【菓子製造業】HACCP導入事例
学校給食用のコッペパンの製造メーカーで、HACCPに基づき衛生管理を改善した事例です。菓子製造業特有の悩みや、HACCP導入のポイントを解説します。
穀物害虫や金属片が混入するリスク
菓子製造業で注意が必要なのが、異物混入のリスクです。
たとえば、コッペパン製造に使う小麦粉の保管の際、保管場所で小麦粉の残滓が放置されていると、穀物害虫が発生し、小麦粉に混入する恐れがあります。
また、パン生地のミキシングや焼成の工程で、金属製の金型や機器が破損し、金属片が混入するリスクにも注意が必要です。コッペパンへの異物混入を防ぐため、各工程での危害要因(ハザード)を分析し、異物混入の恐れがある工程をすべて洗い出す必要があります。
「危害要因リスト」を作成し、潜在的な危害要因(ハザード)を網羅
そこで役に立つのが、「危害要因リスト」の作成です。
危害要因リストとは、原料の受け入れ・製造・出荷の全行程で発生しうる潜在的な危害要因(ハザード)を洗い出し、表にまとめたものです。
この菓子製造業の事例の場合、原材料や包装資材の保管から、パン生地のミキシング・焼成、箱詰めや出荷まで、全工程を26に分類し、個々の危害要因を全てリストアップしています。
その結果として、異物混入リスクについては、「小麦粉の保管」の際の穀物害虫の混入リスクや、「ミキシング(中種混捏、本捏)」「分割・丸め・中間発酵」「焼成」の工程での金属片のリスクがあることがわかりました。
【製麺業】HACCP導入事例
続いて紹介するのは、冷凍うどんの製造メーカーで、HACCPの7原則12手順に基づき、衛生管理上欠かせない「重要管理点(CCP)」を特定した事例です。
どの工程に衛生管理の力点を置くか
HACCPによる衛生管理では、危害要因(ハザード)が発生しやすい重要管理点(CCP)を見抜き、HACCPプランを作成する必要があります。たとえば、冷凍うどんの製造工程では、以下のような危害要因が考えられます。
- 〇病原微生物の汚染(生物要因)
- 〇病原微生物の増殖(生物要因)
- 〇耐熱芽胞菌の残存(生物要因)
- 〇金属異物の混入(物理要因)
しかし、一般衛生管理の範囲で排除できる危害要因も存在します。食品事故が起きやすい重要管理点を特定し、衛生管理の力点をどこに置くかを考えることが大切です。
「危害要因リスト」を作成し、重要管理点(CCP)を特定
こちらの事例でも、「危害要因リスト」を作成し、各工程が重要管理点に当たるかどうかを検討します。
まず、「病原微生物の汚染」「病原微生物の増殖」「耐熱芽胞菌の残存」といった生物要因が発生しうる工程を洗い出した結果、うどんを98℃以上の温度で10分茹でる工程で、ほとんどの病原微生物が死滅することがわかりました。
また、加熱後のうどんをすみやかに冷却・凍結すれば、耐熱性芽胞菌の増殖リスクを抑えられることがわかりました。
しかし、「金属異物の混入」という物理要因については、箱詰め前に金属検出を行う工程で、金属検出器の異常により金属片を排除できない可能性があります。
そのため、「金属異物の混入」をCCPに設定して、金属検出機が稼働しているかどうかのモニタリングを実施し、「金属検出器モニタリング記録」を作成するようにしました。
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【冷凍食品製造業】HACCP導入事例
こちらは、画像処理システムの導入により、異物混入対策の省力化に成功した冷凍食品製造業の事例です。
異物混入対策の業務負担が大きい
冷凍食品製造業の生産ラインでは、食品の製造・放送・出荷の過程で、工場内のほこりや金属片などの異物が混入するリスクがあります。
こちらの事例では、これまでラインに作業者がつき、目視で容器を1つずつ確認することで異物混入対策を行っていましたが、作業者の業務負担が大きいことが課題となっていました。
また、目視でモニタリングを行う以上、見落としなどのヒューマンエラーも避けられません。そこで、異物混入対策の「効率化」「精度アップ」の2つが課題でした。
