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MR.スミスのIoTコラム IoTの衝撃的な予測

  • 2016年03月17日

MR.スミスのIoTコラム IoTの衝撃的な予測 アメリカーーーン!!!

暖かくなったと思ったらまためっきり寒くなったね。こういうの、三寒四温って言うんだろ?暖かいのに慣れちゃったもんだからちょっと寒くなるだけで身体に堪えるよね、いくら着ぐるみ着て…(upr注:中の人などいません)。

前回のDONスミスの井戸端会議、もとい、「DONとスミスの新春対談」は読んでくれたかい? eSIMの話、グローバルキャリアの話に始まり、2016年の展望について色々DONと話したんだ。とてもエキサイティングだったよ。今年はIoTにとってとても面白い年になると思う。まだ読んでないというキミは今すぐここからアクセス!

さあ早速本題に入ろうか。今回はちょっと長いから心して読んでくれよ。普段はスミスの独断と偏見を入れて構成することが多いんだけど、今日紹介する記事はほとんどそのまま日本語にして載っけてるんだ。これ以上言うことがないからね。

前回のスミスのコラムではIoTにまつわる数字を色々と紹介したね。そこでは触れてなかったんだけど、2020年のIoTコネクティビティにおけるモバイル回線の数もさかんに予測されているよね。繋がるデバイスの数は、大きい方に振れた予測で大体500億と言われている。そのうち200億程度はモバイル回線で繋がると予測されているんだ。200億回線!衝撃的な数字だね。

だけど Mobile World Congress (以下MWC)でもっと衝撃的な発表が、Ericssonからあったんだ。Ericssonはこれまで予測していた、2020年におけるIoTモバイル回線数を、200億回線から約10億回線に下方修正した。

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エリクソンが発表したIoTの衝撃的予測
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情報源:Ericsson slashescellular IoT device forecast by 20 billion

200億から10億!Wow!何と95%ダウン!凄いインパクトだね。

なぜこんなことになったのか?

実際には昨年の11月に発表されていたようだけど、改めてMWCで発表してようやく注目を集め始めたんだ。MWCの影響力たるや、推して知るべしだね。

それはさておき、IoTにおけるモバイル回線数予測が約10億(正確には13億程度)になった重要なポイントは二つある。一つはコンピューティングの分散化だ。インテリジェンスの分散化といってもいいかな。要はデータを何でもかんでもクラウドに上げるんじゃなくて、できる処理は可能な限りローカルでやってしまおうという動きが活発になってきているんだね。

もう一つは、Sigfox、LoRa、Ingenuなどを始めとする様々なLPWAN技術(Low Power Wide Area Networks:省電力広域ネットワーク技術。少ない消費電力で幅広い範囲をカバーすることが可能。)の台頭だ。ここからはその13億という数字を少しずつドリルダウンしていこう。注意して欲しいのは、2020年の時点で大体500億程度(あるいは200億とも)のデバイスが繋がるという予測は依然として変わっていないこと。焦点はモバイル回線数だからね。

冒頭に示したリンクにある図を見て欲しい。これはEricssonが「Capillary Network(毛細ネットワーク)」としてこの予測を発表した時に使われた図だ。ほとんどのIoTデバイスはまずWi-Fi、Bluetooth、ZigBeeやケーブル接続などのいわばローカルネットワークをまず構築してからインターネットに出て、クラウドにデータが上がるよね。フォグコンピューティングとも呼ばれていて、ここで様々なローカル処理やコントロールが付加されるわけ。

モバイル業界が期待する(あるいは推進している)アーキテクチャとは異なり、大多数の繋がるデバイスはまずゲートウェイに集約されて、そこからインターネットに登っていくわけだけど、この時点でIoTで必要になるモバイル回線数は13億にまで激減する。

2020年には大体5億デバイスがモバイル回線を前提としたもの、つまり直接モバイル回線を利用するデバイスになると見られている。テレマティクスやアラームなどといったもので、これはいわゆるM2Mの延長線上にある順当な成長と言える。ここからさらに、2億程度のモバイル回線がスマートメーターで増加すると見られているので、全部で7億になる。

さて残りは6億回線。これがゲートウェイによって利用される回線数だ。予測によるとゲートウェイ1台に平均して30~50のセンサーがぶら下がる。現時点で既にこういった使い方をするアプリケーションは増加傾向にある。GSMA(携帯通信事業者の業界団体「GSM Association」。WMCの主催団体でもある。)によると2020年までに約2億の新たなコネクテッド・カーが市場に投入される。つまりクルマが発する様々なセンサーデータを1か所で束ねてクラウドに上げるというわけだね。大半がLTE回線を利用するとされ、ストリーミングコンテンツのダウンロードといったような、いわゆるインフォテイメントなんかもこの括りになるね。

2億がコネクテッド・カーに使われるから残りは4億。残り5年で4億だから、これって今のM2Mの成長度合いを倍にした程度だ。モバイル事業者にとっては大問題だよね。これまで200億回線!なんて景気のいい数字をぶちあげてきたんだから尚更だ。

