPWAは消費電力が非常に少ないことが特徴で、さらに約50 kmの長距離伝送が可能です。

 

LPWA(LPWAN)の3つの特長

LPWAは優れた伝搬特性と低電力消費を持つため、IoTデバイスをインターネットに接続する際に適した通信規格です。従来の通信規格と比べても、低コストで運用できます。LPWAの主な導入効果は以下の3つです。

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1. 優れた低消費電流性能によって少ない給電でも長時間稼働する

LPWAは、LTEやWi-Fiといった既存の無線通信規格と比べて電力消費量が少ないため、一度の給電で長時間稼働させることが可能です。

小型フォームファクタの蓄電池を動力源とした場合でも、数年程度の動作継続が可能であり、IoTデバイス向けの通信規格として国内外の多様な企業で実証・運用されています。

例えば、スマートフォンで利用されているバッテリーには5,000mAhの大容量製品があり、連続待受時間が1ヶ月以上のデバイスも存在します。

一方、電圧3.0Vのコイン型リチウムバッテリーは容量が250mAh程度ですが、LPWAはこのような小容量ぱってりーでも年単位で動作継続が可能なため、頻繁な給電を必要としません。

従来のIoT/M2MデバイスはLTEやWi-Fi等の通信規格が主に利用されていましたが、これらの通信規格は本来IoT/M2Mデバイス向けに設計されたものではありません。

そのため、デバイス間のデータ通信は高速であるものの、電力消費が多いという課題がありました。

これに対し、LPWAはIoT/M2Mデバイスに特化して設計されており、データ通信速度を抑える代わりに低消費電力を実現した通信規格です。

2. ナローバンド(狭帯域)の利用で10kmを上回る長距離通信が可能

LTEをはじめとする従来の通信規格は、一般的に10〜20MHzクラスのブロードバンド(広帯域)を利用しており、高速なデバイス間のデータ通信が可能です。

しかし、有効通信距離が短いため、郊外や僻地でのデバイス接続が難しく、これがIoT導入のハードルとなっていました。

一方、LPWAは低速なナローバンド(狭帯域)を利用することで、10kmを超える長距離のデータ通信が可能です。

例えば、Wi-FiやBluetoothはブロードバンドを利用して近距離でのデバイス接続や大容量データ通信に優れていますが、有効通信距離はそれぞれ10〜300m程度になります。

それに対し、LPWAの通信距離は従来の通信規格と比べて数十倍広いため、IoTデバイスがオフラインになるリスクを大幅に減らすことが可能です。

また、LPWAを利用することで、都市部と比べてインフラが整備されていない郊外や僻地でも簡単にネットワークに接続できる環境が整います。

さらに、洋上でもデバイスのインターネット接続が可能なため、ロケーションによるIoT導入の障壁を解消します。ライセンスが不要な規格を利用すれば、企業に限らず個人規模でも導入可能です。

3. 多くのエンドデバイスをインターネットに同時接続して利用できる

LPWAはビットレートが低く、LTEやWi-Fiと比べると通信速度が遅いものの、多くのエンドデバイスを同時にインターネットへ接続することができます。

LPWAを利用したデバイスのインターネット接続は、配送業における在庫管理やビニールハウスごとの温度測定といった、多数のデバイスを利用する場面でコスト低減が可能です。

大手通信キャリアの検証結果では、LPWAの利用で100台のエンドデバイスを同時接続・運用ができることが確認されています。

例えば、LTEのビットレートは300Mbpsを超える規格がほとんどであり、Wi-Fiの場合は1Gbpsに達する高速な規格も存在します。

これに対し、LPWAは大手通信キャリアの実証実験で用いられた規格でも最大250kbps程度であり、従来の通信規格と比べると低速です。

しかし、IoTデバイスでは緯度経度情報や数値データといった小容量のデータを送信・受信するケースがほとんどであるため、LPWAのビットレートでも問題なく運用が実現できます。

ビットレートの向上させると同時接続できるデバイス数が減少するため、多数のIoTデバイスを運用する分野ではLPWAの仕様が適しており、逆にLTEやWi-Fiといった通信規格は不向きです。

 

