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DONとスミスの新春対談 vol.3

新春とうたいつつ、本当の春になってしまいました。お待たせしてすみません。
前回までに、ユーザサイド、サプライヤサイドから2015年の考察を行いましたが、今回はまず、テクノロジの観点から注目すべき振り返りと、最後に2016年の展望をお願いいたします。

-テクノロジのキーワードとして、eSIM(組込み型SIM)というキャリアを指定しないSIMが昨今さわがれていますが、どう思いますか?

DON(以下D):意外と知られていないかもしれませんが、無線通信を用いてSIMに書き込まれたID情報を書き換えるという技術はすでにいくつかの例で使用されています。しかし特にM2Mの用途では端末に電源が入っている状態を確保することなど、無線通信経由でのSIMの書き換え作業は運用上複雑で難しい部分があり、利用しているキャリアはありますが広く普及するというところまではいっていないのではないでしょうか。
一方で、たとえばブラジルが長期的に利用する端末については現地SIMしか許可しないように、各国の通信事情は国によって様々な規制があります。そうした環境では、現地事業者のSIMを用いてM2Mサービスを提供する必要があり、それがSIMの書き換えの需要の要因となってきた経緯があります。
eSIMはリモート操作による契約事業者情報の書き換えに対応しているわけですが、SIMの書き換え作業は現時点ではユーザが快適に使える状態には至っていないので、ユーザにメリットを打ち出せているとは言えない状態ですね。

-グローバルな利用を考えた場合、ローミングという手段もありますよね?

D:ひとつのSIMを国ごとに書き換えて使おうとするeSIMと、ひとつのSIMを全世界どこででも使えるようにしようとするローミングは、対照的なアプローチといってよいでしょう。

スミス(以下S):巨大資本をもって各国のキャリアを買収することで世界にローミングエリアを広げていったVodafone と、各国のキャリアを巻き込みながらeSIM普及を推進するJasper連合といったあたりが有名どころかな。

D:現状は、Vodafone VS Jasper連合 と言う人もいるようですが、どちらが優勢などと議論するよりも、ユーザから見た利便性を第一に考えたあるべき姿になって欲しいものです。

-あるべき姿とはどんなものだと思われますか?

S:テクノロジの壁を忘れて言わせてもらえれば、その時々で最適なルート、手段を選べることだと思うよ。それもユーザが気づかないうちに使い分けている。そんな風にキャリアは「見えない化」していくのがベストだろうね。

D:たしかに。書き換えたか書き換えてないかなんてユーザには関係ない、どうでもいいことですよね。

S:どこのキャリアを使うかだって、ユーザにとってはどうでもいいよね。大切なのはデータが安く確実に届くということ。

D:それぞれの国や地域で最適なものを実現してくれることが重要になるわけです。

S:そうなると、ワールドワイドにサービス展開するVodafoneやAT&Tじゃないと提供できないことになるかもしれない。

D:Jasperは各国のキャリアが連携するためのまとめ役という位置付けもあります。
ユーザから見て究極のあるべき姿とは、どこか1社のSIMを利用すれば、利用する地域によって最適な通信を選択しそれは利用者にはあずかり知らぬうちに行ってくれるもというものだと思ってます。
Vodafoneはそれをローミングという手段で実現しようとしているし、Jasperは書き換えという手段で実現しようとしているでしょう。SIMの書き換えが全世界に完全に普及したときにはJasper的世界も魅力的ですが、そこに至るまでの現時点ではVodafoneにも十分な魅力を感じます。

-eSIMがキーワードになることには間違いなさそうでしょうか?

D:将来的にはそうなるでしょうね。とくに日本人はこういうものを好むんですよね。

S:たしかに。気になるね。

-今後M2Mが爆発的に伸びるために、テクノロジ視点で、現時点で何が必要でしょう?

