国内の医療現場に横たわる、医療費や医師不足といった数々の問題。
政府もこれまで解決に向けた施策を行ってきたものの、社会の高齢化による患者増やリスクの高い分野であることも相まって、根本的な解消には至っていないのが実情です。
こうした背景を受け、政府側もIoTを含むITを活用した体制づくりに乗り出しています。
IoTは、国内の医療問題の多くを解決できるポテンシャルを秘めた仕組みです。
すでに技術自体は実用レベルに達しており、現場への導入を待つばかりといった状況が続いています。
以下から、日本の医療問題とそれを解決するIoTの現状・将来について見ていきましょう。
広く知られた事実であるものの、国内の医療分野において見逃せないのが医療費問題です。
厚生労働省がまとめた「平成28年度 医療費の動向」によれば、同年の医療費は41.3兆円。これは前年度から見れば約0.2兆円の減です。
しかし、たとえば2014年の医療費は約40兆。この数字と見比べると、ここ数年で高止まりが続いてきたことが分かります。
なお、社会の高齢化が進めば、この問題はさらに深刻度が増すとも言えるでしょう。
医療費が増えるということは、患者数が増えていると言い換えられます。
一方で、病院の数がそれに見合っただけ用意されているかと言うと疑問が残ります。
その結果、治療が必要な患者に十分な医療が届けられていない可能性も捨てきれません。
こちらもよく知られてはいますが、国内における医療現場での人員不足は未だ解決できていない問題のひとつです。
少し古いデータになりますが、さまざまな国を対象にした「臨床医密度(人口1000人あたりの医師数)」の調査によると、日本の獲得ポイントは2.1人。
これは世界標準の3分の2です。
加えて、OECD加盟国の中では実質最下位という結果でもあります。
「医療費が増えている=患者数が増えている」にもかかわらず、医師の人数は少ない。
これが、日本医療が抱える大きな問題と言えるでしょう。また、その分現場にかかる負担も増え続けていると考えられます。
日本の医療業界が抱える問題を解決する方法としては、情報機器を利用したIoTに活用が有効です。
それを示すかのように、海外ではIoMT(Internet of Medical Things:医療IoT)の活用が進んでいます。IoMT分野への企業の参入も多く2014の時点でIoMTの市場は584億ドルにも達しました。
さらに2022年を迎える頃には、その規模は4100億ドルにまで拡大するとも見られています。
こうした流れを後押ししたのは、オバマ政権時代での医療分野IT化推進と考えられています。
実際に、2013年の時点でアメリカの病院では実に80%の病院が電子カルテを導入。
さらに、医療IoTを用いた遠隔治療も盛んに行われています。なお、医療IoTの導入データによれば2015年では約9500万台。
一方、2020年には6億台を突破するだろう、といった予測も立てられています。
母数の違いがあるため数字を単純に比較することはできませんが、伸び率で考えた場合、アメリカではIoMTを活用した医療への関心・注目が高いことは十分に理解できるでしょう。
それでは、国内でのIoMT推進の現状はどのようになっているのでしょうか?
2017年4月に総理大臣官邸で開催された第7回未来投資会議。ここでは、遠隔治療やAI活用を前提とする新たな医療システム構築が議論されました。
IoMTも、当然議題に上がります。そして同年6月に未来投資戦略2017は閣議決定されました。
この計画では、医療ICT(情報通信技術)を活用したデータプラットフォームの構築などを含む体制構築のための規制変更などが盛り込まれています。
少し遠回りの説明となってしまいましたが、端的に言えば、日本においても今後はIoMTを含む医療ITを推進する企業の活躍が期待できる、と言えるでしょう。
こうした政府側の動きもあってか、医療IoT分野の参入企業は拡大傾向にあり、国内市場規模は2025年に1千680億円になると予想されています。これは2016年から比べると2.2倍にもなる数字です。
国内医療におけるIT化の波はすでに訪れており、かつ将来的に発展していくと考えられるでしょう。