LPWA(LPWAN)の種類

LPWAは大別すると

  • 運用するに際してライセンスを必要とする規格
  • ライセンスが不要な規格

の2種類が存在します。主要なLPWAは以下の4種類です。

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1. 【LoRaWAN】ビットレートは上下ともに0.3〜50kbps

大手通信キャリアの実証実験でも利用されたLPWA規格の1つが「LoRaWAN」であり、ビットレートは上り・下りともに0.3〜50kbpsほどです。

LoRaWANは、主にアメリカの半導体メーカーとIBMによって実用化された規格で、データ通信にはSub-GHz無線(1GHz以下の周波数帯)を利用します。通信距離は約10〜20kmにおよび、運用するに際してライセンスも必要としません。

Sub-GHz無線は低速ながらほかの周波数帯域による干渉を受けにくく、伝搬特性が優れているため安定したデータ通信を行えます。

一方、Wi-Fiをはじめとする従来の通信規格では、複数の周波数帯が混在すると互いのデータ通信を妨害してしまうケースがありました。しかし、Sub-GHz無線を利用するLoRaWANでは、多数の周波数が飛び交う環境でもデバイスの動作に支障をきたしません。

さらに、LoRaWANは待機時の消費電力が極めて低く、実稼働時の消費電流の1/100に抑制できるため、IoTデバイスの長期運用に適した規格として注目されています。

2. 【Sigfox】ビットレートは上り100bps下り600bps

Sigfoxは2009年ごろにフランスで実用化されたLPWA技術であり、ヨーロッパに限らず日本を含むアジア諸国の物流やインフラ分野で普及しつつある規格です。

Sigfoxのビットレートは上りが100bps、下りが600bps程度であり、LoRaWANと同様に運用するに際してライセンスが不要なSub-GHz無線を利用してデータ通信を行います。

Sigfoxは低速であるため、運用する台数が多いほど単一デバイスあたりのコストを低く抑えられます。また、UNB(超狭帯域)であるため最長50kmの長距離通信が可能です。

低消費電力性能にも優れているため、IoT分野での活用に最適な規格ですが、メッセージ容量や1日あたりの通信サイクルに上限が設けられています。

3. 【LTE Cat.M1】ビットレートは上り1Mbps下り0.8Mbps

LTE Cat.M1は、スマートフォンのデータ通信に利用されているLTEに準拠したLPWAの一種で、ビットレートは上り1Mbps、下り0.8Mbps程度です。

従来のLTE規格は高速通信を実現するために高周波数帯を利用していましたが、LTE Cat.M1は従来よりも狭い帯域を利用し、低消費電力性能や伝搬特性を向上させて、IoTデバイスのインターネット接続に適した仕様に変更されています。

LTE Cat.M1は、3GPPという3つの組織から構成される標準化団体によって策定された通信規格であり、運用にあたってはライセンスが必要です。

また、通話が可能な仕様であるため、通話機能を備えたエレベーターや配送事業におけるトラッキング等の分野での活用が有望視されています。

4. 【NB-IoT】ビットレートは上り63kbps下り27kbps

NB-IoTはLTE Cat.M1と同様にLTE準拠のLPWA規格ですが、さらに狭小な180kHzの周波数帯を利用することで、IoTデバイスのインターネット接続に特化しています。

運用するに際はライセンスが必要であり、ビットレートは上り63kbps、下り27kbps、通信距離は最大で約20kmとされています。

NB-IoTは既存のLTEで利用されている周波数帯を活用するため、すでにLTEのネットワークが整備された環境であれば、新たにインフラを構築する手間がかかりません。

また、低速通信であるため電力やガスの使用量を測定するスマートメーターや、駐車スペースの出庫管理を行うスマートパーキング等に適した規格です。

5. 【ELTRES】ビットレートは上り80bps

ELTRESは、ソニーネットワークコミュニケーションズ社が開発した次世代LPWA通信規格で、IoTへの利用に適した特長を備えています。ELTRESの強みは、見通しの良い環境で100km以上の拠点間をつなぐことができる長距離伝送性能です。従来のLPWAとは異なり、IoTデバイスが時速100km以上の速度で移動しても伝送性能に支障がない点が特長でもあり、後発の技術ながら大きな注目を集めています。

