HACCP計画書とは?作成方法や衛生管理の流れを解説
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HACCPとは
2021年6月1日より、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の考え方に沿った衛生管理の導入が義務付けられました。厚生労働省によると、HACCPとは食品の安全性を損なう危害要因(ハザード)を除去または低減するため、原材料の入荷から製品の出荷までの全工程において、特に重要な工程を特定して管理する手法です。※
出典厚生労働省「HACCP(ハサップ)」(令和6年9月17日利用)
食品の危害要因には、食中毒菌による食品の汚染や、金属片・ガラス片等の異物混入が含まれます。従来の衛生管理では、食品のサンプルを一部抜き取り、細菌試験や異物試験を行う「抜き取り検査」が主流でした。
しかし、抜き取り検査では抽出したサンプル以外の食品に問題がある可能性を排除できず、食品事故のリスクを完全には防げませんでした。新しいHACCP方式では、食の危害要因の分析に基づき、食品製造の全工程を見直すことで、食品事故のリスクを根本的に低減できます。こうした利点から、日本でもHACCPの義務化がスタートしました。
HACCPの対象事業者
しかし、食品事業者の事業規模によって、HACCPに沿った衛生管理を完全に実施するのが難しい場合も少なくありません。また、営業形態によっては、公衆衛生に与える影響が少ない場合もあります。厚生労働省はこれらの事情を考慮し、HACCP義務化の対象となる食品事業者を以下の2種類に分けています。※
取組内容 | 対象事業者 | |
---|---|---|
HACCPに基づく衛生管理 | HACCP7原則に基づき、HACCPに基づく厳格な衛生管理を行う | ・大規模事業者 ・と畜場 ・食鳥処理場 |
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理 | HACCPについての各業界団体の手引書に基づき、簡略化された衛生管理を行う | ・小規模な営業者 (食品等の取扱いに従事する者の数が50人未満) |
出典厚生労働省「HACCP(ハサップ)」(令和6年9月17日利用)
衛生管理にHACCPを取り入れるメリット
HACCPに沿った衛生管理を導入すると、企業側にも様々なメリットが得られます。衛生管理にHACCPを取り入れるメリットは次の3点です。
社員の衛生管理意識が向上する
厚生労働省のアンケート調査によると、HACCPの導入効果として最も多く声が寄せられたのが、「社員の衛生管理に対する意識が向上した(78.2%)」でした。※
HACCPを制度化すれば、社員の日頃の衛生意識を高め、より安全に作業してもらうことができます。
出典厚生労働省「HACCPの普及・導入支援のための実態調査結果[pdf]」(令和6年9月17日利用)
食品事故やクレームを減らす
また、HACCPの概念を取り入れることで、製造工程から食の危害要因を取り除き、食品事故のリスクを低減することが可能です。食品の安全性を高めれば、顧客からのクレームも減少します。厚生労働省のアンケート調査でも、32.3%の企業が「クレーム・事故が減少した」と回答しています。※
出典厚生労働省「HACCPの普及・導入支援のための実態調査結果[pdf]」(令和6年9月17日利用)
食品事故が発生したときの対応をスピードアップ
万が一食品事故が発生しても、HACCPの衛生管理計画書や衛生管理記録を作成しておけば、迅速に原因を追求することが可能です。食品事故が起きたときのリスクを最小化し、自社の信用力の低下を防げます。厚生労働省のアンケート調査でも、37.7%の企業が「製品に不具合が生じた場合の対応が迅速に行えるようになった」と回答しています。※
出典厚生労働省「HACCPの普及・導入支援のための実態調査結果[pdf]」(令和6年9月17日利用)
HACCPを取り入れた衛生管理の流れ
それでは、どのようにして衛生管理にHACCPの考え方を取り入れるとよいのでしょうか。HACCPの導入プロセスを3つに分けて解説します。
HACCPについての手引書を探す
HACCPの導入には、食の安全を守るために現場レベルでの仕組みづくりや、HACCP計画書(衛生管理計画書)、衛生管理記録の作成等、事業者が行うべき役割が数多くあります。
まずはHACCP導入の流れを理解するため、厚生労働省や各業界団体が作成したHACCPについての手引書を参照しましょう。特に、厚生労働省が作成した「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」は、飲食店や製造工場、旅館・ホテル等、幅広い業種において活用できるものになっています。
衛生管理計画書を作成する
次にHACCPの考え方に基づき、衛生管理計画書を作成します。衛生管理計画書は「一般衛生管理計画書」「重要管理計画書」の2種類です。一般衛生管理計画書、重要管理計画書は、いずれも営業許可の申請や更新の際に提出を求められるため、必ず作成しておく必要があります。
HACCP計画の実施状況をモニタリングする
最後に、HACCP計画が適切に実施できているかどうかを検証するため、実施状況をモニタリングする仕組みをつくります。特に衛生管理の実施状況の記録は、「HACCPに基づく衛生管理」「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象事業者の両方が実施しなければなりません。
HACCP計画書(衛生管理計画書)の作成方法
