新着情報

DONのM2M講座 第19回 医療業界におけるM2M/IoT化の課題

  • 2016年09月05日

DONのM2M講座 第19回 医療業界におけるM2M/IoT化の課題 みなさん、こんにちは。

子供の夏休みの自由研究をプレゼンテーションのノウハウを投入して仕上げてしまった、DON.マルチェロ・スミーニです。

「DONのM2M講座」の第19回目ということでよろしくお願いします。
前回の記事はこちらに掲載されています。

私のプロフィールはこちらのサイトに載っています。
すみっこのお友達プロフィール >>
皆さん引き続きよろしくお願いします。

今回は、医療業界でM2M/IoTがどのように使われているかについて、解説したいと思います。


19.1 医療業界でのM2M/IoT化の課題

医療業界は、M2M/IoTの用途として既に大きな比率を占めていますし、今後もさらに拡大が見込まれる業界です。しかし同時にある種の難しさを抱えた業界でもあります。医療の用途でM2M/IoTを利用することにはどのような難しさがあるか、この章で解説したいと思います。

ひとつめの課題は、電波を使用することへの規制です。病院には非常に多くの種類の装置が動いており、特に患者への医療行為に直接関与する装置は誤動作が許されません。したがって、電波を発する装置を医療装置が置いてある場所で使用することは規制されますし、またそれは当然のことです。
たとえば携帯電話の使用について見てみますと、以前は病院全体で使用を禁止するという指針が政府から出されていました。この指針は2014年に改正となり、今では待合室での使用は許容され、また診察室へ電源を入れたまま入ることも許容されるようになったのですが、手術室や集中治療室での使用は引き続き規制されています。
携帯電話の無線を使うM2M/IoTについていうと、取り付けられた場所にて通信を起動するわけですから、携帯電話は持ち込んでもよいが使用はできない診察室への設置も許容されないという状況になっています。すなわち病院にてM2M/IoT端末を設置するのは、場所が非常に限定されるということになり、装着できる装置の種類がこれで限定されているのが現状です。
もうひとつの課題が、医療装置としての認証を取得することです。医療装置は多くの場合、装置そのものの挙動が人命にもかかわることから、装置としての認証は非常に厳しいものになっています。医療装置に通信機能を付けて、M2M/IoTの機能を付加しようとした場合、ほとんどのケースでは通信機器も医療措置としての認証の対象となってしまい、非常にコストと時間がかかる認証の取得を行なう必要が出てきてしまいます。これは、認証の取得自体の問題のほか、運用開始後のソフトウェアの更新がどこまで許容されるかという点なども含めて非常に難しい課題があり、こちらも大きな障壁となっています。

これ以外にも、「日本の医療業界」には業界の体質に根差した大きな障壁があると私は考えていますが、こちらは第3章で解説します。


19.2 医療用途のM2M/IoTの現状

第1章で解説したような課題がある中で、現状ではどのような分野でM2M/IoTが使用されているのでしょうか。ひとつは医療用装置の遠隔監視です。その中でも普及率が高いのは、AED(自動体外式除細動器)の遠隔監視です。皆様も駅やビルの入り口などにはAED装置が設置されているのを見ていると思いますが、このAED装置は内部に電池を持っていて実際に治療に使用されるときにはその電池で駆動します。この電池が、長期間設置されているうちに劣化してきて、実際に使用しようとしたときに電池の不良で装置が動作しないという問題が発生したため、現在では装置に電池の状態を監視する機能が組み込まれていて定期的に管理システムに情報を送信するようになっています。これにより劣化してきた電池を早期に交換して、結果的に故障がなく動作することができるようになっているのです。
またMRIやCTスキャンなどの大型の診断装置も遠隔監視が行なわれています。このような装置は、故障が許されない状況で稼働しているため、定期的な自己診断の結果から予兆保全をしていくような仕組みが確立しています。このような装置は多くの場合有線での通信が利用されており、(特に日本国内においては)無線はあまり使われていません。
病院や検査機関に設置される検査装置にも、M2M/IoTは多く使用されています。たとえば血液検査装置などでは非常に多く使用されていますが、このような装置は実際に治療が行われている部屋とは離れた場所に設置されているため無線通信が利用されているケースも多くなっています。