さらに、ソニーネットワークコミュニケーションズ独自の「誤り訂正」技術により、通信が混雑しがちな都市部でも安定して利用することが可能です。

6. 【ZETA】ビットレートは上下ともに100bps~50Kbps

ZETAは、ZiFiSense社が開発した通信規格で、低消費電力ながら2~10km程度の長距離伝送が可能です。ZETAの特長は、ほかのLPWA規格と比べて超狭帯域(ウルトラナローバンド)で通信可能なため、ほかの電波からの干渉を受けにくい点にあります。

ZETAは安定した双方向通信を実現でき、堅牢性が求められるインフラ分野での利用も想定されています。

 

そのほかの無線通信規格

4種類のLPWANのほかにも、IoTに利用される無線通信規格は存在します。代表的なものが、BLE(Bluetooth Low Energy)、SmartHop、RPMAの3種類です。

BLE(Bluetooth Low Energy)

BLE(Bluetooth Low Energy)は、無線通信に利用されるBluetoothの規格の一部で、小型・低価格・低消費電力が特長です。

そのため、LPWA(LPWAN)とならび、IoT機器やIoTソリューションに採用され、Bluetoothを搭載したデバイスの出荷数は、2017年には40億個を超えています。

Bluetoothはスマートフォン、PCといった身近なデバイスをはじめとして、マウス・イヤホン・マイクといったパソコン周辺機器や、スマートウォッチやスマートスピーカー等のIoTデバイス、さらにはカーナビゲーションにも搭載されています。

無線通信規格として非常に広く普及しており、BLEの追加により接続用途がさらに拡大しました。

BLEがBluetoothの規格に追加されたのは、2009年12月「Bluetooth4.0」アップデート以降です。従来のBluetoothは小型化・低価格化が進んでおり、IoTに適した特徴を持っていましたが、通信距離が10m以内と短く、消費電力量が多いといった制約もありました。

「Bluetooth4.0」へのアップデートにより、消費電力量が大幅に低下し、デバイスは一般的なボタン型電池1つで数年間の連続稼働が可能となりました。

そのため、スポーツやフィットネス分野でのウェアラブルデバイスや、医療現場で用いられる医療機器やヘルスケア機器、省電力ビーコン(無線標識)等、短距離での接続用途を中心に広く採用されています。

さらに、2013年12月の「Bluetooth 5.0」アップデートでは、125kbps、500kbps、1Mbps、2Mbpsの4つのビットレートから選択でき、接続用途に合わせて規格値を選べるようになりました。ビットレートが125kbpsの場合、最大通信距離は約400mとなり、大規模な工場や生産施設でも、エッジデバイスとゲートウェイを接続し、センサーからデータをインターネット上へ転送することが可能です。

しかし、Bluetoothの有効接続距離の短さという課題が完全に解消されたわけではありません。BLEの場合、通信速度や距離が増加すると、消費電力も増加するという特徴があります。つまり、両者はトレードオフの関係です。IoTシステムの要件である低消費電力を前提とすると、低速度・短距離での接続用途に限られる点は以前のBluetoothと同様になります。

また、近年ではBluetoothルーターの開発が進んでおり、消費電力量を抑えつつ、長距離通信を可能にする技術革新が期待されています。

SmartHop

IoTに利用される無線通信規格には、ベンダーが独自に開発したモノも少なくありません。そのうちの1つが、日本発のSmartHopです。

SmartHopは高い省電力性能を持ちながら、到達性・回折性が高く、広範囲におよぶマルチホップが可能な通信規格です。障害物があるような場所でも、大規模なIoTシステムが構築できるため、国内の大手メーカーを中心に技術開発が進んでいます。

SmartHopの最大の特長といえるのが、920MHz帯の電波を利用する無線通信規格を採用していることです。これまで、920MHz帯の利用には無線局への免許申請が必要でした。しかし、2012年7月の電波法の改正により、免許申請が不要となったため、産業用途での利用が進んでいます。

Wi-FiやBluetoothといった従来の無線通信規格では、2.4GHz帯の帯域が利用されていますが、920MHz帯は2.4GHz帯よりも通信可能な距離が長い点が特長です。また、到達性・回折性が高く、障害物がある場所でも電波が迂回するため、通信の安定性の点でも優れています。

