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DONのM2M講座 第16回 2Gネットワークの廃止

DONのM2M講座 第16回 2Gネットワークの廃止

みなさん、こんにちは。

先週『日本の夏は暑すぎる』と書いたら、それはお前がぬいぐるみだからだろう、と突っ込まれたDON.マルチェロ・スミーニです。

「DONのM2M講座」の第16回目ということでよろしくお願いします。

前回の記事はこちらに掲載されています。

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皆さん引き続きよろしくお願いします。

前回は、M2M/IoTの用途でLTE通信がどの程度使われているかについて解説しましたが、その際にいくつかの国では2Gを廃止する予定があることも記載しました。今回は、2Gの廃止について解説したいと思います。

16.1 2Gネットワークの廃止の現状

最近になって2Gネットワーク廃止の話題がよく聞かれるようになりました。この2016年は2Gネットワーク廃止の始まりの年と言ってよいと思います。ではなぜ2Gを廃止が議論されるようになったのでしょうか。

通信キャリアにとって、複数の世代のネットワークを同時に提供することは余分なコストがかかります。インフラ設備は一部は共通化されているかもしれませんが、ほとんどの設備は二重に保持していく必要があります。設置場所も保守運用費用も二重に発生してしまうのです。通信キャリアは一旦新しい世代の通信サービスの提供を始めたら、前世代の通信サービスは可能な限り早く廃止してしまいたいと思うものなのです。

ネットワークの廃止の際には、廃止される方式のみをサポートする端末装置は使えなくなります。一般の携帯電話やスマートフォンに関しては、旧世代の端末の販売は早めに停止して利用者の減少を待ち、最後は代替機の提供なども行なってなんとか反対を抑え込んで廃止を完了する必要があります。

その中で、M2M/IoT用の端末はネットワークを廃止したいという通信キャリアにとって頭痛の種となっています。M2M/IoT用の端末は、買い替えという行為がそもそも存在しないため、過去に設置されたものがずっと残っています。しかも、代替機を提供するといっても、新しいM2M用の端末を提供したところで簡単に入れ替えて使えるわけでもなく、既存のシステムへの適合にたいへん手間がかかります。つまり利用者側に発生する手間とコストが大きいため、なかなか簡単に変えられないというわけです。

2016年末に廃止を予定している北米AT&Tを筆頭に、いくつかの通信キャリアが2Gの廃止をすでにアナウンスしています。主なものを挙げてみましょう。

  ●北米AT&T 2016年末

  ●オーストラリアTelestra 2017年4月1日

  ●シンガポール(3キャリア) 2017年4月1日

  ●カナダRodgers 2018年までに廃止予定

これらの通信キャリアの2Gの廃止プロセスにおいて、M2M/IoT端末の扱いがどのようになるか、業界はたいへん注目しています。すべての関係者が、これらの国で2Gの廃止の際に大きな混乱が起こらないことを切に願っています。

16.2 いち早く2Gネットワークを「廃止した」タイの状況

多くの国で2Gの廃止はこれからの話ですが、世界に先駆けて2Gの廃止を行なった国があります。それはタイです。本章ではタイで何が起こったのか見てみましょう。

タイのトップシェアを持つ携帯キャリアであるAISは2015年の段階で、また3番手のキャリアであるTrueMoveは2015年末をもって2Gを廃止する予定でした。しかし、実際にはいろいろな抵抗があったようで2Gのネットワーク廃止はスムーズにいきませんでした。タイではいまだに2Gの電波が出続けているようです。しかも、2Gのネットワークにアクセスした場合には完全なサービスを使えるわけではなく、とくにデータ通信系のサービスは非常に制限されているようです。このため、M2M/IoT用の端末のうち、2Gネットワークを優先的につかみに行く一部の端末が、まだ電波を吹いている2Gネットワークにアクセスしに行って結果として通信サービスを利用できなくなるという混乱が発生しています。

タイでは、2Gのネットワークを廃止した後、空いた周波数をオークションにかけるという政治的な決定があったようです。このため既存のキャリアにとってみると、非常にコストや労力をかけて2Gを廃止しても、そうやって空けた周波数はオークションにかけられて、多くの場合他の会社に持っていかれてしまうということで、通信キャリアにおいて2Gユーザをスムーズに3G/4Gに移行させるモチベーションが生まれなかったということだと思います。英語のニュース記事だけではなかなか最新の状況が分からないのですが、混乱はまだ収まっていないように思います。

そしてそのような混乱が起こると、無人で運用されているM2M/IoT端末はときとして問題を起こしてしまいます。人が使っている携帯電話やスマートフォンであれば、手動でネットワークを切り替えればよいのですが、それができないM2M/IoT用の端末はそのように柔軟に制御することができません。タイは2Gネットワークの延命行為があったことなど特殊なケースとは思いますが、M2M/IoT端末を運用している利用者は2G廃止の際には注意が必要であることは言うまでもありません。

16.3 ヨーロッパでうわさされる新たな動き

このように2Gの廃止は、混乱を生む可能性を秘めているものの、LTE導入後の既定路線として考えられてきました。しかし、それを覆す新たな動きがヨーロッパで始まっています。ヨーロッパの一部の通信キャリアが2Gよりも先に3Gを廃止すると言い出しているのです。

そもそもヨーロッパでは3Gのエリア展開が遅く、いまだに3Gが全国をカバーしていない国がほとんどです。そのような中でLTEの導入が始まっているため、一つの国の中のカバレッジで言うと

  2G>3G>LTE

となっている国がほとんどです。

この状況の中で、2Gではなくて3Gを廃止してしまおうということを言い出す通信キャリアが現れ始めています。

この主張は確かに合理的です。どうせ「低速サービス」として残すのであればエリアが完備されていない3Gよりもすでにエリアが完備されている2Gを残したほうが余計なコストがかかりません。また、多くのヨーロッパの国では2Gのみの通信モジュールが安価だったため、電気やガスのメータに取り付ける通信機や、自動車に取り付けられた緊急通信用の通信端末など、2Gのみに対応した通信機が多くの機器に取り付けられており、これを簡単に廃止することができなくなっています。

また3Gで使用されているCDMAという通信技術は、技術ライセンスの費用が高く設定されているのでインフラ装置も端末装置もライセンス料のため価格が高いというマイナスもあり、3Gはあまり通信キャリアから好まれていない通信方式でした。そのような複合的な要因が作用して、2Gよりも3Gを先に廃止してしまおうという「合理的な」主張が生まれてきているのです。

まだ正式に決定したという状況ではないと思われますが、この方向に動いていくことも十分にあり得ると思います。移動体通信の発展の歴史からみるとまったくの想定外のものではありますが、現実の世界ではこのような方向の議論が活発に行われているのです。この状況は今後も注視していきたいと思っています。

今回の講座はここまでとさせていただきます。

次回のテーマはまだ検討中ですが、M2M/IoTに関するホットな話題を取り上げたいと思います。

次回をお楽しみに。