ヘルスケア分野へのIoT活用方法【IoT活用事例】
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ヘルスケア(健康管理)産業の市場動向
ヘルスケア産業は2013年に日本国内での市場規模が15兆円を超えて、今後さらに拡大傾向にあります。
日本再興戦略によれば、2020年に26兆円、2030年に37兆円を超える市場であると言われております。日本市場における“ヘルスケア業界”は、この数年で一つの成長産業として確かな地位を築いています。
市場の拡大傾向の要因としては、
- ①いままでの医療機関での「治療」という事後対応的なものだけではなく、「予防」「健康管理」等に非常に注目が高まっていること
- ②生活支援や地域医療連携といった情報共有による今まで実現しづらかったサービスの拡充
- ③最先端テクノロジーの活用による医療・介護技術の進化
等の要因により個人がセルフケアを行うことができる様々な商品・サービスの増加が挙げられています。
②③は正に医療へのIoTの導入が浸透することで、拡大している領域であり、今後のヘルスケア分野の市場拡大要因はIoT分野が多くを占める、という予想もできるかもしれません。それほどヘルスケア分野の発展にはIoTは密接に関わってくるだろうと考えられます。
一昔前であれば、体重計が家庭に置いてある、健康意識の高い高齢者が万歩計を腰に付けている程度でした。一方、昨今では体脂肪やBMIなどを計算できる高機能な体重計が身近な量販店で購入することができたり、スマートフォンにヘルスケアアプリがダウンロードされているなど、それらが様々な業界の企業がヘルスケア領域に参入しているのも拡大の要因だと思われます。
また、ヘルスケア産業は、自己負担による設備投資や消費だけでなく、市民サービスの充実化・公的保険以外の予防医療に対する産業創成(公費予算投入)といった保険料や公費によるIoTへの負担補填が考えられるため、通常の市場拡大スピードよりさらに拡大しやすい要因を備えている、とも考えられます。
ヘルスケア業界におけるIoTの事例
- 地域医療連携
前項でも述べましたが、ヘルスケア分野では地域包括ケアの取り組み等により、情報システムを駆使した保険外のサービスが創生され始めており、活性化が進んでいきます。
ユーザー側もIT技術の普及により情報収集が容易になったため、一地域のかかりつけ医師に症状をなんでも相談するというわけではなく、サービスや評判の良いクリニック・病院を選んで医療サービスを選択する。またはセカンドオピニオンを活用して複数の医師に診察してもらうようなことが増えました。
そういった業界の流れの中で、いくつかの問題が出てきます。
複数の医師に対して何度も同じ問診票を書いたり、以前診察した結果が次の医師に反映されない、等の医療記録の共有の不備、サービスや評判を重視して、遠方のクリニック・病院を選んで通っている方が、急病になって地域のクリニック・病院に運びこまれたがカルテがないため、緊急のアラームに対応がしづらいといった問題です。
そこでIoTによる共同カルテの利用等の地域医療連携の動きがでてきました。
患者がどこで、どういった診察・医療を受けていたとしても別の医療施設にそのカルテ・記録が共有されて、診療に役立てるということが出来ます。
また、こういった連携により紹介・返送・逆紹介といった、医療施設の振り分け・最適化が進んだり、マクロ視点で医療業界の改善を進める、高度医療機器を共同利用できる、等のメリットが新たに生まれています。
- ウェアラブルデバイス
ヘルスケア分野は、医療分野のIoTである「IoMT」に比べて「治療」というよりも「予防」「健康管理」の意味合いの方が強い分野です。そのため、医師や医療施設の手を離れた段階で、日々どれほど「予防」「健康管理」ができるのか?がヘルスケアの効果の高さに直結しております。
近年「ヘルスケア」という言葉が一般的に言われるようになった背景にもウェアラブルデバイスの存在が影響を及ぼしているのではないかと考えます。今後「予防」「健康管理」において、重要になってくるのは医師や医療施設の手を離れた状態で、どれほど健康状態を判断できるか?という点です。
そのため、日頃から利用者が意識しないレベルでの健康状態のモニタリングが必要になってきます。