2.4GHz帯とは異なり、920MHz帯は大容量・高ビットレートでの通信には向いていませんが、小容量のセンサーデータのやりとりが中心のIoTシステムに搭載する場合、それほど大きなデメリットにはなりません。

むしろ、低ビットレートであるかわりに消費電力が低いため、IoTシステムを構築する場合に最適です。

例えば、10分間隔でSmartHopでの通信を行う場合、10年を超える電池駆動が可能なほどの省電力性能を持っています。自律電源駆動も可能であり、外部から電源が得られない僻地や山間部でも、IoTシステムの構築ができます。

SmartHopのもう1つの特長が、1対n通信が可能であり、1台のゲートウェイと数多くのエッジデバイスを接続できる点です。

SmartHopはマルチホップ通信に対応しているため、複数の中継機を経由することで、バケツリレー方式で広範囲の通信が可能です。

920MHz帯の通信距離の長さや、到達性・回折性の高さも考慮すると、大規模な工場や生産施設のIoTシステムの構築に適しています。

SmartHopを採用すれば、障害物のない場所では1km以上、障害物のある場所でも数百メートルの範囲で、安定したネットワークを構築できます。

国内発の独自規格でありながら、40社以上のベンダーがSmartHopに対応したデバイスを開発しているため、デバイスの選択肢が多く、導入に際して柔軟性が高い点もメリットの1つです。

RPMA

IoTシステムに利用される独自通信規格として、もう1つ注目を集めているのが、アメリカやオーストラリアを中心に採用が進むRPMA(Random Phase Multiple Access)です。

RPMAエネルギー産業を主なターゲットとしています。2012年の開発以来、エネルギー会社、石油や天然ガスの油田、パイプライン等の分野で、急速に採用が進んでいます。これは、RPMAは非常に広範囲の通信距離を持ち、数万台規模での1対n通信に対応しており、インフラ設備に非常に適しているためです。

RPMAの最大の特長は通信距離にあります。米国やオーストラリアの事例では、1つの基地局で約768平方kmのエリアをカバーしており、1対n通信にも対応し、同時に数万台のエッジデバイスと安定した接続が可能です。

SmartHopとは異なり、2.4GHz帯の帯域を利用しますが、障害物を回避する性能に優れているという特長もあります。例えば、RPMAのモジュールが地下に設置されている場合でも、コンクリート等の障害物を透過し、安定したデータ通信が可能です。

また、RPMAはデータ伝送の帯域幅(スループット)が広く短時間で大量のデータを送信できる点も強みです。1つのアクセスポイントにつき、最大で1万9000bps/MHzのスループットを持っており、これは従来のLPWA規格と比較して約54倍の性能を持っています。

しかし、ビットレートはそれほど高速ではなく、アップロード時に31kbps、ダウンロード時は15.6kbpsですが、IoTデバイスでの小容量のセンサーデータのやりとりであれば問題ありません。

さらに、省電力性能にも優れており、単3電池1本でデバイスが10年以上連続稼働することが可能です。現在、国内の導入事例は少ないものの、2016年にはスイスのベンダーからRPMAに対応の通信モジュールが販売され、今後、エネルギー産業を中心に今後導入が進んでいくと期待されています。

 

LPWA(LPWAN)の仕様比較

ここでは、LPWA(LPWAN)の主要な通信規格を「運用するに際してライセンスを必要とする規格(ライセンスバンド)」「ライセンスが不要な規格(アンライセンスバンド)」の2種類に分けて比較していきます。

