給食施設のHACCP導入が義務化に!必要な届け出の出し方と衛生管理の流れを解説
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集団給食施設においてHACCPに沿った衛生管理が義務化
2018年6月13日、改正食品衛生法(食品衛生法等の一部を改正する法律)が交付され、すべての食品等事業者に対してHACCPの考え方に沿った衛生管理の実施が義務付けられました。
この「食品等事業者」には、集団給食施設も含まれます。そのため、該当施設では改正法の内容に基づき、対応を進めることが必要です。なお、厚生労働省の通知によると、集団給食施設とは次の事業者を指しています。
- 営業以外の場合で学校、病院その他の施設において継続的に不特定又は多数の者に食品を供与する施設※
食品衛生法の改正内容のうち、集団給食施設に該当する内容は以下の3点です。
- HACCPに沿った衛生管理を実施すること(2020年6月1日より適用)
- 食品衛生責任者を選任すること(2020年6月1日より適用)
- 従来は営業許可の対象とならなかった事業者でも営業届を提出すること(2021年6月1日より適用)
「HACCPに沿った衛生管理」については、厚生労働省が集団給食施設に対し、「大量調理施設衛生管理マニュアル」を1997年3月24日付けで公布しています。
この「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、HACCPの概念に基づいて策定されているため、すでにマニュアルに沿った衛生管理を行っている集団給食施設では、新たな対応は必要ありません。しかし、マニュアルを未導入の場合は、HACCPの基本を学び、適切な衛生管理体制を構築することが求められています。
出典:厚生労働省「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う集団給食施設の取扱いについて’情報提供)[pdf]」(令和6年11月19日利用)
1回の提供食数が少ない給食施設の場合はどうなる?
集団給食施設によっては、1回の提供食数が少ない小規模の施設もあります。
小規模な給食施設の場合、新たにHACCPに沿った衛生管理を導入したり、専門の食品衛生責任者を置いたりすることが難しい場合も少なくありません。そのため、厚生労働省は「少数特定の者を対象とする給食施設」に限り、HACCPに沿った衛生管理の導入および食品衛生責任者の選任を免除しています。この対象となる条件は、「1回の提供食数が20食程度未満の給食施設」とされています。※
しかし、小規模な給食施設であっても、適切な衛生管理が免除されるわけではありません。HACCPに代わる措置として、これらの施設は1997年6月30日付けで公布された「中小規模調理施設における衛生管理の徹底について」等の指針を参考にしながら、自主的な衛生管理体制を構築し、継続的に運用することが求められます。
出典:厚生労働省「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う集団給食施設の取扱いについて’情報提供)[pdf]」(令和6年11月19日利用)
給食施設に必要な営業届の方法
食品衛生法の改正により、集団給食施設にも営業届の提出が義務付けられました。ここでは、営業届が必要な給食施設の条件や営業届を出す流れについて解説します。
営業届が必要な施設とは?