そういった点を解決するのがウェアラブルデバイスを利用したIoTです。
人の健康状態をモニタリング・記録する機器は今までありましたが、コンシューマ市場では家庭用の血圧計の様に設備を購入して利用する携帯性の低いものか、ベッドなどにセンサーデバイスをつけることで実現される限定的なエリアの設備でした。
ウェアラブルデバイスは一般消費者でも簡単に購入でき、腕時計や眼鏡の様にいつでも体に身に着けることが容易であるため、消費者が意識せずとも医療機関・医師が生体情報を取得することが出来ます。昨今ではスマートフォンやスマートウォッチなど最新テクノロジーを利用した機器も増えてきました。
ウェアラブルデバイスには2種類のものがあり「コンシューマーヘルスウェアラブル」と「臨床グレードウェアラブル」があります。
「コンシューマーヘルスウェアラブル」は現在のウェアラブルデバイスの主流であり、政府保健機関に規制されない種類のデバイスです。規制がされていないため、新製品の市場投入のハードルが低くなり、家電メーカー、通信機器メーカー、ソフトウェア開発会社など、様々な業界の新規ベンダーも参入しやすいため幅広く利用されております。
対して、「臨床グレードウェアラブル」は世界の規制当局や保険当局によって認定されたデバイスとそのサポートプラットフォームを指します。
現状はヘルスケア関連ウェアラブル分野でも半分以下の市場規模ではありますが、正確性やリアルタイムの情報共有など高度な機能が備わっているため、市場規模は拡大されるものと思われます。
ウェアラブルデバイスの普及はヘルスケアにおけるIoTの普及にも寄与していると言えます。
薬箱にIoT導入して服薬管理を行った事例
高齢化が進むにつれ、独り暮らしのお年寄りが増えてきております。
定期的に病院に通っていたとしても、自分で薬を飲むのを忘れたり、飲み間違えたり、といった新たな心配がでてきました。
家族と同居していたり、施設にいる方であればそういった心配はないかもしれませんが、さまざまな事情で常に見守るといったことが難しいケースも多々存在します。
そんなときに、薬箱にIoTを導入することで服薬管理と見守り管理を同時に実現した、というIoT活用事例があります。
薬袋にパッシブRFIDのタグ、薬箱側にRFIDリーダーを設置することで薬袋が箱から【いつ】【いくつ】【どの種類を】取り出したのか?が把握できるようになります。
これにより、それぞれのご家庭で服薬状況を把握でき、遠方に住んでいる家族にもデータを共有できるようになりました。また、定期的な服薬データを管理することで間接的な見守りとしても活用されています。
ヘルスケア産業における課題の事例
- 高齢化社会による患者の増加
高齢者社会を迎えているのは日本だけではなく、世界的な問題になりつつあります。そんな中、高齢者介護や慢性疾患、難病治療など医療コストは増加しております。
全ての患者に適切な頻度やタイミングで医療施設の診察・治療を受けさせるのは難しいことです。行くべきときに、アラームが鳴る、通知するわけではありません。そのため、各個人で健康を管理・予防をする、もしくは医療施設に診察を受けに行く際、事前に診察・治療に有益になる長期的な情報が提供できる、といった高度で先進的なアプローチが必要になります。
今後も医師の不足に反して、医療施設に診療を受けに行く人の数は増大していくと思われます。IoTによる予防・健康管理による患者数=医療コストの低減は無くてはならない医療業界の課題になるでしょう。
- 蓄積データの収集・活用
過去から現在に至るまで非常に多くの患者の診察データが蓄積されているはずですが、まだまだITの導入が進んでいない医療業界においては、それらの多くが紙カルテで保管されているため、データを呼び出すためには書いた医師自身の記憶を頼りに検索することになります。
電子カルテは広く普及されてはいるものの、未だ問診票等はユーザー(患者)側に対しては紙で採ることが多く、電子カルテを利用していたとしても、それを手打ちで転記していることが多くあります。また、医師の中には英語や日本語ではなくドイツ語でカルテを記載する場合もあるため、電子カルテ上で手書きの画像としてデータ保管しているケースもあります。