アンライセンスバンド ライセンスバンド
システム SIGFOX LoRa NB-IoT eMTC
推進団体 SIGFOX(仏) LoRa Alliance(米) 3GPP 3GPP
使用周波数 920MHz帯(免許不要の周波数帯) 920MHz帯(免許不要の周波数帯) 携帯電話の帯域 携帯電話の帯域
通信速度 上り:100bps下り:600bps 上り/下り250bps~50kbps程度 上り:62kbps下り:21kbps 上り/下り300kps~1Mbps
カバレッジ拡張 数Km~数十Km 数Km~数十Km 数Km~数十Km 数Km~数十Km
ビジネスモデル SIGFOXまたはパートナー事業者がネットワークを展開し、世界51か国でIoTサービスを展開(2018年1月時点) LoRa Allianceの認定機器を用いることで、誰でもネットワークを構築可能。67の通信事業社がLoRaを展開しており、世界100ヶ国以上、300ヶ所以上で実証・運用(2018年1月時点) 3GPPリリース13(2016年6月)で仕様化。各国・地域の携帯電話事業者が商用サービス開始に向けた実証等を実施 3GPPリリース13(2016年6月)で仕様化。各国・地域の携帯電話事業者が商用サービス開始に向けた実証等を実施
備考 新たな無線通信システム 新たな無線通信システム 携帯電話システムベース 携帯電話システムベース

出典:総務省移動移動通信課「LPWAに関する無線システムの動向について」(令和6年10月8日利用)

 

LPWA(LPWAN)の消費電力について

LPWA(LowPowerWideArea)は、その名称が示す通り、既存の通信技術と比較して、非常に低消費電力で動作する通信技術です。

無線LANや3G・4G等の既存の通信技術は消費電力が大きく、人があまり立ち入らない場所等では利用が難しい場合がありましたが、LPWAはそのような環境でも無線モジュールとして役立てやすい技術となっています。

また、低消費電力の通信技術にはBluetoothLowEnergyやZigBee等がありましたが、こちらは通信距離が10m以内という近距離無線でした。一方、LPWA(LPWAN)は数百mから数㎞という広域の通信が可能となっており、様々な用途での利用が拡大しています。

 

IoTソリューション普及に向けたLPWA(LPWAN)の活用

現在、IoTソリューションは急速に普及しており、Industrial4.0、スマート農業、HEMS・BEMS、そしてユーピーアールが目標として掲げるLogistics4.0等、無線通信ネットワークの利用を前提としたソリューションが、業務効率化や情報リソースの有効活用に欠かせないものとなっています。

IoTシステムが広範囲に普及するためには、リアルタイムのデータ活用と、コストや環境の制約を受けないフィールドでのデータ収集が不可欠です。しかし、現在の無線通信ネットワークは高速・長距離伝送が可能ですが、人がいる場所を中心にインフラが構築されており、電力消費が大きく通信コストも高いため、限られた環境でのデータ収集にとどまっています。

その結果、無線通信ネットワークがサービス利用のネックとなり、IoT市場の拡大を妨げる要因になっていると考えられます。

IoTソリューションにおいて必要なデータ通信は、比較的小規模なデータのやり取りが中心であり、現在の無線通信ネットワークでカバーされていない山間部等のデータは、必ずしもリアルタイムで頻繁に通信する必要がないケースが多いです。

そのため、低消費電力で低速・長距離伝送が可能なLPWA(Low Power Wide Area)の活用が注目を集めています。

本稿ではLPWA(Low Power Wide Area)の代表的な活用例を紹介します。

 

LPWA(LPWAN)活用例【モバイルGPSデバイスとして】

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低消費電流だからモノにつけやすい!

携帯電話やスマートフォンに搭載されたGPSにより、位置情報の管理や追跡、位置情報を利用したサービス等は既に一般的になっておりますが、位置追跡のニーズは「モノ」につける分野で非常に多く残されています。

ただし、モバイルGPS端末は基本的には人が持つデバイスとして設計されることが多く、地図によるナビや高齢の方や子供の見守り等、定期的に電源を管理することが前提です。

そのため「モノのインターネット」であるIoTの分野では、モバイルGPSデバイスを既存の無線通信ネットワークで利用するのには向かないところがあります。

例えば

  • パレットやカーゴ台車等のマテハン機器の紛失対策⇒モノが大量にあるため充電の運用負荷が高い
  • メーカーからエンドユーザまでの商品の流通追跡⇒途中で人が介在することができないため充電できない
  • 店舗倉庫の商品盗難防止⇒いつ動くかわからないためできるだけ長時間稼働が望ましい

等のニーズでは、専用サービス以外では対応できない難しい分野とされてました。

しかし、LPWAを利用したデバイスは低消費電力であるため、一度の給電でモノによっては5年~10年は無給電で稼働させることが可能です。


 

LPWA(LPWAN)活用例【僻地でのIoT導入の自営網として】

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免許不要で長距離伝送できるから簡易基地局として利用できる!