食品衛生法の改正にともない、新たに営業届の提出が必要になった施設は次の29業種です。
旧許可業種であった営業 | 魚介類販売業(包装済みの魚介類のみの販売) 食肉販売業(包装済みの食肉のみの販売) 乳類販売業 氷雪販売業 コップ式自動販売機(自動洗浄・屋内設置) |
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販売業 | 弁当販売業 野菜果物販売業 米穀類販売業 通信販売・訪問販売による販売業 コンビニエンスストア 百貨店、総合スーパー 自動販売機による販売業(自動洗浄・屋内設置のコップ式自動販売機および営業許可の対象となる自動販売機を除く) その他の食料・飲料販売業 |
製造・加工業 | 添加物製造・加工業(法第13条第1項の規定により規格が定められた添加物の製造を除く) いわゆる健康食品の製造・加工業 コーヒー製造・加工業(飲料の製造を除く) 農産保存食料品製造・加工業 調味料製造・加工業 糖類製造・加工業 精穀・製粉業 製茶業 海藻製造・加工業 卵選別包装業 その他の食料品製造・加工業 |
上記以外のモノ | 行商 集団給食施設 器具、容器包装の製造・加工業(合成樹脂が使用された器具又は容器包装の製造、加工に限る) 露店、仮設店舗等における飲食の提供のうち、営業とみなされないモノ その他 |
出典:厚生労働省「「営業届出業種の設定について」及び「「営業許可申請・届出等に関する様式、記載要領 及び添付書類の取扱いについて」の一部改正について」の一部訂正について 」(令和6年11月19日利用)
営業届を出す流れ
2021年6月1日の法改正時点で営業している集団給食施設は、2021年11月30日までに営業届を提出する必要がありました。※それ以降に新規で開業する場合は、開業前に営業許可の申請が必要となります。
手続きをスムーズに進めるためには、事前に営業届の提出の流れを確認しておくことが重要です。営業許可申請のステップは、以下の3つになります。
出典:厚生労働省「営業届出制度の創設に関する詳細 」(令和6年11月19日利用)
1.所轄の自治体に事前相談を行う
まず、給食施設の工事に着工する前の段階で、施設の図面等必要な資料を準備し、所在地を管轄する自治体の窓口で事前相談を行うことがおすすめです。事前相談は任意ですが、施設の構造や間取りが基準に適合しているか、食品が汚染されない適切な作業動線が確保されているか等、専門的なアドバイスを受けられます。
2.必要書類を提出する
- 営業許可申請書(PDF)( 法許可業種 ・ 条例許可業種)
- 営業設備の大要・配置図(PDF)(2通)
- 許可申請手数料
- 登記事項証明書(法人の場合のみ)
- 水質検査成績書(貯水槽使用水、井戸水使用の場合のみ)
- 食品衛生責任者の資格を証明するモノ(食品衛生責任者手帳等)
- 食品衛生法第30条に規定する食品衛生監視員又は第48条に規定する食品衛生管理者の資格要件を満たす者
- 調理師、製菓衛生師、栄養士、船舶料理士、と畜場法第7条に規定する衛生管理責任者若しくは第10条に規定する作業責任者又は食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律第12条に規定する食鳥処理衛生管理者
- 都道府県知事等が行う講習会又は都道府県知事等が適正と認める講習会を受講した者
詳しい詳細については、所轄の自治体や保健所のホームページで確認するようにしましょう。また、営業申請は厚生労働省の「食品衛生申請等システム」を通じ、オンラインで行うことも可能です。
出典:厚生労働省い「一般的な営業手続きの流れ①」(令和6年11月22日利用)
3.必要に応じ、保健所から施設確認を受ける
必要に応じて、保健所から施設確認を受ける場合があります。施設確認をスムーズに受けられるよう、施設工事の進捗状況は正確に把握し、保健所からの連絡に答えられるようにしておきましょう。
食品衛生責任者の条件
食品衛生法の改正により、「1回の提供食数が20食程度未満の給食施設」を除くすべての集団給食施設において、食品衛生責任者を置くことが義務付けられました。厚生労働省は、食品衛生責任者の条件を次のように定めています。
出典:厚生労働省「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う集団給食施設の取扱いについて’情報提供)[pdf]」(令和6年11月19日利用)
もし、集団給食施設に専門の資格を持つ調理師、栄養士、製菓衛生師、医師等がいない場合は、施設が所在している都道府県で開催される食品衛生責任者養成講習会に参加し、修了証書を授与された者を食品衛生責任者として選任することも可能です。食品衛生責任者養成講習会の日程等は、地方自治体や所轄のホームページで確認してください。
なお、「1回の提供食数が20食程度未満の給食施設」は食品衛生責任者を置く必要がありません。
そもそもHACCPとは?