画像処理システムを導入し、異物混入対策を自動化
こちらの事例では画像処理システムを導入し、異物混入対策を自動化しました。
画像処理システムのカメラは2100万画素と高精度で、人間の目で発見できない小さな汚れ・ほこり・金属片を発見できます。
また、作業者が容器を1つひとつ確認し、目視でモニタリングを行う必要がなくなったため、現場の業務負担の軽減や、人件費の削減につながりました。
食品製造業では、人手不足が大きな課題となっています。IoTシステムの導入には初期投資が必要ですが、HACCP対応の自動化により、生産性を向上させることが可能です。
【飲食店・レストラン】HACCP導入事例
複数店舗を展開する飲食店・レストランの事例では、ペーパーレス記録計の導入により、食品の温度の計測・記録の自動化に成功しました。飲食店・レストランならではのHACCP対応の悩みや、取り組み時のポイントを見てみましょう。
温度管理の記録には手間も時間もかかる
飲食店・レストランでは、食品の温度管理が衛生管理における重要管理点(CCP)です。
食中毒菌をはじめとした病原微生物の汚染・増殖をふせぐため、食品加熱時に温度管理を行い、適切な基準値に収まっているかどうかをモニタリングしなければなりません。
しかし、こちらの事例では複数店舗を展開していることもあり、温度管理の記録付けを行っていませんでした。
食品加熱時の温度管理は、作業者に管理基準(CL)を通達し、温度逸脱がないか、焼成時間は十分かを各自判断させていました。
しかし、温度管理の記録を残していないため、適切に加熱しているかどうかを証明できない状態に陥っていました。
ペーパーレス記録計により、常時監視・記録を実現
こちらの事例では、温度・時間を計測可能な「ペーパーレス記録計」を導入し、常時監視・記録を実現しました。
ペーパーレス記録計があれば、加熱中の食品の表面温度や中心温度を自動で計測できます。また、温度の記録はデータとして保存されるため、適切な管理が行われていたかどうかをいつでも確認できます。
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HACCP対応なら「UPR HACCP」の導入がおすすめ
HACCPによる衛生管理の導入なら、HACCP対応オールインワンパッケージ「UPR HACCP」がおすすめです。「UPR HACCP」には、次のような機能があります。
- 〇管理基準(CL)を監視し、逸脱時にアラートでお知らせ
- 〇データはクラウド環境で保管され、HACCP対応のペーパーレス化を実現
- 〇PC・スマホ・タブレットで使える、ムダのないシンプルなUI設計
- 〇テンプレートを使い、簡単に衛生管理計画書や衛生管理記録を作成可能
「UPR HACCP」なら、スマホやタブレットで、危害要因リストをはじめとした衛生管理計画書をワンストップで作成可能です。ペーパーレス化により、温度管理などの記録の作成・保管の手間がかかりません。
また、温度逸脱時にアラートでお知らせする機能もあり、現場の作業者の業務負担を大きく軽減することが可能です。
HACCPの導入事例を知り、HACCP対応に向けた取り組みを
これからHACCPによる衛生管理を取り入れる方は、さまざまな業種の導入事例を知り、取り組み時のポイントを知ることが大切です。この記事では、「菓子製造業」「製麺業」「冷凍食品製造業」「飲食店・レストラン」の4つのHACCP導入事例を紹介しました。
菓子製造業 | 「危害要因リスト」を作成し、潜在的な危害要因(ハザード)を網羅 |
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製麺業 | 「危害要因リスト」を作成し、重要管理点(CCP)を特定 |
冷凍食品製造業 | 画像処理システムを導入し、異物混入対策を自動化 |
飲食店・レストラン | ペーパーレス記録計により、常時監視・記録を実現 |
2021年6月より、日本でもHACCPが完全義務化されます。この記事で紹介した導入事例を参考にして、HACCP対応に向けて取り組みを進めましょう。