DONのM2M講座 第1回 機械が自動的に情報を送ると何が起こる?
みなさん、初めまして。
DON.マルチェロ・スミーニと申します。「DON」と呼んでください。
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さて、私はこれからM2Mのシステムが企業にどのように使われていてどのような価値を生み出しているか、ということについて書いていきたいと思っています。いまやIoTという用語が非常に広まっていますが、M2MはIoTよりはもう少し狭い意味で使われていて、企業が自社の業務のために機械から機械へ情報を送るという点にフォーカスした用語です。ですので、この連載では機械対機械の通信を企業が業務用途で使用するという点に絞って話を進めていきたいと思っています。
第一回である今回は、非常にベーシックな形態での企業のM2M通信の利用方法と、その利用方法によって生み出される価値について記載したいと思います。
なお、この連載は、M2M Boxという情報サイトに連載されている「M2M講座」から多くの知見を引用して議論を進めていきます。こちらのM2M講座も機会があれば見てみてください。
1.1 機械が自動的に情報を送ると何が起こる?
M2Mとは機械対機械の通信のことですので、機械が自動的に何らかの情報を送り、それを別の機械で受けとって何らかの処理をするという使い方をするものということになります。具体的にはどんな使われ方をしているのでしょうか。
たとえば遠隔監視という使い方があります。これは、動き続けている機械が自分で故障を検知した際にアラームを送ったり、さらに詳細な内部の各部品の状態をセンター側からの問い合わせを契機として送ったりすることにより、保守者による対応を迅速に行なうことを可能とし、結果として故障によるサービスの停止期間を短くしたり大規模な故障に至る前に修理を行なうことをことを可能とするという使い方です。
この遠隔監視では、企業はいままで固定的に人員を配置していた場所を無人化することができたり、あるいは機械の稼働ログを分析して故障の原因を推定するというような高度な技術知識を持った人間をセンターに集中的に配置することにより、組織運用を効率よく行なったりすることができます。これにより保守運用のコストを削減することができ、さらに故障によるサービス停止時間が短縮することによって顧客満足度も高めることができます。
あるいは動態管理という使い方もM2Mの用途として非常に多くの例があります。
動態管理とは、車両や荷物などの動き回れるものについて、取り付けられたGPSなどのセンサーから得られた位置情報を通信によってセンター側に送って管理することにより、現在の場所や状態を把握するという使い方です。
例えば自分が送った荷物が現在どこを輸送されていて、いつ到着するかということが高精度で予測できるようになれば、受け取った後のアクションのための準備を用意しておくことができます。あるいは車両の場所を把握することにより、緊急な案件のための車両の派遣をもっとも近いところの車両で行なうことができたり、事故や渋滞による遅延への対応を迅速に行なうことが可能になります。
動態管理による荷物や車両の位置の管理を実施することにより、車両などの運用コストを減少することができますし、またサービスを提供する顧客に対しても到着時期の正確な連絡や遅延の減少により顧客満足度を高めることが可能となります。
このように、機械が自動的に情報を送る仕組みによって、企業はいろいろな業務について効率を高めたり、顧客へのサービスの向上を図ることができます。
これがM2Mという通信の使い方の最も基本的な例であり、このような使い方を実現するためのシステムがM2Mシステムということになります。
1.2 M2Mシステムはどのように価値を生み出しているか
M2M Boxに連載されている「M2M講座」においては、以下のような法則を定義しています。
『情報は移動すると価値が高まる』
これはすなわち、ひとつの情報の価値というのはどこの場所でも同じということではなく、受け取る人や場所によってそれぞれ違うものであり、情報をそれが発生した場所からその情報を必要としている場所や人のところに伝達することは、情報の価値を高めることと同じ意味を持つ、ということを言わんとしていると解釈されます。
上記の例を見れば、機械がその場所において取得した情報を自動的にセンターシステム側に送るということが、情報を必要としている(=その情報に高い価値を見出している)人や場所に送っていることであることが理解できると思います。そして、情報を必要としている人や場所というのは、具体的にはその情報を用いてコスト削減や顧客満足度の向上を図るようなアクションを取るところ、ということです。
1.3 M2Mシステムを構成するもの
実際には、企業がこのような情報を利用するためには、そのためのシステムの構築が必要になります。また、遠隔地に情報を送るためには通信事業者のサービスを利用しなければならず、そのための費用が発生します。
M2Mシステムとは、以下のような装置の集合体です。
①機械の内部や環境から情報を取得するためのセンサー
②センサーから得られた情報を通信で伝達することが可能な形式に変換する処理装置
③情報を通信経路に伝達する通信装置
④通信経路(多くの場合、通信事業者が提供する通信サービスとなる)
⑤多くの通信装置から送られてきた通信を受信し、処理を行ない、情報を蓄積するセンターシステム
⑥センターシステムからのアウトプットの提示や表示を行なうアウトプット装置
企業は、M2Mのシステムの導入のために投資を行ない、システムの維持コストや通信費用を恒常的に負担することが必要になります。しかし、上記のように生み出される価値がこの投資と運用コストを上回るのであれば、事業としてはこのシステムを構築して運用していくことが可能となります。
現在、このようなM2Mシステムは先行した多くの企業ですでに使用されており、またより多くの企業が導入を検討しています。
次回からは、ビッグデータ的な手法を使ってM2Mのシステムからさらに多くの価値を引き出す手法を紹介し、企業のより高度なM2Mの利用方法を解説していく予定です。
では次回もお楽しみに。