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製造業のデータ活用事例15選!他社事例から学ぶ成功のポイント

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半導体チップ製造

 

製造業におけるデータ活用の目的とは?

製造業界では、工場内でのデータ活用が急速に進んでいます。その背景には、「深刻な人手不足」「製造業ならではの技能継承の難しさ」の2つの理由があります。

経済産業省の調べによると、製造業の就業者数は2002年から2021年までの約20年間で157万人減少しました。[注1]若年就業者数が121万人減少した一方で、高齢就業者数は33万人増加しています。少子高齢化が進行し、今後ますます人材確保が難しくなるなかで、データ活用によって業務効率化や生産性向上を目指す工場が増えています。

また、製造業特有の問題として、ベテラン労働者の技能継承の難しさがあります。2020年度に行われた製造業の人材育成についての調査では、6割を超える事業所が「指導する人材が不足している」と回答しています。[注1]

指導者不足を補い、ベテラン労働者の勘・コツを次代の若手に継承するには、工場内のデータ活用が必要不可欠です。実際に視線を追跡するアイトラッキング技術などを活用し、技能継承や教育訓練を行っている工場もあります。製造業界の先行事例を参考にしながら、課題解決のために工場内のデータを有効活用しましょう。

[注1]経済産業省:2022年版ものづくり白書[pdf]

 

製造業のデータ活用事例15選

インテル社のデータ活用事例

アメリカの半導体素子メーカー、インテル社は半導体チップのテスト工程に大きな課題を抱えていました。半導体チップの品質を維持するため、インテル社は約19,000種類の品質テストを実施してきました。この品質テストの回数を減らすためには、必要なテストとそうでないテストを取捨選択する必要があります。

そこで、インテル社は半導体チップの製造工程で得られたビッグデータを活用し、品質保証のために欠かせないテストを判断する仕組みをつくりました。結果として、品質テストの種類を大幅に減らし、半導体チップの生産ライン1つにつき約3億円のコスト削減を実現することができました。今後、さらに品質テストの最適化を図ることで、インテル社は合計30億円程度のコスト削減が可能だと予測しています。

富士フイルムビジネスイノベーション社のデータ活用事例

富士フイルムビジネスイノベーション社(旧社名富士ゼロックス)は、コピー機やプリンターを製造している企業です。

富士フイルムビジネスイノベーション社は、コピー機の修理対応の際、ユーザーの申告を受けてから作業員を派遣するという業務フローを採用していました。しかし、作業員が現場に到着しないとコピー機の修理箇所がわからないため、修理対応までのリードタイムが長くなります。

そこで、富士フイルムビジネスイノベーション社は、機器のパフォーマンスデータを送信可能なコピー機を開発しました。事前に取得したパフォーマンスデータから故障原因を特定可能なため、迅速な修理対応を実現することができました。また、コピー機から取得したパフォーマンスデータは、製造工程の改善や見直しにも活用されています。

ハーレーダビッドソン社のデータ活用事例

アメリカのオートバイメーカー、ハーレーダビッドソン社は、温湿度データを活用してサプライチェーンの見直しを進めています。オートバイの塗装品質は、工場内の温度や湿度によって大きく変動します。そこで、オートバイの品質を均一化するため、ハーレーダビッドソン社は工場内の温湿度データを取得する遠隔監視システムを導入しました。

遠隔監視システムが温度や湿度の異常を検知すると、工場内の空調機器が自動で制御され、オートバイの塗装にとって最適な温度や湿度に調整されます。これまでは作業員の手作業で温度や湿度を調整していたため、オートバイの塗装品質にムラが発生する可能性がありました。

人間の感覚に頼らず、客観的なデータに基づいて温湿度管理を行うことで、より合理的な品質管理体制をつくることができました。

PING社のデータ活用事例

アメリカのゴルフ用品メーカー、PING社は「最高品質主義」をスローガンに掲げ、国内の専用工場でカスタムゴルフクラブを製造しています。PING社は受注後48時間以内の納品を目指し、ゴルフクラブの組み立て工程の効率化に取り組んできました。

しかし、カスタムオーダーを受けてからゴルフクラブの原材料を確保し、組み立てを行う従来の業務フローでは、48時間以内の納品という目標を達成できません。そこで、PING社はサプライチェーンから得られたビッグデータを活用し、カスタムゴルフクラブの需要予測を改善しました。

顧客ごとの趣味嗜好や過去の注文履歴、ゴルフ用品市場の動向などのデータを組み合わせることで、受注前にカスタムオーダーの内容を予測し、製造ラインを事前に確保する仕組みをつくりました。

ボルボ社のデータ活用事例

スウェーデンの自動車メーカー、ボルボ社は製造業界でもいち早くデータ活用に取り組んできた企業の一つです。すでに1990年代には、自社の乗用車の車載コンピュータからデータを取得し、分析する仕組みを構築しています。

