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DONとスミスの新春対談 vol.2

前回は製造業を中心に考察しましたが、今回はサプライヤサイドからの振り返りをお願いいたします。

-ユーザの取り組みが遅れているわけですが、そこへのアプローチは誰がどのようにするのが良いのでしょうか?

DON(以下D):可能な限り経営者層へのアプローチが必要になりますね。担当者レベルではM2Mの必要性は理解できているですが、その上はそこまで理解できていないと思います。つまりコンサルティングのようなアプローチが必要になります。

スミス(以下S):サプライヤはどうしても自社製品を推してしまうから、ユーザに対して最適なものを提案しにくいよね。はまればいいけど、はまらないケースが圧倒的に多い。SIer(System Integrater)なり、経営コンサルタントなりが、その会社の経営をわかったうえで、最適なものをピックアップしないといけないだろうね。

D:IT業界におけるITコンサルのように、通信を使って何をすべきかアドバイスができるIoTコンサルが必要となってくるのではないでしょうか。サプライヤの言うことだけを聞いていても最適な選択はできないので、第三者的な立場で意思決定者をサポートする人が必要になります。

S:アクセンチュアとかやってないのかな。プレイヤーとしてはあまり聞かないね。

-IoTコンサルティング、M2Mコンサルティング機関が生まれるということでしょうか?

S:今はそういうのあまり聞かないね。現状そうしたことをやっているのはあくまでもサプライヤ、それも大手のIBMのようなところだけかもしれない。

D:私はIoTコンサルタントのような市場が出来上がるのを待っているんですがね。

S:僕らが作ろうよ!

-サプライヤの立ち位置は将来的にも変わらないのでしょうか?

D:歴史の流れのなかで言うと、SIerのポジションが高まっているといえますね。M2Mという用語ができた当初はM2Mといえば「モジュール」「キャリアのビジネス」といった感があったと思うんですよ。ユーザもそれぞれの構成要素を全部自分で別々に選定し、一つ一つをつないでいたわけです。ですがスピード感をもって導入することが必要となった今では、全部を集めてつながるようになった状態でお客様へ提供する会社がいないと、お客様が選べなくなってしまいます。サプライヤの選択肢がこれだけ増えてくると、一括して提供できるSIerが全体を組み合わせて導入するほうが効率が良いといえるでしょう。

-今後SIerが、コンサルも包括して、トータルのサービスを提供するといった土壌はあるのでしょうか。

S:日本は自社内のシステム部門でサービスを構築するというより、SIerに外注する風潮があるよね。日本国内のIT従事者の7割はSIerに所属していると言われている。これは日本の特徴だよね。アメリカではそれが逆転していて、GEも製造業から3万人のSEを抱えるIT企業へ変身した。自社での開発リソースが足りないとなると、やはりコンサルティング機関が必要になるんじゃないかな。

D:私はSIerに発注するという日本独自のやり方が悪いことだとは思っていないわけです。なぜならSIerがノウハウを蓄積してを展開することができるという利点があるからです。アメリカの場合は社内にプロジェクトを立ち上げてリソースを短期集中させて取り組む場合が多いですよね。ThingWorxなどはまさにアメリカ的なやり方に合致したソリューションだと思います。一方でM2Mは長期的な機能改善や他システムとの連携など、もう少し時間をかけて作りこむ必要もあるので、短期プロジェクトではカバーできない面もあります。SIerがノウハウを集積していく日本独自のやり方は、M2Mを対象とするのであればそれなりに理に適っているので、このまま発展させていくことがよいでしょう。

-いまいったようなサービスを展開しているSIerはどこでしょうか?

D:そこにいち早く気づいたSIerの一社としてユーピーアールを挙げたいです!他にはサンデン、安川情報システム辺りの企業が以前からこのようなサービスを目指していましたね。富士通、NEC、日立といった大手SIerも早くからそのような案件を持ってはいたと思いますが、初期のころはたまたまお客様の要求事項を満たしたらM2Mになったという感じで、会社全体としてM2M/IoTに注力し始めたのは少し後だったのではないでしょうか。そんな印象があります。

S:先ほど述べたように、日本はSIerとユーザのつながりが強い。サプライヤが先行している現在、ビジネス化、マネタイズ化できるSIerがどのようにサプライヤを見極めてユーザに提案していくかがカギになるね。

D:大手SIerのM2M/IoTを推進する体制はここ数年間で大きく進歩したとは思いますが、まだ十分とは言えないですね。自社の中でノウハウを持つチームや、戦略的パートナーシップで、獲得したノウハウを自社内にうまく展開することが必要ですが、社内の体制がそこまでは進化していないのではないでしょうか。その中で面白い例としてはITホールディングスの中のクオリカがあげられます。コマツのIT部門からM&AによりITホールディングスグループの一員となったわけですが、いまやグループ内全体にM2Mのノウハウを提供する立場になっています。非常に面白い立ち位置だと思いますね。この例でみてもわかるようにM2Mに特化した中規模SIerは非常に価値の高いノウハウを持っていると思います。大手SIerは、ノウハウの蓄積だけではなく社内体制の整備やお金の取り方の考え方を変えていくことも必要になると思っています。かねてから批判の多いITゼネコン型の人月ビジネスはM2Mでは全く有効でありません。この辺の考え方を変えることができた企業が、競争の中で勝ち残っていくのだろうと思います。

