第4次産業革命とは?IoT、AI、ビッグデータで新たな経済価値が生まれる
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「第4次産業革命」という言葉は、多くの書籍やニュースで取り上げられています。インターネットを通じてあらゆるモノが結びつき、産業の高度化と生活の利便性向上が加速するのが、第4次産業革命の特長です。
2016年1月、スイスで開催された世界経済フォーラム(WEF)で第4次産業革命が議題となり、国際的な関心が一層高まりました。
この記事では、過去の産業革命の歴史を振り返りながら、第4次産業革命の位置づけと、その根幹を支える「IoT・AI・ビッグデータ」等の技術革新について解説します。
第4次産業革命とはIoT、AI、ビッグデータが作るイノベーション
情報通信技術(ICT)の急速な発展により、産業構造が大きく変化し、新たな経済価値が生まれつつあります。この変革を支える技術革新が「第4次産業革命」と呼ばれています。
第4次産業革命の中心となるのが、IoT、AI、ビッグデータの3つの技術です。ここでは、それぞれの技術革新の意味合いや、代表的な活用例、実社会にもたらしているインパクトを解説します。
あらゆるモノがネットワークにつながるIoT
IoT(Internet of Things)とは、あらゆるモノがネットワークにつながる技術革新です。その特長から、「モノのインターネット」とも呼ばれます。
従来は、パソコンや携帯電話等のIT通信機器のみがネットワークに接続されていましたが、IoT技術によって、家電や社会インフラを含めた様々なモノがサーバーやクラウド環境に接続されるようになりました。さらに、モノ同士がデータをやり取りし、相互に制御できる点が大きな特長です。
IoT技術の代表的な活用例の1つに、「シェアリングエコノミー(共有経済)」が挙げられます。シェアリングエコノミーとは、サービスの提供者とユーザーをマッチングし、遊休資産やサービスを共有する仕組みです。
IoTを活用することで、人やモノの状態、位置情報をリアルタイムで把握でき、より柔軟できめ細やかなサービス提供が可能になります。シェアリングエコノミーの具体例として、空き部屋を貸し出す民泊サービスや、車を共有するカーシェアリング等が広く普及しています。
IoTの導入は世界的に進んでいますが、日本におけるIoTの普及率は約20%と報告されており、アメリカやドイツと比べると導入の進展がやや遅れているのが現状です。※
この差を縮めるには、企業のIoT導入に対する関心を高めるとともに、特に中小企業での活用を促進することが重要です。政府や民間企業が連携し、導入のメリットや成功事例を共有することで、日本全体のIoT普及と競争力向上が期待されます。
出典:総務省「平成28年版 情報通信白書 第3節 国際的なIoTの進展状況」(令和7年2月13日利用)
コンピューターによる高度な判断を可能にするAI
AIは「人工知能」とも呼ばれ、人間が行う認知や推論をコンピューターに実行させる技術です。AIは、膨大なデータを解析する「学習」のプロセスと、その学習結果をもとに判断を行う「推論」のプロセスから成り立っています。
近年は、機械学習やディープラーニングといった学習方法の発展により、AIはより高度な判断ができるようになりました。例えば、AIをロボット技術と組み合わせることで、自律的に精密な作業を実行できます。また、3Dプリンターとの連携により、複雑な構造物の製造も可能です。AIは、これまで人間が行っていた労働を補助・代替する技術として、様々な分野で活用されています。
AIの代表的な活用例は、金融とITが結びついた「フィンテック」です。フィンテックとは、「ファイナンス(Finance)」と「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語で、AIを活用した革新的な金融サービスが増えています。
例えば、資産運用ではAIを活用することで、より正確で細やかな判断が可能になります。また、企業の財務情報をAIが分析し、信用力を自動で評価するシステムも登場しているのです。これにより、融資の審査プロセスを効率化し、従来の基準では融資対象とならなかった企業にも柔軟に対応できるようになっています。
アメリカでは、フィンテック分野への投資額額がGDP比で0.07%に達する一方、日本ではまだ本格的な投資が進んでいません。しかし、多くのスタートアップ企業がAIの活用に参入しており、今後の成長が期待されています。
そして、AIは金融業界だけでなく、自動運転車や物流分野にも革新をもたらす等、今後、AIの進化によって、さらに多くの産業で自動化と効率化が進むことが予想されます。
巨大で複雑なデータからソリューションを導くビッグデータ
ビッグデータとは、膨大で複雑なデータの集合体のことです。ただ単にデータ量が多いだけではなく、従来のデータベースシステムや一般的なデータ処理方法では管理や分析が困難であり、その上可視化できないデータのことを指します。
データの種類にもよりますが、その規模は数十テラバイトから数ペタバイトに達することがほとんどです。ビッグデータの出所は多岐にわたり、代表的なモノとしては以下のようなモノがあります。
- IoT機器から収集したビッグデータ
- ショッピングサイトから収集した顧客の閲覧・購入履歴
