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DONのM2M講座 第11回 IoT時代に新たな脅威に直面する通信キャリア

DONのM2M講座 第11回 IoT時代に新たな脅威に直面する通信キャリア

みなさん、こんにちは。

ゴールデンウィークは怠惰に過ごしたDON.マルチェロ・スミーニです。

「DONのM2M講座」の第11回目ということでよろしくお願いします。
前回の記事はこちらに掲載されています。

私のプロフィールはこちらのサイトに載っています。
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前回は、M2MとIoTという言葉をキーにして通信キャリアの最新の動向に少し触れさせていただきました。今回から何回かに渡っては、この点にもう少し突っ込んでM2M/IoTにより新たなチャンスと脅威に直面している通信キャリアの現状について解説したいと思います。

11.1 IoTの海外用途における通信サービスの現状

本年の1月~2月にかけて掲載されたDONとスミスの新春対談では、海外利用のM2M/IoT用通信サービスについてはVodafone対Jasperの構図になっていることが議論されていました。まずは、VodafoneとJasperがどのようなサービスを提供しているかをおさらいしてみましょう。

Vodafoneは、通信プラットフォームを自社で保有し、自社で発行したSIMを各国のキャリア網にローミングさせて利用可能とするという方法で、全世界で一律のサービスを提供するという垂直統合モデルを確立しています。このようなサービスを志向している通信キャリアとしては、このサービスモデルの元祖とも言えるTelenorのほか、AT&TやOrangeなども挙げられますが、Vodafoneはもっとも大きな規模でこのビジネスモデルを推進することにより、競争力を作り出しています。

一方Jasperは、通信プラットフォームを各国の通信キャリアに提供している企業です。Jasperとパートナーシップを確立した通信キャリアは、自社のSIMにて提供する通信サービスにおいてJasper社の通信プラットフォームによる通信監理機能を提供することが可能になります。またJasper社は一部のパートナーキャリアに対してSIMの書き換えサービスを提供しています。このパートナーキャリア間では、それぞれのキャリアが発行したSIMを別のキャリアのIDに書き換えることが可能になっています。
さらにJasper社は、M2M World Allianceという各国の通信キャリアを取りまとめるような連携組織を作ったことにより、各国のキャリア間を「ゆるく」結びつけるような役割も担っています。

Jasperと同じよなビジネスは、エリクソン社も行っています。エリクソンは通信キャリアのインフラ装置のサプライヤとして世界の大手企業ですが、もともとTelenor社が使用していた通信プラットフォームを買い取って、各国の通信キャリアに提供しています。またGlobal M2M Associationという通信キャリアの連携組織も運用しています。

11.2 Jasper社の近況

Jasper社は、ここ数年で2つの大きな変化が発生しています。

ひとつめは、1国1キャリアというパートナー戦略をやめてひとつの国の複数のキャリアにプラットフォームを提供することになったということです。たとえば日本では長らくNTT DoCoMoだけにプラットフォームを提供してきましたが、2015年にソフトバンクとの提携を発表しました。このようにひとつの国にJasperの通信プラットフォームを使用するキャリアが複数存在するということが各国で起こってきています。
このような状況では、各国の通信キャリアとしては、潜在顧客リストなどのマーケッティング情報を共有してJasperとがっちり組んでビジネスを展開していくということはできなくなります。既存の通信キャリアとしてはJasper社との付き合い方を大きく変えなければならなくなった事態と想定されます。

そして2つ目の大きな変化としては、Jasper社自体がCiscoに買収されたということです。
Ciscoは、一般にはあまり知られていないかもしれませんが、エリクソンの牙城であった通信キャリア向けインフラ装置の事業にかなり以前から進出していて、現在では一定のシェアを確保しています。Jasperの買収によりCiscoとしては通信キャリア向け商品のポートフォリオに「M2M/IoTプラットフォーム」を加えることができたということでエリクソンとの競合において対抗手段を得たといえます。しかし、Ciscoはインフラ装置の事業としては世界中の全通信キャリアが潜在顧客であることから、特定のキャリアに肩入れせずニュートラルな立場をとらざるを得ません。すでに1国複数パートナーにてニュートラル化しつつあったJasper社としては、Ciscoに買収されたことによりさらにその方向に行く流れが強まることになります。

Jasper社プラットフォームを使っている通信キャリアから見るとJasper社は便利なツールは提供してくれるものの、海外キャリアの連携や対顧客の営業支援においてビジネス上の深い関係は望めない企業ということになります。日本の通信キャリアは、このようなJasperの変貌に対応して戦略の練り直しが必要になっている状況と言えるでしょう。

11.3 国際MVNOによる新たな脅威

ここ最近になって、通信キャリアには新たな脅威が発生しています。それは、国際MVNOとでも呼ぶべき企業の誕生です。そのような国際MVNOの代表的企業は、Cubic Telecomという会社です。Cubic Telecomのビジネスモデルは、各国でそれぞれの国のキャリアの通信サービスを使用できるMVNOとなり、顧客に対してひとつの契約で各国の通信を提供するというものです。Cubic Telecomは本年1月にドイツのAudiとのパートナーシップを発表し、一躍世界中の注目を集めるようになりました。
またAerisという会社もほぼ同じようなサービスを提供しています。
このような国際MVNOは、特に自動車業界が非常に高い関心を示しています。

通信キャリア側は、このようなMVNOに対してかなり脅威を感じています。通信キャリア同士の協定というものは、基本的に相互に対等な条件になるように維持されていて、たとえばA社のSIMがB社のネットワークで通信を利用するときのローミング用の通信キャリア間の料金は、B社のSIMがA社のネットワークにローミングした際にも同額にすることが原則です。通信キャリアはこのような「対等な関係」を積み重ねてグローバル通信サービスの競争を行ってきたのですが、そのなかに対等な関係のルールに縛られない外部のプレーヤーが参加してきたことに対して、ビジネスモデルの破壊への潜在的な脅威が潜んでいるとの観測があるものと思われます。

現在のところ、このような国際MVNOは大規模にサービスを展開するところまでには至っていないように感じています。しかし、これから数年というタイムスパンにおいては、「台風の目」的な存在になる可能性が高いと思っています。

今回の講座はここまでとさせていただきます。
次回は、通信キャリアの最新状況の第2弾として、NB-IoTなどに見られる新しい無線通信方式と、そのビジネスへの影響について解説していきたいと思っています。

次回をお楽しみに。