そもそもHACCPとは、「Hazard Analysis and Critical Control Point」の頭文字をとったもので、国際的なガイドラインに基づく新たな衛生管理手法のことです。食品の安全性を科学的に確保することを目的としています。
HACCPに沿った衛生管理は、従来の抜き取り検査とは異なり、食中毒菌による食品の汚染や金属片・ガラス片等の異物混入といったリスクを体系的かつ効率的に低減する方法です。従来の抜き取り検査では、食品の一部を抜き取り細菌試験や異物試験を行うため、検査対象以外の食品に潜むリスクを完全には排除できず、食品事故の根本的な防止対策にはなっていませんでした。
一方、HACCPに沿った衛生管理では、原材料の入荷から製品の出荷までの全工程を詳細に分析し、食品の安全性を損なう可能性のある危害要因(ハザード)を特定します。そして、これらの工程の中で衛生管理上特に重要な工程を「重要管理点(CCP)」として設定します。この重要管理点を科学的根拠に基づく管理基準(CL:Critical Limit)によって監視・管理することで、問題が発生する前にリスクを抑制し、効率的かつ効果的にに食品事故の防止ができるのが、HACCP方式の利点です。
HACCP導入により得られる効果
集団給食施設でHACCPに沿った衛生管理を導入することにより得られる効果は以下の2つです。
管理者や従業員の衛生意識が向上する
HACCPの考え方を現場に取り入れ、管理者・全従業員に徹底的に周知することで、一人ひとりの衛生意識を向上させる効果があります。実際に、厚生労働省が実施した「令和5年度食品衛生法改正事項実態把握等事業報告書」によると、HACCPを導入した施設では、全体の55.3 %が「管理者(経営者含む)の意識が向上した」、53.8%が「従業員の意識が向上した」といった回答が得られています。
このようにHACCPを導入することで、管理者・従業員の意識改革を促し衛生管理を強化することが可能です。
品質・安全性が向上した
HACCPに沿った衛生管理を導入すると、原材料の受け入れから製品の出荷までの全工程で危害要因(ハザード)を科学的に分析・管理する仕組みが整備されます。これにより、異物混入や微生物汚染等の食品事故を大幅に減らすことができ、安全性とともに品質も向上します。また、製造工程の一貫した管理により品質のばらつきがなくなり、消費者に信頼される製品を安定して提供できるようになる点が大きな効果ともいえるでしょう。厚生労働省が実施した「令和5年度食品衛生法改正事項実態把握等事業報告書」においても、全体の50.8%が「品質・安全性が向上した」と回答しています。
出典:厚生労働省「令和5年度食品衛生法改正事項実態把握等事業報告書」(令和6年11月22日利用)
HACCPに沿った衛生管理(12手順)の流れ
HACCPに沿った衛生管理は、コーデックス委員会(国際食品規格委員会)が作成した「7原則12手順」に基づいて導入するのが一般的です。
手順1 | HACCPチームを編成する |
---|---|
手順2 | 製品説明書を作成する |
手順3 | 製品の用途や対象となる消費者を確認する |
手順4 | 製造工程一覧図を作成する |
手順5 | 製造工程一覧図の現場確認を行う |
手順6【原則1】 | 危害分析(危害要因分析)を実施する |
手順7【原則2】 | 重要管理点(CCP)を特定する |
手順8【原則3】 | 管理基準(CL)を設定する |
手順9【原則4】 | 衛生管理のモニタリング方法を決める |
手順10【原則5】 | 衛生管理の改善方法を決める |
手順11【原則6】 | 衛生管理の検証方法を決める |
手順12【原則7】 | 衛生管理の記録方法を決める |
それぞれの手順で行うべきことについて順に解説していきます。
HACCPチームを編成する
HACCP対応をすすめるには、自社の製品や製造工程の専門家が必要です。まずは各部署から担当者を集め、HACCPチームを編成しましょう。
製品説明書を作成する
「製品説明書」を作成し、製造する食品の特徴を書き出しましょう。例えば、製品の名称や分類、原材料について注意すべき事柄(アレルギー物質等)を記載します。