S:もう一つの日本の特徴として、M2Mの導入が一足飛びになっている懸念はあるね。海外の場合M2Mが足元から構築されている。まずデータの可視化、データの蓄積、そしてノウハウ蓄積…、ビジネスインテリジェント(BI)といった具合だけど、日本の場合はその足元も十分ではない状態で、マシンラーニングとかAI、BIなど、一足飛びに上部のレイヤーに意識が向いている気がするね。気持ちは分かるけど頂上ばかり見ていても物事は動かないよね。

-バズワードともいわれるビッグデータをキーワードに、そちらからのアプローチをしている感がありますね。

S:その辺に違和感があるね。日本の多くのM2Mはまだそのフェーズではない。まずはデータ集めるところからやろうよ、って感じ。

D:ユーピーアールのスローガンではないですが、まず『やってみよう!』でしょう。データがたまるのには時間がかかるから、まずは始めないといけません。

S:PepperやIBMのWatsonをあげていろんなことができると言われているけれども、それはそこに膨大なデータが蓄積されているから。そこを忘れてM2Mやってみたけど何もできないとなりかねないから、とにかくデータを集め始めないといけない。また、だからこそ、足りないデータを埋めるために、「データ取引所」みたいなサービスができると面白くなるよね。

-自分たちが使うためでなく、売るためにデータを収集する企業もでてきそうですね。

S:データ取引所みたいなものをうまく活用できれば、日本は欧米より遅れをとったこの3~5年を一気に取り戻すことができるかもしれないね。

D:ユーザのためには、SIerがデータ分析の能力を高める必要があると思いますね。そしていまはぜんぜん現れていないデータ分析も含めたM2M全体のコンサルの登場が期待されるのですが、そんな時代は来るのでしょうか。

-そうしたSI、コンサルまで踏み込めるサプライヤがでてくると面白くなるということですね。

D:また、日本のサプライヤにとっては海外で利用したいというユーザのニーズにどう対応するかも課題ですね。言語や無線装置の認証の問題など、今後グローバルをどう考えるかという難しい課題が残されています。

-国内メーカのゲートウェイは国内とせいぜいアメリカ・ヨーロッパ対応のもので、いま日本の企業が進出しているアジア圏に対応していないというジレンマがあります。ハードウェアメーカはどう動くべきでしょうか?

D:各国の認証を取得することが大きな壁になってしまっています。たとえばUSBドングルのような、アンテナまでも実装しているため単体で無線認証をとれてしまっている装置もあるので、そのような通信装置を使用して端末を作るというアイディアがあります。これだと、日本のハードウェアメーカには、得意とするデータの収集・加工などに特化することができ、各国の認証を心配せずに機器を提供することができます。Vodafoneが販売しているUSBドングルはそれに近いものですし、国内の機器メーカが共同でこうした通信ドングルをつくり世界中の認証をとり、皆でシェアしてもよいのかもしれません。現在は組込みモジュールを製造しているメーカにそういうニーズを察知して、アンテナまでを実装したモジュールの検討をしてほしいものです。

S:今のデータ蓄積は二極化の傾向にあると思うな。なんでもじゃんじゃんサーバに送る系と、エッジ側でアナリティクスやビジネスインテリジェンスをまわして必要なデータのみをサーバに送る系。キャリアは前者が嬉しいだろうね。後者はインテリジェンスの分散化といえる傾向。そもそもM2Mのうち3G回線を利用するのは半数以下と言われているからね。ハードは現地で調達し、そうしたいろんなハードの上で走らせられる共通ソフトだけあるといいんじゃないかな?

D:ハードメーカは自分たちが得意な部分、価値を見いだせる部分のみをやる方向に変わっていくしかないでしょう。通信なのか、データの分析や加工なのか、得意なものを作って、それを活かせるアーキテクチャを選べばいい。すべてを詰め込んだものを作って、どうやって認証とるんですか?となるぐらいなら、通信機能は切り離してしまった方がよいんです。2016年中は難しいかもしれないが数年かけてそうした方向に動いてゆくでしょう。

-いままでのM2Mシステム=通信モジュールといったイメージがありましたが、今後変わってゆくということでしょうか?

D:組込みモジュールが注目される時代はすでに終わりですね。クルマ以外順調な分野はないだろうと思います。

S:どの通信モジュールを使うか、どのゲートウェイを使うかということは意識しない方向に進むだろうね。モノがあればつながるのが当たり前となる時代が来る。現在は過渡期。

-M2Mシステムを検討する際に、ハードウェアに固執する必要がなくなるということでしょうか?

S:ハードウェアの重要性は変わらないけど、いずれハードウェアは見えない化が進むだろうね。

D:ハードウェアよりは、むしろそこに乗るアプリの方が重要視されていくと思います。エッジコンピューティング的にどうやってうまいロジックでまわすか、といったことに焦点が当たるようになると思います。

日本の状況として一足飛びにIoTを語ろうとする風潮がありますが、やはり足元からしっかりとかためることが必要で、そのためには日本のサプライヤは適切なものを選択できるSIerやコンサル的な立ち位置を求められているということがわかりました。欧米からの遅れを取り戻すためにも、日本では着実かつスピーディーにデータ収集から始める必要があります。その実現はSIerがユーザの本当に必要とする仕組みを提案できるかどうかにかかっていると言えます。

次回はテクノロジサイドからの振り返りと、2016年の展望を語っていただきます。
次回もお楽しみに。