IoTの分野では、人が頻繁に介在できる都市部よりも、むしろ郊外・僻地にてモノの監視や制御を求める声が多くあります。

しかし、免許不要の簡易無線局では数百m程度の伝送しかできず、公衆無線ネットワークも人が多い場所を中心にインフラが整備されているため、僻地でIoTを導入する際には、有線でネットワークを引き込む必要がありました。

そのため、以下のようなIoTソリューション対するニーズには、応えられていませんでした。

  • 山奥の建設現場や、採掘現場等でモニタリングを行う⇒圏外でかつ、回線引き込みが現実的な費用ではできない
  • 洋上の水温監視や、池や河川の推移監視等⇒水上に簡易的に無線ネットワークを設置する方法が限られる
  • 農場や牧場等の遠隔監視・遠隔制御⇒地面・上空ともにケーブルを敷設するべきではない

LPWAを利用したデバイスであれば、免許申請なく設置することができ、かつ郊外であれば10kmほど伝送することが可能です。

そのため、郊外・僻地や河川・海・森林等のネットワーク接続エリアとして導入のハードルが高いロケーションでも、IoTを導入することができるようになります。


 

LPWA(Low Power Wide Area)活用例【多量のIoTデバイス監視のコストダウン】

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低速通信だから安価に導入可能!

IoTの分野では、「モノ」にインターネットを付加する特性上、ときには数百台から数千台のデバイスをモニタリングすることが必要です。

例えば、家庭用のガスメーターや電力メーターの監視を通常の無線通信契約で行うと、通信料だけで1ヵ月あたり100万円を超える費用がかかることもあります。

そのため、以下のようなIoTソリューションのニーズには応えられていませんでした。

  • メーター監視
  • 自社商品のメンテナンス用IoTデバイス
  • テレマティクス 等

これらのニーズは、大量のデータ通信を必要としないため、低速通信契約によってコストを抑えることがIoT導入のハードルを下げる鍵となります。

LPWAを利用したデバイスであれば、1年間で100円程度の料金プランもあり、低いランニングコストと運用によって得られるメリットのバランスにより、IoT導入が非常に有利です。


 

LPWA(LPWAN)の未来

LPWA(LPWAN)は、伝送速度が高いLoRa方式を中心に、すでにアメリカやフランス、オランダ、台湾等で広く普及しています。日本ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れから、一般的な通信規格にはまだなっていませんが、近年のIoT分野への関心の高まりに伴い、低コストで通信距離が長いLPWAへの注目が集まっています。

LPWAの課題の1つは、モジュールのコストです。国内でLPWAが普及し、モジュールの量産を行うメーカーが増加すれば、導入の障壁が低減されることに期待されます。国土交通省がLPWAを採用して低コストの危機管理型水位計を構築した事例もあり、今後ますますLPWAへの期待が高まっています。

 

ユーピーアールのIoTソリューションであらゆる管理を自動化

ユーピーアールは、低消費電力で長距離伝送が可能なLPWAを利用し、様々なIoTソリューションを提供しています。例えば、LPWAを利用した遠隔監視ネットワークを構築し、以下のようなサービスを開発しました。

  • 工場内の広大な敷地をカバーし、複数の工場設備を自動でモニタリング
  • 生産ラインのメンテナンス情報を蓄積し、保守部品の在庫を適正化
  • 温湿度データを10分ごとに取得し、HACCPの基準を満たす衛生管理を実現

ユーピーアールなら、工場や物流倉庫、インフラ等、設置場所に合わせたLPWAサービスを実現することが可能です。

 

まとめ

LPWA(LPWAN)は、少ない電力で、長距離かつ広範囲の通信が可能な通信技術です。郊外や僻地、河川・海・森林等、電源が限られた場所でも活躍するため、すでに自然災害対策への活用事例も見られます。

また、LPWAはIoTソリューションにも適しており、産業分野では物流や輸送管理の効率化に活用されています。今後、DX(デジタルトランスフォーメーション)への関心が高まる中、LPWAの利用がさらに拡大することが期待されています。

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