そのため、医療機関・関係者が診察データの全てを共通のクラウドに収集するためには、非常に手間がかかることが予想されます。ユーザー(患者)側の予防・健康管理を効率的に行うためには、最も水際のデータである患者の生体データを効率的にセキュリティ上問題なく、医療機関などが収集する方法が求められます。
IoT導入によるメリット・課題解決の事例
ヘルスケア分野ではIoT機器・サービスがどのような点で役立つのかを解説いたします。
- スマートウォッチ
Apple Watchに代表されるスマートウォッチはヘルスケア市場でも大きな成果を出しています。
医療に役立つ心拍計や血圧計が搭載されている機種は多くなってきており、中には血中酸素や呼吸頻度まで測定をすることが出来る機種も。歩数計や睡眠診断なども測定可能で、人の記憶で曖昧になってしまう問診データを正確に医療機関に提示することが出来ます。
- スマートTシャツ
現在まだ商用利用されている技術はすくないものの、徐々にスマートTシャツの存在も注目され始めています。
スマートTシャツはバイオメトリックセンサーをTシャツに埋め込むことで様々なデータを取得します。 心電図を高い精度で図ることもでき、活動状況もモニタリンクすることで、エネルギー消費量や消費カロリー等の数字をスマートフォンで記録することが出来ます。
近年では、そのまま洗濯ができるモデルが出来始めており、さらなる技術の発展、医療との連携が期待できます。 また、今後は呼吸数の計測や脱水モニタリングの機能が追加されるのではないか、という期待もされているデバイスです。
あらゆるIoTデバイスの中でも装着すること自体がストレスになる可能性が非常に低いため、ヘルスケアの分野では今後重宝されると思われます。
- 貼付型デバイス
Tシャツの中に取り付けたり、肌に直に貼り付けることで生体情報を取得するタイプのものです。心電計や筋電計、あるいは活動量計としても活用できます。
このデバイスのメリットは取付場所を選ばないため、医療関連でも様々なシーンで活用できる可能性があります。また、どんな状況でも肌に直接貼り付けることができるという特性を持ち、乳幼児等の体温管理や、心臓不整脈のモニタリング等といった継続的なモニタリングに非常に適していることが分かります。
ヘルスケア分野におけるIoT導入の課題の事例
ヘルスケア分野ではIoTの導入が非常に期待されている反面、普及への課題がまだ存在しております。
- 取得データの精度
前述の様な取得データの信頼性が高い臨床グレードウェアラブルは市場に数多く流通しているわけではなく、まだまだ医療向けというよりも、コンシューマ向けのスポーツ用品の一環と考えられることが多いため、それぞれのデバイスから得られるデータの信頼性や精度がまばらであるといえます。
多くの医師・医療機関も現在のユーザーが利用しているウェアラブルデバイスからもたらされる情報を信頼性の低いデータとみなしているようです。 そのため医療へ活用するよりも、現状では個人の意識を向上させるもの、健康管理情報の参考、といった域を超えていません。
- データの分析
各個人で集めた膨大な数の生体データを総合的に分析して判断を下す、といったことはまだ一般的な医療行為ではなく経過観察的な情報としては活用できるかもしれませんが、その大量のデータに潜む異変に気づける人材がたくさんいるわけではありません。
血糖値レベルや心電図の測定に用いられたとしても、こういった測定データのなかには医療の専門家のフォローアップを必要とするものもあり、データは開示したとしてもすぐれた解析プログラムやデータのプロフェッショナル無しに適切にデータを活用できるかどうか、まだまだ課題があると言えます。
- セキュリティ上の懸念
ヘルスケア分野のIoTデバイスは、健康情報を個人のデバイスに無線通信でネットワークに接続された状態で保管します。
ヘルスケア団体では取扱いに注意が必要なデータのやり取りに関しては暗号化して第三者が解読できないような状態で行っているものの、データをやり取りするスマートフォンやWi-fiといったアクセスポイントにまではセキュリティが保証されていません。
そのためヘルスケア分野でのIoTデバイスが増えれば増えるほど、セキュリティ面の脅威は増大していくものと思われます。
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