- RFIDやICカードから収集した位置情報や気温等のセンサーデータ
- SNSから収集したユーザーのコメントやプロフィール欄
ビッグデータは、AIやIoTと組み合わせることで真価を発揮します。例えば、IoT機器から収集したビッグデータをAIが解析することで、人間よりも精度の高い判断や自動化された作業が可能です。特に医療分野では、AIとビッグデータを活用したシステムの開発が進んでいます。長年にわたって蓄積された患者の症例やカルテをAIが解析し、病気の早期診断や治療の最適化に役立てる事例も増えています。
ビッグデータを活用するにあたって、個人情報の取り扱いをめぐる問題やデータ解析技術の高度化等が課題です。しかし、国内でもその重要性は高まっており、多くの企業が関心を示しています。
総務省の情報通信審議会による「Active ICT JAPANの実現に向けたICT総合戦略」では、ビッグデータの活用が経済成長の重点領域に位置付けられており、今後も官民一体となった取り組みが進むことが期待されています。
第4次産業革命に至る3つの産業革命の歴史
第4次産業革命が起こる以前には、3つの産業革命が存在しました。イギリスで起きた第1次産業革命以降、電気と石油が核となる第2次産業革命、コンピューターが核となる第3次産業革命が起きています。ここでは、それぞれの産業革命から今日の第4次産業革命へどのように発展してきたのかを解説します。
蒸気機関の発明により工業化が進んだ第1次産業革命
第1次産業革命は、18世紀半ばから後半にかけて起こった軽工業を中心とした経済発展のことです。その鍵となった技術革新は、イギリスで発明された蒸気機関の実用化です。強力な動力源として活用されることで、従来の手作業中心の生産から、機械を活用した大規模な工業生産へと移行しました。
蒸気機関を活用した工場制機械工業の発達により、生産性が飛躍的に向上し、産業構造が大きく変化しました。これにより、製鉄業や織物工業を中心とした近代的な軽工業が成長し、社会全体の経済活動にも大きな影響を与えたのです。
こうした産業の変革がもたらしたインパクトの大きさから、第1次産業革命のことを「工業革命」とも呼ばれています。
大量消費・大量生産の産業構造が生まれた第2次産業革命
第2次産業革命は、19世紀後半にアメリカやドイツ等の西欧諸国を中心に進んだ経済発展のことです。最大の特長は、電気エネルギーや石油エネルギーといった新たなエネルギーの活用により、重工業が大きく発展したことです。
この時期、エネルギーの技術革新により、工業製品の大量生産が可能になり、さらに物流網や輸送手段の発達により、モノを効率的に大量輸送できるようになりました。これにより、大量に作られた製品が広範囲に流通し、社会全体の生産性が向上したのです
その象徴的な出来事の1つが、フォード社による自動車の大量生産です。組み立てラインを活用した生産方式により、自動車がより安価に供給され、多くの消費者が購入できるようになりました。このように、大量生産・大量輸送の実現によって、消費者が頻繁に商品を買い換える「大量消費の時代」が到来したのです。
コンピューターによるオートメーション化を実現した第3次産業革命
第3次産業革命とは、20世紀後半に起きた「コンピューターの発達」と「インターネットの普及」をきっかけとする経済発展のことです。この時期、日本は高度経済成長を達成し、世界的にも産業の大きな転換点となりました。
コンピューターの性能が大きく向上したため、工場のオートメーション化が進み、単純作業の多くがロボットによって代替させることが可能となったのです。これにより、生産ラインの自動化・効率化が実現し、人間は主に管理・制御の役割を担うようになりました。
また、インターネットの普及により、データ通信やソフトウェア開発を手掛けるIT企業が台頭したのもこの時期です。情報通信技術(ICT)は物流サービスや製造業にも用いられ、産業構造を一気にデジタル化させました。
現在進行中の第4次産業革命(IoT・AI・ビッグデータの活用)は、第3次産業革命で確立された コンピューターとインターネットの発展を基盤として進んでいます。つまり、第3次産業革命は、現代のデジタル社会の土台を築いた重要な変革期だったのです。
第4次産業革命が生み出す3つの影響と課題
第4次産業革命は、産業構造や労働のあり方に大きな影響を及ぼします。IoT、AI、ビッグデータの活用が進むことで、現実空間とサイバー空間が融合した「超スマート社会」が実現すると期待されています。
人とモノがリアルタイムでつながることにより、きめ細やかなサービスが提供可能となり、高齢者を含む多様な人々が活躍できる社会 へと発展すると考えられているのです。
また、AIやロボットによる 労働の自動化が進む一方、新しい働き方が生まれる可能性もあります。単に社会のシステム化やネットワーク化を推進するだけでなく、それを経済成長や健康長寿社会へつなげることが今後の重要な課題です。
AI・ロボットによる労働力の代替が進む
第4次産業革命が進むにつれて、高度なAIやロボットによって代替される仕事が増えると考えられています。その結果、一部の職種では労働需要が減少が予想されるのです。特に、中程度のスキルを要し、センサーやIoT機器による自動化が可能な仕事が対象です。代表的な例として、下記のような仕事が挙げられます。
- 製造業の組み立てライン
- 車両の運転手や物流サービスの従事者