HACCP対応の最初のハードルとなるのが、HACCP計画書(衛生管理計画書)の作成です。ここでは、HACCP計画書をスムーズに作成するポイントを3つ紹介します。
厚生労働省の手引書を参考にする
前項で述べたとおり、HACCP計画書(衛生管理計画書)の作成する際、厚生労働省や各業界団体が作成した手引書を参考にしましょう。手引書には、衛生管理計画書の雛形や書き方のポイントが詳しく記載されています。また、厚生労働省のホームページには、様々な業態・業種に対応した計110種類の手引書が用意されています。※
出典厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」(令和6年9月17日利用)
一般衛生管理と重要管理の2種類を作成する
HACCP計画書は、「一般衛生管理計画書」と「重要管理計画書」の2種類を作成するのが一般的です。前項で述べたとおり、営業許可の申請・更新時に衛生管理計画書の提出が必要となります。厚生労働省の手引書によると、一般衛生管理計画書、重要管理計画書では、以下のような内容を盛り込むのが一般的です。
- 原材料の受入
- 冷蔵・冷凍庫の温度の確認
- 交差汚染・二次汚染の防止(器具等の洗浄・消毒・殺菌、トイレの洗浄・消毒)
- 従業員の健康管理・衛生的作業着の着用等(手洗いを含む)
重要管理では、製造工程の危害要因を分析し、特に管理すべき工程を記載します。例えば、食品の調理の場合、食品を以下の3つのグループに分類し、それぞれ管理方法を決めていきます。※
第1グループ 非加熱のもの |
刺身、冷奴等 |
---|---|
第2グループ 加熱するもの |
ステーキ、焼き魚、焼き鳥、ハンバーグ、てんぷら、唐揚げ、ライス等 |
第3グループ 加熱後冷却し再加熱するもの、または、加熱後冷却するもの |
カレー、スープ、ソース、たれ、ポテトサラダ等 |
出典厚生労働省「HACCPの考え方に基づく衛生管理のための手引書 (小規模な一般飲食店事業者向け)[pdf]」(令和6年9月17日利用)
HACCPをスムーズに導入するには、HACCP計画書の内容を具体化することが大切です。重要管理については、厚生労働省の手引書をチェックしましょう。
自治体のテンプレートを活用する
厚生労働省の手引書に加え、自治体が作成している様式やテンプレートを活用することも可能です。例えば、千葉市では衛生管理計画書(一般的衛生管理、重要管理)のほか、衛生管理記録の様式をホームページ上で公開しています。
食品の衛生管理に加え、万が一食品事故発生時の対応も含めると、HACCP計画書の作成には手間がかかることがあります。そのため、必要に応じて所在地の自治体が提供するテンプレートを活用することも1つの方法です。
uprでは飲食店向け衛生管理計画書作成支援も行っています。HACCP計画書(衛生管理計画書)にお悩みであれば、お気軽にご連絡ください。
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の実施ポイント2つ
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を実施する上で、重要なポイントは2つあります。
まず、HACCP計画書(衛生管理計画書)の「重要管理」の項目は、必ず具体的に記載する必要があります。内容を具体化するため、必要に応じて現場のヒアリングを実施することが重要です。また、HACCP計画書をただ作成するだけでなく、定期的に計画書の内容を見直し、計画書に基づいて適切に衛生管理が記録されているか確認しましょう。
現場のヒアリングに基づいて「重要管理」を決める
HACCPに基づく衛生管理を実施する際、特に重要なのが「重要管理」の項目です。重要管理では、食中毒菌の繁殖や金属片・ガラス片等の異物混入を防ぐために、重点的な衛生管理が行われます。
しかし、正確に重要管理点を決めるには、食品製造や調理の知識が求められます。そのため、重要管理を決定する際には、必ず現場の担当者や作業者へのヒアリングを実施し、できるだけ詳細に内容を記載することが重要です。
例えば飲食店の場合、保健所に提出する重要管理計画書はA4サイズの用紙で4枚程度となる場合が一般的ですが、食の安全を確実に守るためには、2~3倍の枚数が理想的です。
定期的にHACCP計画書や衛生管理記録を見直す
HACCP計画書を作成するだけでは、正しい衛生管理の実施につながりません。現場の作業者へ周知徹底を行うとともに、衛生管理計画書や衛生管理記録を定期的に見直すことが大切です。特に衛生管理記録は必ず振り返りを行い、HACCPの考え方に基づく衛生管理が適切に行われているか、現場で繰り返し問題が起きていないかを確認しましょう。
もし同じ問題が繰り返し発生する場合は、HACCP計画書を見直し、新たな手順を追加して問題解決を図ります。フィードバックと改善を繰り返すことが、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のポイントとなります。
まとめ
2021年6月1日より、すべての食品等事業者にHACCP対応が義務付けられました。HACCPを取り入れた衛生管理で重要なのが、HACCP計画書(衛生管理計画書)の作成です。
HACCP計画書には、一般衛生管理計画書と重要管理計画書の2種類があります。特に重要なのが「重要管理計画書」です。現場のヒアリングに基づき、必ず具体的に記載しましょう。また、HACCP計画書はただ作成するだけでなく、定期的に内容を見直し、適切に運用されているかモニタリングを行うことも重要です。
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