S:ソフトとハードがあると思うけど、ハードについていえば、価格や各国の認証を完全にクリアできることだよね。

D:アプリの動作環境がバラバラなのもユーザにとって便利とはいいがたいと思います。これは現状では普及の障壁になっていると思います。
通信端末について各国の認証をとらなければならないこと、アプリ開発が端末ごとに異なること、この2点を解決してゆく方向性の中に、理想が見つけられるのではないかと思います。

S:もう少し上の階層でいえば、データの可視化が素早く簡単にできることは重要。

D:となればクラウドですね。これはすでに出来てはいるけど、日本だと抵抗感のある企業もあるように思います。

S:逆をゆくレギュレーション(規制)もあるね。欧州の一部では国外にデータを流出させないといった政策もある。障壁はテクノロジだけでなく政治的なものもある。

D:そうですね。ローミングSIMには機能を制限して国内キャリアを守ろうという政策を打ち出す国も増えてきています。

S:ソフトウェアの世界はオープンな世界に向かっているけど、ハードは通信も含めた様々な規制や認証問題があって、クローズドだよね。ソフトのオープン化と、ハードのクローズド化のギャップを強く感じる。ソフトウェアはクリアしやすいだろうが、ハードウェアの障壁は大きいね。いかに簡単に展開できるハードウェアが作れるかが求められるんじゃないかな。

D:ということはやはり、上のレイヤーでの話になりますが、データの価値を最大限に生かす必要性があるわけです。前々回の話でも出てきましたように、企業間のデータ共有なども視野に入れたデータの価値の最大化がなにしろ重要になります。

S:そこはテクノロジよりアイディアだね。知識や経験の蓄積が必要になるよね。すそ野が広がればもっと違った使い方やアイディアも出てくるだろう。IoTという言葉自体も、聞いたことはあるけど内容はわからないという人がまだまだ多いから。

-ウェアラブルといえばわかるんでしょうね。

S:M2Mとは異なるけれども、IoTの一部ではあるから、そうした視点からの広がりはあるかもしれないね。Google Glassみたいな。

D:既存のM2Mとは違う方向からのIoTの広がりは感じます。それはそれで期待できるものがあると思います。

-ユーザ、サプライヤ、テクノロジの視点で2015年を振り返りました。では、2016年はどうなると思いますか?

D:中国景気が怪しいというマイナス要因はありますが、2016年はM2Mを導入するユーザ企業が日本でもかなり増えるだろうと思います。

S:増えるのは間違いないけど、よくうたわれている市場予測までは届かない気がするよ。

-2020年までに世界の240億(資料によっては500億)のセンサがつながるとか、市場規模が6兆ドルとかいわれているものですね?

D:ウェアラブル端末のような民生品を含むIoT全体での話ということだと思っています。スマートウォッチのようなコンシューマ向けのものを入れればそれぐらいの数にはなるかもしれません。

S:カシオのスマートウォッチほしいなぁ。

D:ほしいほしい。よさそうですよね。

S:M2MとIoTを区別したとしても、『やってみよう!』って企業は増える。

D:日本は2016年からスタートすることを決める企業が増えて、パイロットや商用化が進むと思いますが、金額的にはまだまだ飛躍的に伸びるところまではいかないかもしれません。海外はもっと先に進んでいて、すでにその段階は過ぎていて、本格的な普及期に入っていまして市場の金額も増えています。

S:心配事のフェーズが国内と海外で違ってるよね。海外は導入後のセキュリティを心配している。セキュリティやプライバシーを心配し、そこにかかる規制がヨーロッパで導入され始めているんだ。日本はまだ導入そのものへの心配をしている。導入に掛かる費用やROIを気にしている段階。心配事のフェーズを見ても、進み方が遅れていることはわかるけど、これまでの「IoTって何かな?」というフェーズからは進歩しているのは間違いないね。

-前回までに話に出た、IoTコンサルティングについてはどうでしょうか?

S:それは求められるだろうね。

D:いろんな会社で働く人々が会社の垣根を越えて問題解決をしようと知恵を出し合い協力し合う様子をみかけます。そうした集団が蓄積した知見でやがてコンサルティングを行うようになるかもしれないですね。

S:羅針盤的サービスが求められるようになるだろうね。そこにはテクノロジ、ユースケース、組織論なんかが含まれると思うよ。IoTを導入するために最適なチームとか組織をどう選ぶか、最適なサプライヤをどう選ぶかの役割を担うサービスが必要になるだろう。

-サプライヤを格付けするような会社もでてくるかもしれないですね?