製品の用途や対象となる消費者を確認する
製品説明書には、「製品の用途」「対象となる消費者」も記載しましょう。消費者目線に立ち、食品が「誰に」「どのように」利用されるのかを考えることが大切です。
製造工程一覧図を作成する
製品説明書を作成したら、「製造工程一覧図」を作成します。製造工程一覧図とは、原材料の仕入れから最終製品の出荷まで、食品の製造工程を抜け漏れなく書き記したものです。
製造工程一覧図の現場確認を行う
製造工程一覧図の内容が実際の製造工程とズレていないか、現場確認を行いましょう。現場の担当者にヒアリングを実施し、製造工程一覧図についてフィードバックを受けることが大切です。
危害分析(危害要因分析)を実施する
製品説明書と製造工程一覧図を参照しながら、危害分析(危害要因分析)を実施します。製造工程に潜む危害要因(ハザード)の優先順位付けを行い、特に重要度の高いものをピックアップしましょう。
重要管理点(CCP)を特定する
一般衛生管理の範囲で食品事故を防げない工程や、消費者の健康への影響が特に大きい工程のことを「重要管理点(CCP)」と呼びます。科学的根拠に基づき、重要管理点を正確に特定することがHACCP導入のポイントです。
管理基準(CL)を設定する
重要管理点の危害要因を適切に取り除くため、管理基準(CL)を設定します。例えば、食品の加熱温度や加熱時間、保管温度、加熱後の冷却速度等、具体的な数字で基準値を決めていきます。
衛生管理のモニタリング方法を決める
管理基準がきちんと守られているかどうか確認するため、衛生管理のモニタリングを行う必要があります。必要に応じて現場の担当者にヒアリングを実施しながら、モニタリングの方法や頻度を決定しましょう。
衛生管理の改善方法を決める
モニタリングの結果、現場で管理基準が守られていない、または現行の管理基準では食品事故リスクの低減が十分に測れない場合は、改善措置を設定します。
衛生管理の検証方法を決める
HACCPプランの全体に渡って、定期的に見直しを行い、有効性を検証するための方法を決めます。HACCPチームを作成している場合、HACCPチームが主導権をとります。
衛生管理の記録方法を決める
日々の衛生管理を記録し、保管する方法を決めます。衛生管理記録は所轄の保健所に提出を求められる可能性があるため、必ず作成・保管しましょう。
HACCPを運用する上での注意点
集団給食施設がHACCPを運用する上で、注意すべき点は2つあります。
危害要因(ハザード)は具体的に書く
前項で述べた通り、HACCPに沿った衛生管理では、危害分析(危害要因分析)を実施し、重要管理点(CCP)や管理基準(CL)を決めていきます。
給食施設に限らず多くの事業者に見られるのが、「危害要因を具体的に書いていない」という失敗です。危害要因は「物理異物」「有害化学物質」といった抽象的な言葉ではなく、「金属片の混入」「残留農薬」等、具体的な言葉で書くことが必要です。危害要因を可能な限り具体化することで、重要管理点や管理基準を設定しやすくなります。
定期的に衛生管理の方法を見直す
また、HACCPは導入したら終わりではありません。定期的に衛生管理計画書や衛生管理記録を見直し、現場からフィードバックを得て、衛生管理体制を改善していくことが大切です。より良い衛生管理を追求していくためにも、PDCAサイクルを回し、定期的に見直しを行いましょう。
まとめ
食品衛生法の改正により、集団給食施設は「HACCPに沿った衛生管理の実施」「食品衛生責任者の選任」「営業届の提出」の3点が義務付けられました。対象となるのは、「1回の提供食数が20食程度未満の給食施設」をのぞくすべての給食施設です。
HACCPに沿った衛生管理を導入すれば、管理者・従業員の衛生意識の向上や、品質・安全性の向上といった効果が期待できます。コーデックス委員会の7原則12手順を参考にしつつ、HACCPに沿った衛生管理を取り入れましょう。
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