これまでこういった不都合な予測が大っぴらに語られなかったのは、ある意味ごく自然なことと言える。モバイル事業者はIoTによって新たに生み出される200億回線という数字に固執して、そこから得られる莫大なマネーを盲信していたのも無理は無いよね。Ericssonの予測修正によって、モバイル事業者の盛り上がりに水を差された格好だ。だってこの数字って、付加価値の高いバーティカルのアプリケーションが引っ張る今のM2Mとそれ程大きな違いは無いもの。

これがモバイル事業者の業績予測に与える影響はいかほどだろう?そもそもIoTのARPU (Average Revenue Per User:通信事業者の1契約あたりの売上をあらわす数値)は一般のケータイ契約ほど大きくはないよね。1回線当たり1ドルかそこら。1年で12ドル。200億回線を見越して計算すると、この予測で年間大体2500億ドルの機会損失が発生するんだ。グローバルモバイルキャリアの2020年の売上予測は1.445兆ドルだった。2500億ドルが失われるって相当なものだよね。1.445兆ドルの中にIoTがどれだけ入っていたかは分からないけど、モバイル事業者にとってはまぁとても歓迎できるような数字ではないよね。

業績に与える影響もそうだけど、モバイル事業者にとってよりシリアスな問題は「誰がIoTを所有するか?」ということ。ネットワークオペレーターは常に自分たちがプライムであると主張してきた。つまり、データが流れるネットワークを牛耳っていれば自然とそこに繋がるクラウドやアナリティクスも自社配下に置けるという論理だ。Ericssonのレポートはここでささやかなヒントを与えているんだ。冒頭に示したリンクの図を見て欲しい。ここでオレンジ色で表示されている毛細ネットワーククラウドを配下に置ける者が、それを管理することで収益を上げられると主張している。このレイヤーを管理することはIoTにとって必須なわけだけど、同時にIoTにおいてほとんど議論も理解もされていないのが、このデバイス管理なんだ。何百億ものセンサーが繋がる世界はここ抜きには実現不可能だ。

ネットワークオペレーターが、リンク先の図で言うところの紫の部分を、モバイル回線抜きでマルッと提供することができれば、毛細ネットワークからも収益を上げることが可能だとEricssonは言っているけど、それってどうなんだろう?だってネットワークオペレーターにデバイス管理のノウハウやデータ分析の技術があるとは思えないよね。ということは、これから繋がると言われる何百億ものコネクテッドデバイスの世界においては、これまでのM2Mの世界と同じようにバーティカルのプレイヤーの重要性が高くて、モバイル回線事業者の土管化がますます進む。

他にも重要な指摘がある。クルマみたいにLTEモデムを搭載してもペイするようなアプリケーションを除いて、ローパワーのワイヤレスオプションの市場がこれまでの予測のほんの数%程度に縮小していること。

これから繋がる200億のデバイスのうち大半は、低コスト、低消費電力、そして広域接続といった要件が必要になると予測されている。ここってモバイル事業者がうまくハンドリングできていない分野だよね。LTE Cat-1、LET-M, NB-IOTモジュールなど、モバイル業界が推進している規格はいくつかあるけど、今のフロントランナーはSigfox、LoRa、IngenuといったLPWANソリューションといった構図になっている。

ただ、それぞれにチップや標準化が必要だし、何より数がまとまらないと価格も下がらない。とはいえ標準化さえ進めば全て丸く収まりそうだ。だけどそういった事業者のいくつかがコケたりすると、市場に混乱を来すだろうし、IoTが現実化するまでにより長い時間を要することになるよね。その混乱を制する者が次のIoTの勝者と言えるかもしれない。

MWCではNB-IOTに過度な期待が集まっていたよ。モバイル業界はLoRaの成功に対して我々こそがIoTを最も知るのだというような対応だったね。無線の接続部分にだけフォーカスして、プロビジョニングやデバイス管理、クラウド、データ分析といった、IoTのリアルをそっちのけにするような姿勢はいただけない。それだとIoTは単なるM2Mのファンシーな呼び名で終わってしまうよ。誰かがそのチャレンジをしっかり明確にしないとね。

ネットワークオペレーターがこのまま「回線」にフォーカスし続けるのであれば、きっとIoTのコントロールを失い、単なる土管で終わるだろうね。さらに言えば、まず色んなモノを繋いでみるという、IoTの世界を構築するのに必要なステップがますます遅れることになる。

だけど希望はまだ残っているよ。本当の意味でのIoTのエンドトゥーエンドのソリューションを提供できるプレイヤーが現れれば、IoTは単なるHypeでは終わらない。今回のMWCでそんなプレイヤーは残念ながら皆無だったけど。

今回は以上だ。
スミスは常々、IoTにおいてはモバイル事業者は「不可視化」するのが自然だと思ってる。つまりユーザーにとっては回線が何かなんてどうでもよくて、データが安く確実に安全にクラウドに運ばれれば、目的は達成できるからね。その意味でも、自らが推進し構築してきた、何でも繋がるIoTの世界で、モバイル事業者は大きな岐路に立っていると言えるかもしれないね。

じゃ今週はこの辺で。また次回を楽しみにしててくれよな。
アメリカーーーン!!!

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