- コールセンターの電話オペレーター
- ホテルやオフィス等の受付業務
- 銀行で融資や資産運用を行う担当者
- 歯科医や外科医等の機械的作業を要する医師
一方で、第4次産業革命による産業構造の変化により、新たな労働需要も生まれます。特に、人と人とのコミュニケーションが求められる仕事や、AIやIoT機器の開発・運用を支える高度な専門職への需要が高まると予想されています。これに対応するためには、人材育成の強化や働き方の見直しが不可欠です。
また、日本では今後少子高齢化の進行により労働人口が減少すると予測されています。厚生労働省の試算によると、2040年までに生産年齢人口が約1,200万人減少し、約2割の減少幅となる見込みです。
こうした状況の中で、AIやロボットは単に人間の仕事を奪う存在ではなく、労働力不足の解決策としての役割を果たす可能性があります。
すべての人とモノがつながる「超スマート社会」の実現
「超スマート社会」とは、内閣府が2016年1月に発表した「第5期科学技術基本計画」において提唱された社会構想です。
超スマート社会では、「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会のさまざまなニーズにきめ細かく対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といったさまざまな違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことができる」ことを目指します。
すなわち、IoT・AI・ビッグデータを活用することで、年齢や性別、地域、言語の違いを超え、誰もが質の高いサービスを受けられる環境を整えることが、この社会の核心となっているのです。
超スマート社会の構想はすでに実現しつつあります。例えば、役務や遊休資産を共有するシェアリング・サービスが代表例です。資産を所有していなくても、必要なときに必要なタイミングでレンタル利用ができます。
また、AIやIoT技術を活かしたスマート家電の普及や、ネット上でのストリーミング・サービス等のデジタル・エコノミーも超スマート社会の代表的な実例です。
そして、少子高齢化が進行する中、ウェアラブル端末を利用したリアルタイムの健康管理や、人感センサー・スマート家電を活用した見守りサービス等、すでにAIやIoTを活用し高齢者が安心して暮らせる環境整備がはじまっています。
今後、自動運転車による配車サービスが普及すれば、公共交通機関に加えて安心安全な移動手段が生まれます。第4次産業革命によって、あらゆる人が便利なサービスを受けられる社会が実現するでしょう。
産業構造が大きく変わる一方、衰退する可能性のある産業も
第4次産業革命の進展により、産業構造が大きく変化し、生産・サービス・マーケティングが劇的に効率化します。これまで蓄積されながらも十分に活用されてこなかったビッグデータを活用することで、個人の状態や位置情報をリアルタイムに解析できるようになるのです。
例えば、個人の健康状態に応じた医療・介護サービスの提供や、季節やトレンドの変化を反映した商品・サービス提供が可能になります。さらに、AI・IoT機器・ロボティクスの普及によって産業ロボットの導入が大きく進み、従来よりも生産ラインの精緻化・効率化が加速するのです。
また、様々な人やモノがネットワークでつながることで、業界・業種の壁が取り払われる可能性も予測されています。これにより、異業種間でのデータ共有や協業が促進され、新たなビジネスモデルの創出が期待されているのです
一方で、第4次産業革命により衰退する産業が生まれる可能性も指摘されています。イギリスの経済学者コーリン・クラークが提唱した「ペティ=クラークの法則」によれば、経済が発展するほど高次産業(第3次産業)の比重が増加するとされています。
実際に、第2次産業革命が起きた際は農林水産業等の第1次産業の比重が低下し、第3次産業革命ではサービス業等の第3次産業が拡大しましたこの法則に基づくと、第4次産業革命によって、さらに第1次産業の比率が低下する可能性があると考えられています。
こうした変化に対応するため、農林水産業でもIoT・AI・ビッグデータを活用し、業界・業種の垣根を超えた「スマート農業・スマート水産業」の導入が求められています。
例えば、IoT機器やロボティクスを活用した農産物の育成を効率化・自動化を進めることで、生産性の向上が期待されているのです。また、ビッグデータを活用した消費者ニーズを汲み取ることで、季節やトレンドに応じた農産品の提供が可能となります。産業構造の変化に対応し、第4次産業革命のメリットを最大限に活かすことが、今後の持続可能な成長の鍵となるでしょう。
第4次産業革命はIoT・AI・ビッグデータの3つで起こる
今回は第4次産業革命について解説しました。第4次産業革命の鍵となるのは、IoT・AI・ビッグデータの3つの技術革新です。これらの技術は、産業構造を大きく変革し、さまざまな分野での生産性向上や新たなビジネスモデルの創出を可能にします。物流、金融、農林水産業等あらゆる業界で第4次産業革命への対応が求められており、適切な技術投資が欠かせません。今後も、デジタル技術の活用を通じて、より効率的で持続可能な社会の実現が期待されます。
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