D:なるほど、格付けも面白そうですね。

S:つまり、一歩引いたところから全体を見ることのできるサービスが出てくるね。ゴールドラッシュ時は、最初は金を掘る人々が大勢うまれたけど、しばらくすると金に精製する会社が登場した。そのように、今はみんな「IoT!」と言っているけど、それを束ねるとか、方向を示すサービスが登場するんじゃないかな。

-他にはどのような変化が予想されますか?

S:2016年中にくるかどうか、2017年以降になるかわからないけど、技術的な統廃合は進むだろうね。プラットフォームをとってみても、様々な会社がサービスを始めた。Amazonもそうだし、ニフティも始めた。雨後の筍のようにでて、似通ったものを提供しようとしている。そのあたりの統廃合が進むよね、きっと。まだ早いかな。

D:いままでM2Mには超大手企業としてはIBMぐらいしか入り込めていなかったので、M2Mに特化した中規模SIerが活躍していました。今後はSAP、Amazon、オラクル、マイクロソフトなどがどう動くのか気になるところですね。どこかの時点で中小SIerを一気になぎ倒して覇権をとりにくるかもしれません。それが2016年中かどうかはわかりませんが。

S:あとは、オリンピックに向けた導入が加速するだろうね。

-前々回に触れた製造業のM2M導入についてはどうでしょう?

D:Industrie4.0の視点で言えば、工場のIoT化の模索が始まるように思います。今までは工場内の制御系ネットワークはできていたが、監視系ネットワークはいまひとつ普及していなかったといえます。工場のIoT化が叫ばれる一方で、工場のIoTのためのアーキテクチャはまだ出来上がっていないと言ってよいでしょう。従来の制御系と、新しい監視系をどのように統合するのかという点において、装置構成の模索が始まるでしょう。工場系の装置メーカと遠隔監視系装置メーカが真っ向からぶつかる勝負になるかもしれません。そこで新たなプレイヤーが現れるのか、既存企業同士が混ざり合うのかはわからないですが。

S:工場のIoT化でいえば、オープン化が理想だけど、その一方でサイロ化(自己完結化)も進むと思う。コマツが進めるKOM-MICSや三菱電機の取り組みなんかがそうだよね。コマツはコマツのサプライヤに無料でシステムをばらまいている。サプライヤはコマツ以外にもモノを作って納めているけど、このシステムに組み込まれるとその部分まで丸裸にされてしまうよね。だけどこれを導入しないとコマツにモノを納められなくなってしまう。これらは横展開できないコマツ独自のエコシステム、三菱電機独自のエコシステムで独自のプロトコルを利用したりしているわけだけど、そういったものが覇権をとる競争をはじめるかもしれないね。かつてのVHS対βの家庭用VTR規格のように。

D:データを利用した系列の再編成ですね。

S:2016年にはそうしたいろんな系列ができちゃって、5年後ぐらいにはまた横串を通さなきゃいけなくなって何兆円もかかるかもしれないね。

D:そうした新たなる模索が始まる年になりそうですね、2016年は。

-導入は進むが、また新たな戦いの火種がうまれるということですね。

S:そう。残念ながら日本版Industrie4.0は起こらない。日本企業版Industrie4.0だね。

D:政府が優秀なら5年後の横串をみこして今手を打つんでしょうけどね。日本の大手企業がどんな策を打ち出すかという点には注目したいです。

3回にわたり2015年の動向を振り返り、2016年を予測しました。
結論としては、世界から遅れを取りながらも日本国内で導入は加速しそうです。そして2016年は次の新たな戦いの幕開けとなりそうです。すでに登場しているプレイヤーたちが将来の覇権争いをみすえて準備をすすめる一方、コンサルティングサービスやデータ取引所のような、少し目線をずらした新サービスの誕生も予測できます。数年後にはどんなサービスが現れどのプレイヤーが活躍しているのか、そこにuprは含まれているのか?楽しみです。