データ活用の一環として、ボルボ社はインターネットに常時接続可能なコネクテッドカーの開発にも取り組んできました。すでにボルボ社の生産する乗用車の8割以上がコネクテッドカーの機能を持っており、ユーザーの事前了解を得て車載コンピュータのデータを取得しています。

こうしたデータドリブンな環境を活かして、ボルボ社はDesigned Around Youをコンセプトに掲げ、ユーザー中心の自動車を生産しつづけています。

ボーイング社のデータ活用事例

飛行機のエンジン
アメリカの航空機メーカー、ボーイング社は航空機の予防保全のため、ビッグデータを活用しています。航空機の部品は種類が多く、一つでも破損や劣化が生じた場合、機体の安全性を損なう可能性があります。

そこで、ボーイング社は航空機の製造工程でエンジンやブレーキなどの部品にセンサーを取り付け、リアルタイムに部品のコンディションをモニタリングしています。もし部品のコンディションに劣化が見られたり、故障の兆候が見られたりした場合、航空機の出荷先の企業に情報提供を行い、機体が故障する前に早期にメンテナンスを行う仕組みです。

また、部品から取得したデータは航空機の製造工場でも活用され、製造工程の改善や見直しにつながっています。

ホンダ社のデータ活用事例

ホンダ社は日本を代表する自動車メーカーの一つです。ホンダ社は車載コンピュータから取得した走行データを有効活用し、「Hondaドライブデータサービス」というユニークなデータサービス事業を展開しています。

そのなかでも、2021年8月にスタートしたばかりの「旅行時間表示サービス」は、走行データをリアルタイムに分析し、周辺の渋滞路・迂回路を通過した場合の所要時間を計算するサービスです。道路上の表示機に所要時間を表示し、現在の道路事情をドライバーに知らせることで、渋滞路ではなく迂回路を選ぶように働きかけることができます。交通量を分散し、渋滞を解消することが可能です。栃木県日光市で行われた実証実験では、指定ルートの最長所要時間を85分も短縮することができました。

小松製作所のデータ活用事例

重機メーカーの小松製作所は、油圧ショベルやダンプトラックなどの重機をインターネットに接続するIoTプラットフォーム「KOMTRAX(コムトラックス)」を開発しました。KOMTRAXを活用すれば、重機からリアルタイムにデータを取得し、システム内に蓄積することができます。

取得したデータは社内だけでなく、外部パートナーや顧客も利用することが可能です。たとえば、重機の稼働状況を保守運用の担当者に知らせることで、効率的にメンテナンスを行ったり、動作不良がないか遠隔で点検したりすることができます。

また、顧客はKOMTRAXを通じ、重機の位置情報や運転者の氏名などのデータを取得することが可能です。顧客がその場にいなくても、複数の重機をまとめて管理することができます。

アンデルセングループのデータ活用事例

ベーカリービジネスを展開するアンデルセングループは、来店客数の予測にビッグデータを活用しています。

アンデルセングループはパンの製造量を最適化するため、販売管理システムの「ANS(アンデルセンシステム)」を開発しました。従来の業務フローでは、パンの製造量は各店舗のスタッフの経験で決めていましたが、ANSの導入後は過去の売上データなどのビッグデータを活用し、客観的な数字に基づいて決定しています。

たとえば、ANSの管理画面から商品ごとの売上や時間帯ごとの来客数を予測し、パンの製造量を正確に見積もることが可能です。結果として、ANSの導入店舗の売上は、その他の店舗よりも統計上有意に上昇しました。

ヤマハ発動機のデータ活用事例

輸送機器メーカーのヤマハ発動機は、製造工程の生産ロスを減らし、歩留まり率を改善するためにビッグデータを活用しています。

ヤマハ発動機は、不良品が発生しやすい部品の鋳造工程に注目しました。しかし、鋳造部品の加工はベテラン労働者の勘やコツによるところが多いため、マンパワーに頼った品質改善は困難です。

そこで、ヤマハ発動機は鋳造工程に関連した200種類のデータを取得し、部品の品質との相関関係を分析しました。結果として、ビッグデータ分析によって生産ロスを減らすためのベストプラクティスを発見することができ、年間約1億円のコスト削減に成功しています。今後はAIの画像認識技術を活用し、製造工程の自動化に向けて取り組んでいます。

オムロン社のデータ活用事例

電気機器メーカーのオムロン社は、工場内にセンサーデバイスを設置し、製造工程に関するデータを取得しています。

オムロン社はこれまで蓄積してきたビッグデータを自社システムのi-BELTで活用し、製造現場の業務改革に着手しました。その結果として誕生したのが、PLC(シーケンサ)などのFA機器を統合し、データ収集が可能なマシンオートメーションコントローラです。