それでは、医療業界におけるM2M/IoT用途の本命とも言える家庭での遠隔医療の状況はどうでしょうか。海外(特に北米やヨーロッパ)では、M2M/IoTを用いた家庭での遠隔医療が急速に広がっています。海外では、患者が病院に行くということが非常に多くの労力とコストがかかります。特に老齢や病状により車を運転することができなくなった患者にとっては病院に行くという行為が非常に大変なものとなっているのです。したがって、糖尿病や人工透析を必要とする泌尿器系の疾患、あるいは心臓病など、長期的に治療が必要になるような病気については、可能な限り病院に来なくて済むようにするため、家庭である程度の診断を自分で行うことができてそれをM2M/IoTの仕組みを利用して病院にデータを送る仕組みが確立し始めています。つまり、医者が遠隔で送られてくる診断結果を見て、病状の悪化がなければ病院には呼ばずに投薬などの治療を継続するという遠隔診療が実現されているのです。
また製薬メーカが、患者が家庭において薬を飲んだことが分かるような装置を提供して、処方された自社の薬が実際に飲まれたかどうかをモニターするという仕組みを提供している例もあります。海外ではM2M/IoTを用いて家庭において診断や投薬状況のモニターするなど、医療行為の実施や管理を行なうことがすでに一般的と言えるレベルで普及しているということになります。
一方、日本では移動距離が長くなる地方の病院にて実証実験などが実施はされていますが、マスマーケットを対象とした遠隔医療はまだ実施されていません。唯一実現しているものは、睡眠性無呼吸症候群の診断を家庭で実施する際の装置がM2M/IoTの機能を持っていて、診断結果を遠隔で送ることができるという例くらいだろうと思います。(しかも、この装置は外国製のものになります。)


19.3 遠隔医療に対する日本の課題

前章で記載したように日本の遠隔医療は、海外と比較して「遅れている」と言ってもよい状況になっています。なぜこのようなことになっているのでしょうか。
最大の原因は、厚生労働省の指導にあると言わざるを得ないでしょう。厚生労働省の指導によれば、ながらく医療というものは対面診察を原則としていて、遠隔医療は離島などの限定された状況のみで使用されるべきものと規定してきていました。そして、厚生労働省がこの方針を変更して遠隔医療を一般的なケースでも許容するという通達を出したのは、なんと2015年8月のことです。医療の内容を改革するためには、医療機関にも準備が必要ですし、保険の点数制度など関連する制度の変更もいろいろと必要ですから、政府からの通達があったからといってすぐに開始できるわけではありません。したがって、実際に日本で遠隔医療が普及し始めるのにはもう少し時間がかかるものと思います。

日本の都市部では、患者が病院に行くこと自体には、アメリカなどと比べると障壁は低いものと思います。逆に日本の病院で起こっていることは、病院が患者であふれているという状況でしょう。ちょっと大きな総合病院では、診察を受けるまでに何時間も待たなければなりません。医師は多数の患者を抱えて疲弊していますし、看護師の労働条件はブラック企業に近いものがあります。多くの患者は長期的な疾患であって、病状がそれほど激変するわけではないにもかかわらず、何週間かに一度は病院に行って前回と同じ薬を処方されて帰るということを繰り返しています。そして、これが病院にも負荷になっているというのが現状です。

海外においては、患者が病院に行くのが困難という状態への対処として遠隔医療が普及しているのですが、日本ではそのような理由で遠隔医療が普及していくシナリオは描けないでしょう。しかし、病院側がこのように疲弊している状態である以上、患者が病院に来ることなく治療を受けられる仕組みとして遠隔医療を普及させていく必要があると思います。

今回の講座はここまでとさせていただきます。
次回のテーマはまだ検討中ですが、M2M/IoTに関するホットな話題を取り上げたいと思います。次回をお楽しみに。

一覧へ戻る