マシンオートメーションコントローラを活用すれば、さまざまなFA機器の稼働データを取得し、業務改善のヒントを得ることができます。また、ドイツの電機メーカーであるシーメンスと協力し、滋賀県草津市の草津工場で実証実験を行った結果、生産ラインの作業効率を30%高めることに成功しました。

TOTO社のデータ活用事例

トイレ
ビッグデータを活用し、新たなサービスを生み出したのが住宅設備機器メーカーのTOTO社の事例です。TOTO社はAIとビッグデータを活用し、トイレ内部のセンサーからデータを取得するシステムを開発しました。

TOTO社の提供する「ウェルネストイレ」は、トイレ内部の排泄物のデータや利用者のバイタルデータをリアルタイムに分析し、トイレ利用者の健康状態を診断するユニークなサービスです。診断結果はトイレ利用者のスマホアプリに配信され、健康状態の改善に向けた提案も行われます。ウェルネストイレの機能を利用するため、ユーザーは特別な操作を行ったり、デバイスを装着したりする必要はありません。

ただトイレを利用するだけでユーザーの健康状態がわかる「ウェルネストイレ」は、日本の成田空港を始めとしてさまざまな場所で活躍しています。

ダイキン社のデータ活用事例

製造業の課題の一つが、「ベテラン労働者の熟練技能をどうやって若手人材に継承するか」という問題です。

空調機器・化学製品メーカーのダイキン社は、IoTやビッグデータを活用して匠の技を「見える化」し、ベテラン労働者の技能継承に活用しています。ダイキン社が日立製作所と協力して開発した技能訓練支援システムは、工場内のセンサーやカメラから取得したデータを活用し、言語で表現しづらい勘・コツを視覚的に表現するためのツールです。

たとえば、空調機器の製造工程で必要な「ろう付け」のデータを活用し、ノウハウをデジタル化することに成功しました。技能訓練支援システムは国外の工場でも利用可能です。ダイキン社のグルーバル展開にともない、海外拠点での教育研修にも有効活用されています。

アイリスオーヤマ社のデータ活用事例

家具や生活用品の製造・販売を行うアイリスオーヤマ社は、ファクトリーオートメーションを導入し、工場の自動化を実現しています。

アイリスオーヤマ社はLED照明の生産工場に多関節ロボットを導入し、人の手によらない生産ラインを構築しました。また、生産ライン間の移動には無人搬送車(ADV)を活用し、1週間につき最大7,000台の生産能力を獲得しました。

また、物流倉庫にもクレーンや入出庫用のコンベヤ、垂直搬送機などを導入し、物流工程の大部分を自動化することに成功しています。産業用ロボットや無人搬送車に製造工程で取得したデータを学習させることで、歩留まり率を下げずにLED照明の安定供給を可能にしました。

トヨタ社のデータ活用事例

自動車メーカーのトヨタ社は、インターネットに常時接続可能なコネクテッドカーを活用し、乗用車の走行データを取得しています。

コネクテッドカーから取得したデータの活用事例が、2020年7月1日に販売開始した急アクセル時加速抑制システムです。急アクセル時加速抑制システムは、アクセルやブレーキの踏み間違いを防止する予防安全システムの一種です。

これまでトヨタ社が開発した踏み間違い加速抑制システムは、車両に搭載したセンサーを活用し、前方に障害物を検知した際にペダルの踏み間違いを抑止する仕組みでした。一方、新たに開発された急アクセル時加速抑制システムは、車両の走行データとビッグデータを比較し、ペダルの踏み間違いのリスクが高いと判断した場合にペダルをロックします。そのため、前方に壁や障害物がなくてもペダルの誤操作を防ぐことが可能です。

 

UPRのIoTソリューションであらゆる管理を自動化

UPRは製造業の経営課題解決のため、さまざまなIoTソリューションを提供しています。UPRのIoTソリューションなら、工場内のデータを有効活用し、以下の5つの作業を自動化できます。

物品管理 工場内の設備や機器の状態をリアルタイムにモニタリング
所在管理 設備や機器の位置情報を取得し、現在の保管場所を自動で確認
入出管理 工場に出入りする従業員や物流機器を一元管理
状況管理 産業機械の振動データを取得し、使用状況やメンテナンスの必要性を把握
温湿度管理 施設内の温湿度データを取得し、温度や湿度を最適化

 

まとめ

製造業界では、人手不足の解消や円滑な技能継承のため、工場内のデータを活用する動きが広まっています。たとえば、製造工程で取得したビッグデータをAIで解析すれば、製造工程の無駄を発見したり、不良品が発生する原因を突き止めたりすることが可能です。

工場内のデータ活用を検討中の場合は、この記事で紹介した15の他社事例から成功のヒントを学びましょう。工場内のデータを正しく活用し、スマート工場化を実現することで、さまざまな経営課題を解決できます。

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